「私が令和○年○月○日から同年○月○日迄の間に○○警察署刑事担当課に相談した際に作成された告訴告発事件相談簿」について、不存在を理由として非開示とした決定は、妥当である(東京都)
「私が令和○年○月○日から同年○月○日迄の間に○○警察署刑事担当課に相談し
た際に作成された告訴告発事件相談簿」について、不存在を理由として非開示とした決
定は、妥当である。
2 審査請求の内容
本件審査請求の趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条例第
113号。以下「条例」という。)に基づき、審査請求人が行った「私が令和○年○月○日
から同年○月○日迄の間に○○警察署刑事担当課に相談した際に作成された告訴告発事
件相談簿」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、警視総監が令和2年7
月10日付けで行った不存在を理由とする非開示決定(以下「本件非開示決定」という。)
について、その取消しを求めるというものである。
3 本件審査請求に対する実施機関の説明要旨
本件非開示決定は、適正かつ妥当なものである。
4 審査会の判断
(1)審議の経過
本件審査請求は、令和3年3月24日に審査会に諮問された。
審査会は、令和3年12月28日に実施機関から理由説明書を収受し、令和4年2月21
日(第159回第三部会)及び同年4月20日(第160回第三部会)に審議した。
(2)審査会の判断
審査会は、本件審査請求に係る審査請求人の審査請求書における主張並びに実施機
関の弁明書及び理由説明書における主張を具体的に検討した結果、以下のように判断- 1 -
する。
ア 告訴・告発事件相談について
(ア)告訴・告発事件相談は、司法警察員たる警察職員が、犯罪により害を被った者
等から告訴及び告発(以下「告訴等」という。)を受理するに先立ち、告訴人及び
告発人から、犯罪事実、被告訴人及び被告発人に対する処罰意思の有無、公訴時
効期間、親告罪の告訴期間等を確認するために受ける相談をいう。
(イ)警察職員は、知能犯に関する告訴等の相談を受けたときは、「知能犯に関する告
訴及び告発取扱要綱の制定について」(平成15年4月1日通達甲(刑.2.資)第
3号。以下「告訴等取扱要綱」という。)に基づき、警察総合相談業務等管理シス
テム(警察相談に伴う相談業務(告訴等に係る相談を含む。)を総合管理するシス
テムをいう。以下「相談等管理システム」という。)に、当該相談に係る事案の概
要、措置その他必要な事項を速やかに入力した後、同システムから出力した告訴・
告発事件相談簿について所属長の決裁を受け、関係書類と共に備え付けるものと
されている。
なお、知能犯以外に関する告訴等の相談を受けたときも、事案の概要等を確認
した後、相談等管理システムに登録している。
(ウ)「告訴及び告発の取扱いについて」(平成15年4月1日通達甲(副監.刑.2.
資)第15号。以下「告訴等通達」という。)では、実施機関に告訴状又は告発状が
郵送された場合等で、告訴権、犯罪事実、処罰意思等の確認が困難であると認め
られるときは、告訴人又は告発人に対し速やかに来署を求めるなどして、資料の
提出又は説明を求めることとされている。
イ 本件非開示決定の妥当性について
審査請求人は、実施機関が、開示請求時において、審査請求人が作成し、郵送し、
告訴相談をしていた告訴状複数を保管していたにもかかわらず、「公文書を作成し
ておらず、存在しません。」と非開示の理由を述べているが、それらの告訴状は、刑
事担当課の警察職員によって、告訴・告発事件相談簿に記録されるべきものであり、- 2 -
本件非開示決定は誤っている旨、主張する。
審査会が告訴等通達を確認したところ、告訴等の受理に当たっては、犯罪事実が
特定されているか等の要件を確認することとされており、犯罪が成立しないことが
明らかであったり、犯罪事実を示さない告訴等は無効である旨、定められていた。
この点につき実施機関は、審査請求人から送付されてきた告訴状4通について郵
便物として受領した後、その内容を確認したが、いずれもその書面からは具体的な
証拠に基づく犯罪構成要件に該当する事実が特定できなかった旨、説明する。また、
審査請求人を○○警察署に呼び出し、その内容について説明を求めたが、審査請求
人から犯罪事実を特定できるような説明を得ることができず、告訴・告発事件相談
として記録する事案の概要等を確認できなかったことから、告訴・告発事件相談簿
を作成せず、同告訴状を審査請求人に返戻した旨、説明する。
なお、実施機関では、当該告訴状の郵送による受領から返戻までの経緯について、
別に定める書類に記録し、別途、審査請求人から開示請求を受けて、一部開示決定
をしているとのことである。
また、審査会が告訴等取扱要綱を確認したところ、前記ア(イ)のとおり、実施
機関が告訴等の相談を受けたときは、当該相談に係る事案の概要等を相談等管理シ
ステムに入力した後、関係書類と共に備え付けるものとする旨、定められていた。
これについて実施機関は、本件開示請求に対し、○○警察署において、告訴・告
発事件相談簿及び相談等管理システムを綿密に検索したが、本件開示請求に係る保
有個人情報が存在しないことを確認した旨、説明する。
以上のことを踏まえると、本件開示請求に係る保有個人情報が存在しないとする
実施機関の説明に不自然、不合理な点はなく、他にその存在を認めるに足りる事情
も見当たらないことから、本件開示請求につき、不存在を理由として非開示とした
実施機関の決定は、妥当である。
なお、審査請求人は、審査請求書においてその他種々の主張をしているが、これら
はいずれも審査会の判断を左右するものではない。
よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 - 3 -
(答申に関与した委員の氏名)
久保内 卓亞、木村 光江、徳本 広孝、寳金 敏明 - 4 -
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。