福祉犯捜査要綱の制定(愛知県)

○福祉犯捜査要綱の制定

平成11年12月22日

生少発甲第53号

少年を虐待し、酷使し、その他少年の福祉を害し、又は少年に有害な影響を与える犯罪については、暴力団等による人身売買、少女買春、有害職業紹介等の悪質な事犯が依然として後を絶たず、個々の事犯もますます巧妙化、広域化している。

また、少年の権利・保護を重視する国際的な潮流の中で、児童買春や児童ポルノ事犯が、少年の権利を著しく侵害する極めて重大な問題であるとの認識が強まり、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平成11年法律第52号)が制定され、平成11年11月1日から施行された。

こうした少年を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、福祉犯に対する組織的かつ効率的な捜査活動をより強力に推進するため、別記のとおり福祉犯捜査要綱を制定し、平成11年12月24日から実施することとしたので、その適正な運用に努められたい。

なお、福祉犯捜査要綱の制定(平成3年防少発甲第7号)は、廃止する。

〔平15生少・生非発甲37号・制定文一部改正〕

別記

福祉犯捜査要綱

第1 趣旨

この要綱は、少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)に規定する福祉犯(児童買春に係る犯罪、児童にその心身に有害な影響を与える行為をさせる犯罪その他の少年の福祉を害する犯罪であって警察庁長官が定めるものをいう。以下同じ。)に係る捜査の組織的かつ効率的な推進に関し、必要な事項を定めるものとする。

