警察官と刑事の違い
Googleの検索ワードを見ると「警察官 刑事 違い」で検索されている方が結構多いようです。当サイトのコラム「刑事になる方法」でも説明していますが、刑事も警察官です。今、刑事をやっている警察官も普通に警察学校に入り、卒業して警察署に出てからは制服で交番勤務をしています。それから3~5年くらい経ってから、刑事を希望して講習を受け、刑事になる資格のようなものをもらって刑事をやっているのです。定期異動後などには再び交番勤務に戻ることもあります。
では刑事と交番の警察官で具体的に何が違うかを挙げてみます。
1 制服と私服
一般社会では、仕事で着るスーツ以外を「私服」と呼びますが、警察社会では「制服」以外を「私服」と言います。ですから、刑事がスーツにネクタイをしているのを「私服」と言います。刑事が着る私服は、スーツだけではなく、ポロシャツにチノパンだったり、フリースにジーパンだったり、結構何でもOKです。特に泥棒を追いかける盗犯刑事や、薬物対策の刑事は一見刑事に見えないような派手な格好をしている場合もあります。渋谷や歌舞伎町で声をかけてくる風俗スカウトを取り締まる生活安全特捜隊の女性警察官などは、茶髪にロン毛でマスカラばっちりで絶対に警察官には見えません。男性刑事でも茶髪、ロン毛にして後ろで縛ってポニーテールにしてヒゲを生やしている人もいます。
2 交代制の部制
警察官には宿直勤務があり、何日に1回宿直勤務に就くのかを「部制」と言います。交番の警察官は、多くの道府県警で3部制を採用していますが、警視庁の場合は間に日勤が1日入る4部制を採用しています。警視庁の刑事は5年ほど前から8部制になっています。その前は6部制でした。もちろん宿直勤務は少ないほうが楽なのですが、6部制から8部制に変わったときは、宿直員の人数がその分減って、一人当たりの任務負担が大きくなったので賛否両論ありました、
3 仕事内容
当然、仕事の内容も異なります。交番の警察官は、その交番の管轄内で110番や通報が入れば、内容が何であれ(警察が扱うべきものなら)必ず現場に行かないとなりません。取り扱いで多いのは、駐車苦情、騒音苦情、交通事故、酔っ払い、ケンカ、万引き、人倒れ、落とし物などです。刑事はというと、刑事課が扱う事件、事故以外は扱いません。刑事が多く扱うのは、万引き、詐欺、性犯罪、変死、労災、火事、安否確認、ケンカ、DVなどです。
4 勤務場所
交番の警察官は交番を拠点に勤務します。刑事は、警察署(本書)で勤務します。
5 乗り物
警視庁の交番警察官の足は何といっても自転車です。警視庁の警察署は道府県に比べて管内が狭いため、自転車で十分であり、また、行った先で停める場所を探さなくていいので自転車なのです。パトカー乗務員はもちろん白黒のパトカーに乗ります。
刑事の足は、捜査用車両と言われる国産セダンタイプまたはSUVです。一般の人は「覆面パトカー」と言いますが、警察官は言いません。外見上警察車両とはわからないようになっていますが、車内をよく見ると助手席前辺りに無線機のマイクがあるのでわかることもあります。
6 非番の帰宅時間
警察官が使う「非番」は休みのことではなく、宿直明けの日のことを言います。交番警察官はだいたいお昼前後には帰れますが、刑事は、事件送致準備や変死体の引き渡し、防カメ捜査などで夕方以降になることが多いです。
7 休み
最近は、刑事も「ワークライフバランス」を言われるようになり、週休(一般社会でいう公休)や有休がとりやすくなりましたので、休みについては交番警察官と大きな差はなくなってきましたが、管内で殺人事件など大きな事件が発生して捜査本部ができるなどすると途端に休みが取れなくなります。
8 給料
居残りの超過勤務が多い分、刑事のほうが給料は高いです。
9 仕事のキツさ
これは一長一短ありますし、勤務する警察署の環境にもよりますので、何とも言えません。刑事が好きなら刑事のほうが楽に感じるかもしれません。ただし、家に帰ってからも仕事のことを考えるのは刑事のほうが圧倒的に多いです。
10 昇任のしやすさ
警部補まではペーパーテストの比重が大きいので差はありませんが、警部以上になってくると刑事や生活安全など内勤の経験がないと厳しくなってきます。署長以上になる人のほとんどが一度は内勤を経験しています。
11 危険度
これはやっぱり現場に一番早く臨場することの多い交番警察官のほうが危険です。実際、過去に暴漢に襲われるなどして殉職した警察官のほとんどが交番等の外勤警察官です。交番にいるところを襲われて亡くなった人も多数います、
12 天候の影響
交番警察官のほうが建物の外にいる時間が圧倒的に長いので夏の暑さや冬の寒さは厳しいものがあります。また、雨や雪、台風でも現場に自転車で行かないとなりません。
13 経費
交番警察官の制服や装備品は基本的に全て支給されるので、自費で買うものといえばLED懐中電灯(支給品は電球式で暗い)、メモ帳、ベルトに付ける小物入れ、リュック、これくらいです。刑事は、スーツとワイシャツ、革靴は支給されますが、宿直時に着る汚れてもいい作業着(汚れても着替えられるよう2~3セット)、帽子、運動靴、懐中電灯、刑事向けの専門書、カバン、ノート、手帳など経費は多くかかります。
14 仕事のやりがい
交番警察官の取り扱いはどうしても「その場限り」の事案が多いですが、刑事は一つの事件をときには何年もかけて検挙することがあります。やはり、その達成感は刑事のほうがずっと上です。
15 どっちが女性にもてるか
刑事だからといってもてることはありません。結局顔です。職種が何であれイケメンには勝てません。
16 仕事の難しさ
交番警察官は、取り扱いで何か疑問が生じた場合、事件のことなら刑事課、交通のことなら交通課、警備のことなら警備課というように、専門の内勤にお伺いを立てて、その指示に従って処理すればいいので楽です。逆に聞かれるほうの刑事は、聞く相手がいないので自分で判断しないとならず、その分難しいと言えます。また、事件、事故の多くは、内勤専務が最終的に処理することになるので、交番警察官の取り扱いは一時的なものであることが多く、内勤に引き継ぐことがほとんどです。
17 出張
交番警察官には他府県への出張がほとんどありません。他府県から指名手配になっている被疑者を見つけて連れていくときくらいで、一生で1回か2回あるかないかくらいです。刑事は1年に数回、泊りがけで他府県に出張に行く機会があります。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。