平成17年○月○日に○○警察署刑事課○○係長に受理して貰った、私が提出した告訴状」との保有個人情報開示請求につき、長崎県警察本部長が長崎県個人情報保護条例第18条第2項の規定により不開示とした決定は、妥当である。(長崎県警)
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答 申
答申(不)第10号
第1 審査会の結論
審査請求人からの「平成17年○月○日に○○警察署刑事課○○係長に受理して貰
った、私が提出した告訴状」との保有個人情報開示請求(以下「本件開示請求」と
いう。)につき、長崎県警察本部長が長崎県個人情報保護条例(平成13年長崎県条
例第38号。以下「条例」という。)第18条第2項の規定により不開示とした決定は、
妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 開示請求の内容
審査請求人は、平成22年4月19日付けで、条例第12条第1項の規定により長崎
県警察本部長(以下「処分庁」という。)に対して「平成17年○月○日に○○警
察署刑事課○○係長に受理して貰った、私が提出した告訴状」との開示請求を行
った。
2 処分の内容
処分庁は、条例第18条第2項の規定に基づき、平成22年4月26日付けで、次の
理由を付して、保有個人情報不開示(不存在)決定(以下「本件処分」という。)
を行い、審査請求人に通知した。
(不開示決定の理由)
本件開示請求に係る保有個人情報が記録された公文書を保有していなかった
ため
3 審査請求について
審査請求人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により
本件処分を不服として、平成22年6月28日付けで、処分庁の上級行政庁である長
崎県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、審査請求(以下「本件審査
請求」という。)を行った。
第3 審査請求人の主張の要旨
本件審査請求の趣旨は「本件処分を取り消すとの裁決を求める。」というもので
あり、審査請求人の主張は、審査請求書及び意見書によれば、おおむね次のとおり
である。
(1) 私は、平成17年○月○日○○警察署刑事課○○警部から、「○○警察署○○係
長から告訴状を受け取った。」との電話連絡を受けており、検索を詳細に行うと
見つかると考えられる。
(2) 告訴状を受理したことは○○係長に確認しており、そのことは○○警察署○○
刑事課長が引き継いでいる。告訴状に記載している印鑑登録証明書の盗難に関し
て市に調査を依頼している。不開示で済む問題ではないと判断する。
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第4 諮問庁の説明要旨
諮問庁からの説明は、理由説明書によれば、おおむね次のとおりである。
1 不開示決定とした理由
(1) 本件対象保有個人情報について
本件開示請求に係る対象保有個人情報は、開示請求者が平成17年○月○日に
○○警察署で受理されたと主張する告訴状と認められる。
告訴に関しては、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)や犯罪捜査規範(昭和
32年国家公安委員会規則第2号)等でその取扱いが規定されており、処分庁は、
本件開示請求に対し、当時の関係職員への聴取及び対象保有個人情報の検索等
を実施した。
(2) 対象保有個人情報の確認等
ア 関係職員からの聴取
審査請求人は、開示請求書の中で、平成17年当時に○○警察署刑事課にお
いて勤務していた警察職員に告訴状を受理して貰った旨申し立てていること
から、事実関係を確認するため、当該職員や関係職員に聞き取りを行った。
その結果、いずれの職員も、月日は不明ながら審査請求人からの告訴の申
出があったことは記憶にあるが、同人からの告訴状は受理していないとのこ
とであった。
イ 犯罪事件受理簿の確認
開示請求の内容が事実である場合、開示請求書に記載された日又はその後
に審査請求人からの告訴状を受理している可能性があり、その場合、犯罪捜
査規範により規定された「犯罪事件受理簿」に登載されていることになる。
しかしながら、平成17年の犯罪事件受理簿において審査請求人の氏名等をも
とに関係警察署において検索を行ったが、その事実は認められなかった。
ウ 告訴状と題する文書の写し等
告訴事件等に関する相談を受けた場合で、告訴状の要件を満たしているか
どうか吟味する場合等には、長崎県警察では、長崎県警察の警察安全相談業
務に関する訓令(平成13年長崎県警察本部訓令第31号。以下「相談訓令」と
いう。)により定めている相談受理票において、その相談要旨等を記録し、
処理する場合がある。その際、相談者が持参し、警察において受理する前の
検討段階の告訴状(以下「告訴状と題する文書」という。)について、その
