警察官をやってきて驚いた話
32年間警察官をやってきた中で驚いた話などをまとめてみました。
1 留置場で父親の巡視を受けた息子
大井警察署で常習の泥棒を捕まえたときにその泥棒から聞いた話です。その泥棒は長野県の生まれで、父親は県警の警察官だったそうです。若い頃に泥棒をやって逮捕され、父親が勤務する署の留置場に入れられたそうです。夜中に巡視の警察官がやってきたら、自分の父親だったそうです。情けなくて目を合わすことができなかったそうです。そんな気持ちになるくらいなら泥棒を止めればいいのに、結局シャバと刑務所を出たり入ったりの常習者になってしまいました。父親はどれだけ残念に思ったことでしょうか。
2 レイプ犯人と付き合った女性
某署にいたとき刃物を使った連続強姦、強制わいせつ犯人が捕まりました。余罪が十数件ありました。手口は、夜中に住宅街を一人で歩いている女性を狙い、包丁を突きつけて人気のない場所に連れて行き犯行に及ぶというものでした。犯人の携帯電話を押収し、メールを見たところ、交際しているらしき女性が判明し、犯人に聞くとその女性も被害者の一人だと言うのです。包丁を突きつけられて無理矢理性犯罪を受けた女性が犯人と交際するなんて嘘だろうと思いながら、その女性を呼んで話を聞いたところ、事実でした。実はこの犯人、バスケットボールをやっていてすらりと背が高く、顔もまあまあのイケメンでした。一方でこの女性はぽっちゃりしていて顔は正直言って平均以下。包丁を突きつけられて行為をされる中で一目惚れしてしまったそうです。そこで、行為が終わった後に連絡先を交換してその後何度か会って自主的に行為をしたとのことでした。もちろん、被害届は出しませんでしたので、この女性は被害者の中から外しました。
3 首都高で死にかけた話
他県に捜査用車両で出かけ、首都高を走って署に戻る途中のことでした。それまで順調に走っていた車のエンジンが突然止まってしまいました。車はみるみる減速して運悪く急なブラインドカーブの出口付近の左側車線で止まってしまいました。さらに運悪く、渋滞等なくガラガラだったため、どの車も時速80キロくらいで飛ばしてきます。左側車線を走ってくる車は直前まで気付かず、タイヤをきしませながらギリギリで避けて行きます。私は車を降りて交通整理をしようと思いましたが、大型トラックが直近でタイヤを鳴らしながらすごい速度で通り過ぎていくので、「あ、これは突っ込まれて死ぬな」と思いました。時間にして2、3分だったでしょうか、ここで高速隊のパトカーが通りかかったのです。もちろん、通報ではそんなに早く来てはくれませんから、全くの偶然でした。すぐにパトカーは牽引ロープをかけてくれ、高速隊の庁舎まで移動してくれました。捜査用車両はエンジン内のタイミングベルトが切れており、絶対にエンジンはかからない状態でした。もしもあのときパトカーが通りかかってくれなかったら、今この書き込みもできてませんし、このサイト自体が存在していなかったと思います。
4 地検の元検事正を取調べ室の破れたパイプ椅子に座らせた話
某署の刑事課で、弁護士を名乗る高齢男性が相談があると訪ねてきました。相談室が空いてなかったので、取調室に案内したのですが、古い署だったので、パイプ椅子は座面が大きく破れていました。私が他の椅子を探すとその弁護士は「これでいいから」と言って座ってしまいました。そこで名刺をもらったのですが、どこかで見覚えのある名前です。「石川達紘」我々刑事が東京地検へ送る送致書を記載する際、送り先として記載する「東京地方検察庁 検察官検事正 石川達紘 殿」だったのです。私はびっくりして「あの、元地検の?」というと弁護士はにっこり笑って「そうそう」と答えてくれました。偉ぶらず、とても気さくな方でした。残念ながら、この元検事さんは、その後踏み間違い交通事故で有名になってしまいました。
5 駅前交番休憩室ダニだらけ事件
大井警察署で1年ほどJR大井町駅前の交番に就きました。アトレという駅ビルの一角に交番があったのですが、なんと隣は駅ビル商業施設のゴミ捨て場。交番とこのゴミ捨て場はドア1枚でつながっていました。ゴミを捨てるには便利なのですが、レストラン等から出る生ゴミ類が多いためにネズミの巣窟。そしてそのネズミが交番休憩室の天井に巣くっており、そこから大量のダニが休憩室内に入ってきて布団や畳に付いているので、休憩時間に布団に入るとかゆくて眠れたものではありません。署の会計課からねずみ取りや毒餌をもらってきて使ってみても、最初はかかるのですが、ネズミは頭が良く、すぐに避けられてしまいます。結局最後まで熟睡することはできませんでした。
6 元アイドル女性バッグ盗難事件
都心の某署に勤務していたとき、当時30歳代後半の元アイドルの女性I・Mが相談に来ました。仕事に行くために自宅マンション下でタクシーを拾ったのですが、忘れ物に気付き、バッグを車内に置いたまま運転手に待つように言って部屋に戻り、忘れ物を取って戻るとタクシーがいない。どうしたらいいでしょうと相談に来たのでした。タクシー運転手は、客が元アイドルだと気付き、おそらく着替えの下着とかが入っているのを確認して盗んで逃げたのでしょう。呼び出したのではないので、タクシー会社名はもちろん、ナンバーも何もわかりません。今のようにそこら中に防犯カメラがある時代でもありません。結局元アイドルの女性は泣き寝入りするしかありませんでした。
7 殺人犯人自殺事件
某署でマンション3階の部屋での夫婦無理心中事件が発生しました。夫が妻を刺し殺し、自分も首を切って瀕死の重傷という現場でした。交番の警察官がいち早く臨場し、室内に入って夫婦の状態を確認している状況でした。そこに刑事課長と課長代理(二人とも部下からの評判は悪かった)が到着、血だらけの室内にいる制服警察官らの姿を見て「お前らなに現場荒らしてるんだ! さっさと部屋から出ろ!」と一喝したそうです。交番のお巡りさんが渋々部屋から出た途端、それまで倒れていた夫がいきなり立ち上がり、ダダーと走って窓から飛び降り、即死してしまったのです。交番のお巡りさんたちは、殺人犯人検挙という、刑事部長賞間違いなしくらいの手柄がもらえたはずが、犯人に飛ばれて死なれてしまった扱いになってしまい、それはもうカンカンに怒っていました。この課長と代理はその後署長に進退伺いを提出しましたが慰留されました。課長は早稲田の大学院を出たという珍しい経歴の人でしたが、警察官には向いていませんでした。代理はこの課長と合わず、結局その後に退職しました。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。