警視庁本部の捜査員と記者の関係|サツ回りの実態とは?【元警視庁刑事のコラム】

警視庁本部(本庁舎)で捜査員になって数か月が経つと、夜中に自宅のインターフォンが鳴ることがあります。
ドアを開けてみると、そこにはテレビや新聞の記者が立っていることが。

記者が訪問する理由|「サツ回り」とは?

これは、いわゆる「サツ回り」と呼ばれるものです。
記者は名刺を渡し、軽い雑談の後に必ずと言っていいほど、**「今どんな事件を担当しているのですか?」**と質問してきます。

記者はなぜ捜査員の自宅を知っているのか?

記者が捜査員の自宅住所を知っている理由には、2つの説があります。

  1. 尾行説
    • 記者が警視庁本部から自宅まで尾行して住所を突き止める方法。
  2. 組織が教えている説
    • 警察組織がマスコミに対して、捜査員の自宅住所を教える代わりに、
      • 検挙の際は積極的に報道してもらう
      • 警察の不祥事は報道しないようにしてもらう
        という密約があるという説です。

どちらが真実かは不明ですが、現場の捜査員たちの間でも議論が続いています。

サツ回りの質問に答えることはあるのか?

記者からの「今どんな事件を担当しているのですか?」という質問には、基本的に答えません。
なぜなら、答えることによる利益が全くないからです。

ただし、記者が既に事件の詳細を把握している場合(例:「株式会社○○○○の詐欺事件ですね」など)、
よくご存じで」と軽く返答する程度の会話はします。

マスコミとの関係|年賀状が届くことも

中には、あるテレビ局の記者から年賀状が届くこともあります。
しかし、物や金をもらうことは一切ありません
捜査員としての倫理観を守りつつ、情報のやり取りは慎重に行われます。

記者と警察の関係|過去のエピソード

筆者の亡き父も、通信社の記者として1960年代に大分県警でサツ回りをしていた経験があります。
当時のエピソードとして、

  • 「あいつら(大分県警の刑事)は昼間から酒を飲んでいた」と語っていたことがありました。

もちろん、現在では考えられないことです。
時代と共に、警察とマスコミの関係も変化しています。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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