交番勤務の1日(当番勤務)

 警視庁は県警と違って交番勤務である地域課は4部制で4日に1回が当番(宿直勤務)となります(県警は3日に1回)。なので、当番は本来午後2:30出勤なのですが、連休を取る関係で警視庁でも月に1回は朝からの当番勤務があります。県警の勤務とも合わせるために、この朝からの当番に就いたとして、平均的な勤務の内容について説明します。

7:00 出勤
 出勤したら道場に上がり、柔道着、剣道着に着替えて朝の稽古に参加します。時間は短く30分前後です。出勤時間は8:30なので、勤務外ということになりますが、超勤務請求はできません。終わったら制服に着替えます。
8:30 けん銃出し
 けん銃金庫前に集合して、けん銃を出して着装します。地下や屋上にて、実弾5発を装填します。点検といって教練のようなことをすることもあります。また短時間の逮捕術訓練をすることもあります。
8:40 指示、訓授
 係長等からの指示の後、署長による訓授があります。各内勤係からの教養があることもあります。
9:30 交代出発
 各交番に向かって出発します。警視庁の場合はほとんどが白チャリです。パトカー乗務員は本署で交代します。
10:00 交代
 交番に就いたら前日から勤務に就いていた非番員(警察で「非番」は夜勤明けのことです)と交代します。
 交代後は、勤務表に基づき、警ら、巡回連絡、立番(交番の入り口付近に立って警戒する勤務)などの勤務に就きます。警らはパトロールのことで、どこに行くかは基本的に自由です。不審者がいれば職質しますし、交通違反があれば反則切符を切ります。途中110番が入り、自分の交番の管内であれば向かいます。110番で多いのは、駐車(駐輪)苦情、騒音苦情、交通事故、交通違反、ケンカ口論、万引き等窃盗被害などです。巡回連絡とは、自分の受け持ち区内の家庭を1軒ずつ訪問して、居住者の名前や連絡先を尋ねて記録する作業です。火災のときなどに、逃げ遅れた人がいないかなどに役立ちます。交番での立番中には、来所した人に対しての地理案内、落とし物の受理、被害届の受理、各種相談などに対応します。
12:00 休憩・昼食
 交代で休憩を取ります。最近は弁当を持参する人が多くなりました。休憩時間中ですので、制服で近くのコンビニやスーパーに弁当を買いに行くこともできます。ただし、制服のまま外食することは許されていません。
14:00 勤務
 休憩が終われば再び勤務表に合わせてそれぞれの勤務に就きます。万引きなどの犯罪発生で現場に臨場し、逮捕や任意捜査などで事件化することになった場合は、被疑者をパトカーに乗せて一緒に乗り、本署に同行します。そのまま事件処理となります。逮捕の場合は刑事課で刑事の指示を受けて現行犯人逮捕手続書、取扱状況報告書、任意提出書、領置調書、所有権放棄書、防犯カメラ解析捜査報告書などを作成します。万引きの現行犯逮捕の場合、おおよそ4~6時間くらい時間がかかりますが、被疑者に持病があって病院診療がある場合はさらに2時間以上かかります。処理が終わると交番に戻ります。
17:00 休憩・夕食
 交代で夕食を食べます。
19:00 勤務
 再び勤務表記載の勤務に就きます。夜になると酔っ払いに関する通報が増えてきます。酔っ払いの寝込み、騒ぎ、絡み、ケンカ、無銭飲食、無賃乗車などです。泥酔して動けない酔っ払いは保護して本署の保護室に入れます。交番に来て執拗に警察官に絡んでくる酔っ払いもいます。手を出せば、多少は見逃しますが、やり過ぎればもちろん公務執行妨害で現行犯逮捕です。現在の交番は内外に防犯カメラが付いてますので、否認してもバッチリ写っています。
 時間が遅くなるにしたがってやばい通報が増えてきます。3対3の血だらけのケンカとか、妻に包丁で刺されたなんていうやばいのはだいたい日付が変わった0時以降です。こういうやばい通報の場合は、他の交番の管内であっても応援に向かいます。凶器を使った事件であればほぼ100%逮捕になり、本署に上がって処理しないとなりません。
 変死の通報が入ると刑事と一緒に臨場します。発見場所が自宅内の場合、事件性有無の判断をするため、施錠の有無、貴重品や現金・通帳・カード・カギの捜索、身許を明らかにする身分証の捜索、最後に購入した物品のレシート捜索、遺族の連絡先捜索、自殺の場合は遺書の捜索とロープや練炭の購入履歴確認などで1時間半から2時間かかります。事件性がないとなるとご遺体を運び出すのですが、狭い団地などでエレベーターがないと大変です。二人から三人で担いで階段で下ろします。夏場の腐乱死体の場合は、半日は体に染みついた臭いが取れません。帰りの電車の中で、隣に座った客が席を移ったという話しを聞くことがあります。
0:00 休憩・仮眠
 扱いがなければ交代で休憩に入ります。起こされる確率が高いのでシャツやネクタイは取らず、ズボンだけ脱いで布団で横になる感じです。けん銃は専用金庫があるのでそこに保管します。勤務表では3時間仮眠できることになっていますが、まず3時間眠れることは滅多にありません。そもそも緊張しているのでぐっすり眠れることも少なく、少しウトウトする感じです。何かの通報があれば起こされますが、無線や電話の音でだいたい気付いて自分から起きていきます。
7:00 学校対策等
 管内の小学校付近に行って通学児童の見守りと交通整理をします。
 この時間帯から交代までの間は何もないことを祈ることになります。事件で逮捕となると夕方近くまで帰れなくなるからです。
10:00 交代
 その日の勤務員が来るので交代します。勤務員が乗ってきた交代用の白チャリで本署に向かいます。白チャリには交番据え置き用と交代用があります。交代用は古くなったやつをあてがっています。本署到着後には、落とし物を会計係に持って行ったり、受理した被害届を刑事課に持っていったり、切った交通違反の切符の処理などの作業があります。
10:30 けん銃下ろし・解散
 正規の勤務時間はここまでです。けん銃の弾を抜いた後、けん銃金庫にしまい、解散・帰宅となります。ただし、この時間に帰れることはあまりありません。事件処理、交通切符処理、交通事故処理、苦情処理、巡回連絡の書類整理などで居残りとなることがほとんどです。翌日は基本的には休みですが、お祭りやデモ警備などがあると出勤となります。私が最後にいた浅草警察署は、1年中お祭りみたいな場所でしたので、休日出勤がとても多かったです。



 


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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