天下のザル法「公職選挙法」のお話【元刑事が解説】
よく、天下のザル法として、政治資金規正法と公職選挙法が挙げられます。「ザル法」とは、ザルで水をすくうとボトボトこぼれてすくいようがない、つまり目が粗くて通り抜けてしまうことを言います。この二つの法律でいえば、規制されたことの逃げ道が多すぎて、実際に取り締まることが難しく、やりたい放題になっている様を揶揄されてのことです。それもそのはずです。この二つの法律は、取り締まられる側の当の議員先生たちが法律を作っているわけですから、簡単に捕まるような内容にするわけがありません。
公職選挙法で説明します。議員や議員になろうとする人は、政治活動と選挙運動ができます。ただし、選挙運動は、告示後にしかできません。一方で政治活動は1年365日24時間、いつでもできます。選挙期間中もできます。ですので、立候補予定者は、「政治活動」として、告示日前から街宣活動やビラまきを堂々とできるのです。「来週告示の○○選挙に私に1票入れてください」と街宣したり、ビラに書くとアウトですが、そうした言葉を入れず、自分の顔写真を入れて、政治信条やプロフィール、公約などを言ったり書いたりするのはOKなのです。正にザルです。
街宣車も、選挙運動用は1台しか使えないことになっているのですが、政治活動用自動車は1年中使えるので、一緒に走って街宣をしまくってもOKなのです。これもまたザルです。
選挙運動として、スピーカーを使って街宣していいのは、午後8時までとされています。しかし、駅前などに立って、口頭で投票依頼するのは何時まででもOKです。これまたザルです。
このように、公職選挙法は抜け道だらけで、そうそう簡単に適用されません。私自身、32年間の警察人生で、公職選挙法違反の注意・警告はずいぶんとしましたが、検挙は一度もありませんでした。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
