警察のご遺体の運び方今昔
警視庁では、現在どこの署にもご遺体を運ぶストレッチャーという専用のタイヤ付き寝台があり、そのまま箱形の遺体搬送車に積載することが可能です。私が刑事になった1990年代にはそのどちらもありませんでした。
刑事になって間もない頃、やや大きめの区立公園内で男性の首吊りとの通報が入りました。年配の係長と二人でセダン型の捜査用車両で現場に向かいましたが、公園の中に車は入れなかったため、降車し歩いて5分くらいかけて公園の一番奥に向かいました。現場には、交番から白チャリに乗ってきたお巡りさんが一人先着していました。ご遺体は公園の植木の枝に巻いたロープで首を吊っており、完全に宙に浮いた状態で、既に死後硬直が始まっていました。ロープを解いてご遺体を下ろしましたが、困りました。ストレッチャーはもちろんのことタンカすらありません。あるのはご遺体を包むビニールシートだけです。少し考えて、目の前にあるお巡りさんの白チャリが目に止まりました。私はご遺体をビニールシートに包み、交番のお巡りさんに「遠すぎてこのまま運ぶのは無理だから白チャリ貸して」と言うとお巡りさんは渋々了承してくれました。二人でご遺体を担ぎ上げ、白チャリの上に首をハンドル付近、腰をサドル付近に乗るようにして縦に乗せ、車のところまで押していきました。運良く死後硬直していたため、ご遺体はピーンと伸びていたため落ちないで済みました。お巡りさんは嫌そうな顔をしていましたが、他に方法がありませんでした。
さて車に着いたはいいものの、今度は乗せる方法を考えないとなりません。トランクの中は防弾盾など資機材がいろいろ入っているため、ご遺体を入れるだけのスペースはありません。仕方なく、後部座席に押し込んで座らせ、隣に私が座りました。係長に運転してもらいましたが、ちょっとしたカーブでもご遺体が倒れそうになるので、署に着くまでずっとご遺体の肩を抱いていました。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。