クマに警察官の拳銃は効果があるか?【元刑事のコラム】
刃物などの凶器を持って警察官に襲いかかった結果、警察官の拳銃で撃たれた犯人が過去に何人もいます。弾が頭や心臓などに当たり、即死に近い形で死亡した犯人がいる一方で、肩や足など致命傷にはならない部位に命中してケガで済んだ犯人もいます。警察教養として、後者の「撃たれたけど生き残った」犯人の供述内容を聞いたことが何度かあります。それによると、撃たれた瞬間は、「一瞬『熱い!』と感じたが、拳銃で撃たれたとは気付かず、そのまま攻撃を続けた。痛みなどは後から感じた。」というものでした。
拳銃に込める弾丸は、撃つ前の状態だと薬莢と一体化しているので大人の小指半分ほどの大きさがありますが、薬莢内はほとんどが火薬であり、実際に拳銃から飛び出す弾の大きさは、小学生の小指の爪先くらいの大きさしかありません。そんな大きさですから、人間ですら脳、心臓といった部位に当たらない限り、1発や2発で即行動不能にすることは困難です。ナイフを持って突っ込んで来られたら、たとえ命中してもそれが肩や腕、足なら、完全に止めることはできないかもしれません。
一方クマですが、厚い毛皮と強靱な筋肉、強固な骨格でできた野獣です。しかも、直立二足歩行の人間と異なり、四つ足で走って来られたら前面投影面積は頭と前足程度であり、速度も人間の倍以上ですから、拳銃を撃っても当てるだけで至難の業です。ちなみに警察官は訓練で動かない的を狙って5メートルや10メートルの距離で撃ちますが、的の中央に当たるのは1割以下で、的にすら当たらないことがめずらしくありません。そして動く的を狙って撃つ訓練は全く受けていません。
運良くクマに弾が当たったとしても、人間ですら「熱い!」としか感じない程度の威力しかありません。奇跡的にクマの目や鼻といった急所に命中しない限り、クマにとっては痛くもかゆくもないでしょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