第2 基本的配意事項

少年課長及び警察署長は、福祉犯捜査に当たっては、次に掲げる事項に配意するものとする。

(1) 福祉犯に関する情報の収集及び管理並びに福祉犯の捜査要領に関し、具体的な指揮及び指導を徹底すること。

(2) 部門間の連携を図ること。

(3) 福祉犯の形態は複雑多岐にわたることから、取締りに当たっては法令の多角的運用に努めること。

(4) 福祉犯被害少年の事情聴取等に当たっては、その方法及び担当者の選定等について配慮し、プライバシーの保護に努めること。

(5) 捜査上知り得た秘密の保持に努めること。

第3 情報の収集及び管理

1 基礎資料の収集及び整備

警察署長は、次に掲げる事項に関する資料を収集し、基礎資料として整備し活用するものとする。

ア 児童買春・児童ポルノ事犯又は売春事犯を敢行するおそれのある業者及び有害図書類を取り扱う業者

イ 年少者を使用し、又は客として立ち入らせるおそれのある深夜飲食店

ウ 深夜業務、危険有害業務等を行う事業所

エ 暴力団員(準構成員を含む。以下同じ。)による人身売買、強制労働、中間搾取等が行われるおそれのある事業所

オ 家出、暴力団員との交遊その他のぐ犯行為を繰り返す少年

カ ゲームセンター、カラオケボックス、公園その他少年がい集する施設及び場所

キ シンナー、接着剤、塗料又は充てん料の卸売業者、小売店及び使用場所

2 協力者の確保

少年課長及び警察署長は、幅広い情報収集を実施するため、平素から少年の権利・保護に理解のある協力者の確保に努めるものとする。

3 福祉犯情報収集員等の指定及び任務

(1) 福祉犯情報収集員

ア 人身安全対策課、保安課、生活経済課、サイバー犯罪対策課、生活安全特別捜査課、薬物銃器対策課及び外事課に福祉犯情報収集員(以下「情報収集員」という。)を置く。

イ 情報収集員には、警察本部長が指名する者をもって充てる。

ウ 情報収集員は、福祉犯に関する情報の収集に当たるものとする。

(2) 福祉犯情報連絡員

ア 警察署の各課に福祉犯情報連絡員(以下「情報連絡員」という。)を置く。

イ 情報連絡員は、警部補以下の階級にある者のうちから警察署長が指名するものをもって充てる。

ウ 情報連絡員は、福祉犯に関する情報の収集に努めるとともに、相互に緊密な連携を保ち、積極的に情報交換を行うものとする。

(3) 福祉犯情報収集管理責任者

ア 少年課及び警察署に福祉犯情報収集管理責任者(以下「福祉犯情報責任者」という。)を置く。

イ 福祉犯情報責任者には、少年課にあっては福祉犯捜査を担当する課長補佐を、警察署にあっては生活安全警察部門を担当する課長をもって充てる。

ウ 福祉犯情報責任者は、情報収集活動の指導及び他部門との情報交換に当たるとともに、収集された情報を一元的に管理し、捜査活動に反映するよう努めるものとする。

(4) 連絡会の開催

福祉犯情報責任者は、必要に応じ、随時情報収集員又は情報連絡員との連絡会を開催し、情報交換及び情報収集活動の指導を行うものとする。

第4 的確な捜査活動の推進

1 組織捜査の推進

福祉犯は、潜在性、組織性、広域性及び複雑多様性を有していることから、情報の入手、証拠の収集、被疑者の逮捕及び取調べ、被害少年の救出保護等に当たっては、警察本部及び警察署が常に緊密な連携を保ち、組織捜査を推進するものとする。

2 効率的な福祉犯捜査の推進

(1) 重点的な捜査の推進

少年を取り巻く社会情勢及び地域の特殊性を考慮し、次に掲げる事犯を重点として捜査を推進するものとする。

ア 少年の権利を著しく侵害する児童買春・児童ポルノ事犯

イ 暴力団員による人身売買、中間搾取及び強制労働事犯

ウ 暴力団員又は悪質風俗営業者による有害支配、ぐ犯者引渡し、売春、淫行、年少者雇用及び薬物事犯

エ その他社会的な反響が大きな事犯

(2) 警察庁等との連携

広域にわたる捜査に当たっては、警察庁、管区警察局及び他の都道府県警察本部と緊密な連携を図るものとする。

(3) 共同捜査及び合同捜査の推進

ア 少年課長は、他の都道府県警察と競合する福祉犯を捜査する場合は、共同捜査又は合同捜査の推進に配意するものとする。

イ 警察署長は、他の警察署と競合する福祉犯を捜査する場合は、共同捜査又は合同捜査の推進に配意するものとする。

3 福祉犯捜査共助責任者の指定及び任務

(1) 少年課に福祉犯捜査共助責任者(以下「福祉犯共助責任者」という。)を置く。

(2) 福祉犯共助責任者には、少年事件兼福祉犯対策担当調査官をもって充てる。

(3) 福祉犯共助責任者は、福祉犯捜査に関し、警察庁、管区警察局及び他の都道府県警察本部との連絡及び共助並びに警察署間の調整を行うものとする。

第5 報告

1 端緒報告

警察署長は、福祉犯に関する情報を入手し、捜査の指揮を行うときは、速やかに少年課長(福祉第一係経由。以下同じ。)に報告するものとする。

2 捜査着手報告

警察署長は、福祉犯の事件捜査に着手するときは、速やかに少年課長に報告するものとする。

3 報告方法等の細目的事項は生活安全部長が別に定める。

第6 関係機関、団体等との連携

福祉犯捜査に当たっては、労働基準監督署、公共職業安定所、保健所その他福祉犯に関連する可能性が高い営業を監督する行政機関及び学校、教育委員会等被害者となりやすい少年の実態を把握していると認められる機関と緊密な連携を図るものとする。

第7 被害少年の保護等

福祉犯の被害少年に対しては、当該少年が再び被害に遭うことを防止するため、保護者、学校関係者等に配慮を求めるものとする。

また、同種の犯罪の発生を防止するため、関係行政機関・団体への連絡を行うほか、広報啓発活動等の必要な措置を執るものとする。

〔平14務警発甲49号平15生少・生非発甲37号務警発甲48号平16生少発甲87号平17務警発甲141号平20務警発甲52号平24務警発甲52号平28務警発甲70号平30生少発甲45号平31務警発甲47号令3生少発甲11号・本別記一部改正〕

福祉犯捜査要綱の制定

平成11年12月22日 生少発甲第53号

(令和6年4月16日施行)


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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