元警視庁刑事が教える「警察隠語(用語)集」

 警察官が使う隠語は、単に古くから伝わる業界用語であるものと、一般人に聞かれても意味がわからないように使うものがあります。「ガサ」や「デカ」など、テレビドラマなどでも普通に使われる言葉もあり、もはや隠語とは言えないものも多くあります。また、警察隠語には方言があり、東京で使われていても、関西圏では全く使われていなかったり、その逆もあります。例えば、犯人を意味する「ホシ」ですが、東京では普通に使われているのに、関西では全く使われていません。ここでは、私が勤務していた警視庁で使われていた隠語のうち、公開できるものだけピックアップしました。※順不同です。

・サッチョー:(警察庁)
・ガサ:捜索差押のこと。マスコミ用語では家宅捜索。さがすの逆読み。
・デカ:刑事のこと。語源については諸説あってどれが本当かは不明。
・サンズイ:贈収賄事件のこと。汚職の一文字目が語源。
・ゴンベン:詐欺事件のこと。語源は上と同じ。
・ウカンムリ:窃盗事件のこと。語源は上と同じ。
・ギョーヨコ:業務上横領事件。
・タタキ:強盗事件
・サツミ:殺人未遂
・カツミ:恐喝未遂
・センターポール:公然わいせつ
・マンチャン:万引き
・オヤジ:警察署長
・PB:交番
・PC:パトカー
・PM:警察官
・PS:警察署
・ブルーライス:精神疾患者。現在は全く使われない。語源、米青ネ申。
・ヤサ:住んでいる家のこと。刀のサヤが語源。
・ゼンシャク:送致前釈放。逮捕したが、重病だったり、手続に違反があった場合に被疑者を検察庁に送致する前に釈放すること。
・キンタイ:緊急逮捕
・ツータイ:通常逮捕。逮捕状による逮捕。
・ゲンタイ:現行犯逮捕
・トメ:留置施設
・アサレン:柔道、剣道、合気道、逮捕術などの朝の練習
・マルボウ:暴力団員または暴力団を扱う刑事。マルビーともいう。
・マルヘン:変死
・マルソウ:暴走族
・マルセイ:精神疾患者。現在はほとんど使われない。
・マルタイ:逮捕
・マルショク:警察官の食事
・マルヒ:被疑者
・マルガイ:被害者
・マルモク:目撃者
・マルサン:参考人
・マルベン:弁護士
・マルタイ:対象者
・マルテン:転進すること。「部隊は新宿駅方向にマルテンせよ」のように使う。
・マルセン:選挙対策本部
・マルハリ:張り込み
・マルウン:運転手
・マルキ:機動隊又は機動隊員
・マラ特:マラソン特練
・ホシ:犯人
・マグロ:電車飛び込み死体
・レツ:共犯。連れの逆読み。
・フランス人:腐乱死体
・検事パイ:検察官が逮捕被疑者を釈放すること
・グニコム:泥棒が盗品を質屋に入れること。質屋のことをクニということからクニ込むが語源。
・マルエックス:爆弾またはその容疑物体
・Xデー:被疑者の逮捕予定日
・モンシャ:被疑者の写真と指紋を採ること
・モサ:警視庁本部捜査三課のスリ班
・パー:警察手帳
・チャカ:拳銃
・ワッパ:手錠
・ブルマ:手錠カバー。形状が似てるため。
・ゴンゾー:仕事をしない警察官
・コーカク・行動確認
・オミヤ:事件が迷宮入りすること
・ホシワレ:犯人が誰か判明したこと
・タレ:被害届。たれ込むが語源。
・インメン(調書):警察官が作成した供述調書
・ケンメン(調書):検察官が作成した供述調書
・ロクロク:録音録画で取調べをすること。
・ノビ:忍び込みによる侵入窃盗
・ガンペイ:偽札
・ハム:公安
・バンカケ:職務質問。上司が部下に「おい、あいつにバンカケてこい」などと使う
・逆バン:尾行や行動確認中に刑事であることがバレて対象者から声をかけられること
・ゲッカン:「職務質問強化月間」「告訴・告発事件処理推進強化月間」など
・マエアシ(前足):犯行前の足取り
・アトアシ(後足):犯行後の足取り
・中野:古い警視庁警察学校
・府中:現在の警視庁警察学校
・九段:超古い警視庁警察学校。現在は死語。
・Pナンバー:職員番号
・123(ヒャクニジューサン):照会センター
・176(イチナナロク):不同意わいせつ(旧強制わいせつ) 語源、条文
・177(イチナナナナ):不同意性交等(旧強制性交等、従前強姦) 語源、条文
・517:仕事が終わること。語源不明。
・ゼロゼロ:該当なし
・レキ:犯罪歴
・マンキョー:警察学校で違犯行為をして罰として教場当番を毎日やらされること
・ポリスメイト:指印させる際に使うインク台
・ガラミ:調べ室等にいる被疑者が逃げないように監視すること。身柄を見るの略。
・ナンバー:捜査二課の贈収賄事件担当
・イヌ:警察犬のこと「おい、鑑識課に電話してイヌ呼べ」などと使う
・元臭(ゲンシュー):警察犬に嗅がせる犯人が残した臭気
・三味線:ケガや病気のふりをすること
・ケーデン:警察電話
・地取り:事件発生現場周辺の住民に聞き込みする捜査手法
・トリジョー:取調べ状況報告書
