変死事案で「自殺」と判断されたケース|再捜査が行われない理由と問題点【元刑事が解説】

私が警察署の刑事課で勤務していた当時、ある異動人事をきっかけに、非常に印象に残る事案を経験しました。

刑事課長の異動と不自然な電話の真相

当時、別の警察署(Z署)から刑事課長として着任した人物(以下、P課長)がいました。難関大学院出身で学歴は優秀でしたが、現場での捜査能力や判断力については疑問視される部分がありました。

通常、警察署の刑事課長を務めた後は本部勤務へ栄転するケースが多いのですが、P課長は署から署への“横滑り異動”でした。この時点で、内部的な評価を察することができました。

着任後まもなく、前任地であるZ署の新任刑事課長(Q課長)から、P課長宛に毎日のように電話がかかってくるようになります。1時間以上に及ぶことも多く、内容は厳しい追及や説明要求のように見受けられました。

やがて、この異常な電話の理由が明らかになります。


男子大学生の変死事案|「自殺」とされた判断

問題の発端は、Z署管内で発生した男子大学生の変死事案でした。

P課長は当時この事案を担当し、現場検証などの結果、「自殺・事件性なし」と判断しています。しかし、

  • 遺書が存在しない
  • 明確な動機が確認できない
  • 遺族が強く他殺の可能性を主張

という状況でした。

それにもかかわらず、捜査は打ち切られ、殺人事件としての再捜査は行われませんでした。


遺族の訴えと警察の対応

納得できない遺族は、毎朝警察署の前に立ち、出勤する刑事課長に対して再捜査を求め続けました。

この状況はQ課長が着任した後も続き、対応に苦慮したQ課長が、前任者であるP課長に対して連日の電話で説明を求めていたのです。

現場にいた私も何度か電話応対をしましたが、その口調は切迫しており、事案の重大性を強く感じました。


本来行われるべき「司法解剖」とは

このような変死事案では、現在であればほぼ確実に

  • 司法解剖
  • 行政解剖
  • 新法解剖(死因究明制度)

が実施されます。

しかし、この事案では解剖が行われていませんでした。

死因の特定を十分に行わないまま「自殺」と判断したことが、後の大きな問題につながった可能性があります。


結末|現場に残る課題

数ヶ月にわたり続いた電話は、ある日突然途絶えました。

理由は、遺族対応に追われたQ課長が精神的限界に達し、依願退職したためです。

一方で、判断を下したP課長はその後も刑事課長として異動を繰り返し、最終的には同職のまま定年を迎えました。


まとめ|変死事案の「自殺判断」と再捜査の重要性

このケースから見えてくる重要なポイントは以下のとおりです。

  • 変死事案では初動判断が極めて重要
  • 司法解剖の実施有無が結論を左右する
  • 遺族の訴えがあっても再捜査されないケースがある
  • 捜査判断の妥当性が後に大きな問題となることもある

淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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