写しを作成し、相談受理票に添付して記録化する場合もある。
しかしながら、相談受理票については、所属長が特別に延長措置を行わな
い限り、相談訓令では保存期間を3年と規定しており、本件開示請求に係る
相談受理票が仮に作成され、告訴状と題する文書の写しが添付されていたと
しても、平成17年当時に作成された文書については、平成20年12月31日をも
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って保存期間が満了していることになる。
なお、関係警察署において現有している相談受理票について、開示請求に
記載された日付及び開示請求者の氏名を基に検索したが、該当する公文書は
存在しなかった。
(3) 諮問庁が不開示決定を妥当と判断した理由
以上のとおり、処分庁からの説明によると、関係職員からの聴取や該当する
保有個人情報の検索等を経て条例第18条第2項の規定に基づき本件処分を行っ
たものであり、処分庁の不開示決定は妥当なものであると諮問庁は判断した。
2 審査請求の趣旨及び理由に関する部分に対する意見
審査請求人は、審査請求の趣旨として、本件処分を取り消すことを求め、その
理由を記載しているが、処分庁では上記のとおり、当該開示請求に係る保有個人
情報を保有しておらず、審査請求人の主張によって本件処分の判断が変わるもの
ではなく、処分庁が行った不開示決定は妥当と判断した。
第5 審査会の判断理由
当審査会において、本件対象保有個人情報の有無について、審査請求人及び諮問
庁の主張を具体的に検討した結果、次のように判断する。
1 本件対象保有個人情報について
本件対象保有個人情報は、特定日に特定警察署に提出した告訴状であると認め
られる。
処分庁は、本件対象保有個人情報を保有していないとして、不開示とした本件
処分を行っているので、以下検討する。
2 本件対象保有個人情報の保有の有無について
(1) 犯罪事件受理簿について
告訴状が受理された場合は、犯罪捜査規範第62条により、犯罪事件受理簿に
登載しなければならないこととされているが、処分庁は職員への聞き取りや犯
罪事件受理簿の検索を行い、告訴状が受理された状況は確認されなかったとし
ている。
そのため、審査会において事務局員に審査請求人の申し立てている関係警察
署の犯罪事件受理簿を確認させたところ、該当する事件の記載はなく、したが
って告訴状の受理の事実はないことを確認した。
なお、仮に告訴状が警察署において受理されていた場合であっても、条例第
45条第2項の規定により「訴訟に関する書類」として条例に基づく開示請求等
の規定の適用が除外され不開示となることは言うまでもない。
(2) 相談受理票について
諮問庁によると、告訴状が受理されていなくても、告訴状の提出の申出があ
った場合に、告訴状の要件を満たしているかどうかを吟味するため、相談訓令
の規定に基づき、相談受理票を作成し、その申出内容等を記録することがある
が、その場合には、告訴状と題する文書そのものを受理せず、その写しを当該
相談受理票に添付することがあるとのことである。
このため、相談受理票が作成されていれば、告訴状と題する文書の写しが存
在する可能性があることから、相談受理票について検索を行ったが、本件に該
当する相談受理票は保有されていないとのことである。
なお、相談受理票の保存期間は3年であることから、仮に記録されながら保
存期間の満了で廃棄されてしまった可能性もないではないが、いずれにしても
現有している相談受理票の中に本件に該当する相談受理票は保有されていない
とする諮問庁の説明に格別不合理な点は認められない。
3 結論
以上のような状況から、本件対象保有個人情報を保有していなかったとする諮
問庁の説明に、格別不合理な点はなく、また、他に本件対象保有個人情報が存在
すると推測される特段の事情も認められないことから、処分庁が本件開示請求に
対して、条例第18条第2項の規定に基づき保有個人情報不開示(不存在)とした
決定は、妥当である。 -4
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審 査 会 の 審 査 経 過
年 月 日 審 査 経 過
平成22年7月29日 ・諮問庁から諮問書を受理
平成22年8月17日 ・諮問庁から理由説明書を受理
平成22年9月9日 ・審査請求人から意見書を受理
平成22年9月16日 ・審査会(審査)
平成22年10月20日 ・審査会(審査)
平成22年11月30日 ・答申
長崎県個人情報保護審査会委員名簿
氏 名 役 職 備 考
井田洋子 長崎大学経済学部准教授
岡 本 芳 太 郎 長崎大学経済学部教授 会長職務代理者
長尾久美子 長崎女子短期大学生活科学科生活福祉専
攻教授
中村尚志 弁護士
堀江憲二 弁護士 会 長
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。