・宿帳(やどちょう):逮捕簿
・シュクセキ:宿直責任者
・リモコン:署の無線司令室
・エスダブ:署括系無線機
・ドロン:現場上がり
・トーコー:東京拘置所
・サンタマデカ:東京23区以外(三多摩地区)の警察署で勤務する刑事
・子安うどん:警察官が好きなうどん店
・角満(かどまん):警察官が好きな蕎麦店
・矢打(やうち):警察官が好きな蕎麦店
・丸長(マルチョー):警察官が好きなつけ麺店
・トカゲ:バイクの追跡部隊
・副さん:副署長
・キラキラ:地域課と機動隊を行ったり来たりする警察官のこと。機動隊の「き」警らの「ら」が語源。現在はほとんど使われない。
・大部屋:刑事課の事務室のこと。知能犯係は別室の小部屋であることが多いので対比的にこう呼ばれる。
・部屋長:刑事課で一番古参の巡査部長。ほぼ死語化。
・方機(ホーキ):方面機動隊の略。サミットなど大きな警備があるときに編成される。
・ひな壇:課長、課長代理の席
・単独:単独護送の略、被疑者を1名だけ護送すること
・集中:集中護送の略、被疑者を数名~十数名バスで護送すること
・レーセー:令状請求
・N(エヌ):Nシステム
・S(エス):内通者
・P(ピー)さん:検察官
・グニヤ:質屋
・占脱(センダツ):占有離脱物横領
・長さん:巡査部長の呼び名
・機捜:機動捜査隊
・緊走:赤灯とサイレンを鳴らして走る緊急走行の略。赤灯だけ点けてる場合は緊急走行ではない。
・新件:送致したばかりの事件または翌日送致する事件
・関追(かんつい):関係書類追送書
・月光仮面:方面本部が随時監察で警察署に来ること。ほぼ死語化。
・プータロー:一般社会では無職者のことですが警察内部ではホームレスのこと
・カンク:関東管区警察学校
・バリバリ節(バリバリブシ):転勤者を送る歌 ○○さん♪、バリバーリ、がんばっておくれーよなー♪祈るおいらのよー、声がーするよー♪
・めくり:①警務要鑑という警視庁警察官のための六法全書を一人ずつ無作為に開き、ページ数合計の一の位が9が最強0が最弱というゲーム。目次の赤いページを開くと「赤ブタ」といって0より弱い。平成末期頃からはほとんど行われていない。
    ②銀行に行って出金伝票や振込依頼伝票をめくって対象者の金の流れをつかむ捜査手法。
・ジュージャン:ジュースじゃんけんの略。じゃんけんで負けた者がその場の全員にジュースをおごる。牛丼をかけるギュージャンなどの派生もある。平成中期頃からはほとんど行われていない。
・一課さまさま:署轄に対して態度が大きい捜査一課員を揶揄した言葉
・ニンドー:任意同行の略
・基調(きちょう):基礎調べ。一般用語で言う内偵捜査。
・踊る:暴れること。
・焼く:コピーすること。語源は青焼き。
・おふだ:逮捕状
・お清め:変死を扱った非番に酒を飲むこと。最近はやらなくなった。
・B券:ビール券の略。平成中期頃までは警察内の他部署に何かお願いするときは当然のごとく使われた。現在は全く流通していない。
・巡連:巡回連絡。
・アカ:①捜査一課火災犯係 ②左翼
・シロ:罪を犯していない者
・クロ:罪を犯した者、犯人
・緑のおじさん:駐車監視員
・青パト:自治体運営の防犯パトロールカー
・現場(ゲンジョー):鑑識課現場鑑識係
・弁当箱:交番の白チャリの後ろに付いている四角い箱
・弁当持ち:執行猶予持ち
・ゲタ:決裁印を押してもらう枠またはそのゴム印
・チンコロ:警察に密告したり寝返ること、犯罪グループ側からすると裏切り者
・知能地獄:一度知能犯捜査係に入ったら定年まで抜けられないこと
・調書をまく:供述調書を作成すること
・ダッコちゃん:重要事件の容疑者が逃げたり自殺しないように刑事が24時間一緒にいて見張ること
・モンを振る:指紋を顕出すること
・パケ:薬物を入れる透明な袋または薬物が入った状態の袋
・ポンプ:注射器
・スミ:入れ墨
・ゲソづけ:ヤクザの組に所属していること
・雁幣(がんぺい):偽札のこと
・しょんべん芸者:柔道ですぐに投げられて横たわる警察官を言う。語源は「すぐ寝る」。
・人定(じんてい):個人を特定する情報。住居、氏名、生年月日など。 人定事項ともいう。
・デコスケ:ヤクザや不良が刑事を罵倒するときに使う
・庁警(チョーケイ):庁舎警備の略。警察署等の入口付近で警杖を持って不審者の出入りをチェックする業務。現在は署の周囲に防カメが設置されているので行われなくなっている。
・卒配(ソツハイ):警察学校を卒業後に警察署に配属されることまたはその警察署。「○○は卒配どこに決まった?」などのように使う。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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