警視庁公安部外事一課の「大川原化工機冤罪事件」について その1【元刑事が解説】

 本日(2025/8/4)報道されましたが、警視庁は関係者の処分を検討しているとのことです。この事件に関しては、国賠訴訟で事件捜査に当たった現職の警察官が「ねつ造」と発言したことが衝撃的でした。通常なら、こうした発言を公にした警察官は何らかの処分を受けるのですが、この警察官が処分を受けたという話は全く無く、逆にその上司らが処分されるかもしれないという流れになっているようです。
 この捜査に当たったのは、警視庁公安部外事一課です。私自身は刑事一筋なので、公安関係部署で勤務したことはありません。しかし、I警察署刑事課で勤務していた2020年頃、この外事一課で働いたことのある刑事が同じ刑事課内にいました。公安から刑事になる警察官は少ないですが、たまにいるのです。この刑事から、外事一課の内情についてこんな話を聞きました。

 とにかく仕事がなくて、朝出勤して席に着くと、課員はパソコンを開いて何か書類を作成するようなふりをするが、実際には何もしていない。そのまま午後5時15分になり、チャイムが鳴ると、みんな一斉にパソコンを閉じて上司に挨拶して帰宅。毎日がそんな感じだった。たまに、事件になるかもしれない情報が上がってくると、照会文書1枚作る仕事がみんなで奪い合いになった。

 こんな状態ですから、そのままだといずれ人員削減、課解体となることを公安部幹部は恐れたと思われます。そんな中で「大川原化工機」の事件情報が入ってきたのです。課員一同、久しぶりの事件にさぞや奮起し、歯止めが効かなくなったという状況が見えてきます。刑事部や生活安全部では、事件は次から次なので、一旦手をかけた事件であっても、違法性に疑問があればすぐに手を引き、違う事件に移りますので、このような冤罪事件は起きにくい環境にあります。今回の事案は、公安部が延命を狙ったところ、むしろ寿命を縮める結果になる可能性があり、何とも皮肉な結果になるかもしれません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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