警察法第79条に係る解釈基準等について(通達)(京都府警)

警察法第79条に係る解釈基準等について(通達)
最終改正 令和4.5.27 例規公室第17号
京都府警察本部長から各部長、各所属長あて
公安委員会に対する苦情等の申出に係る事務の取扱いに関する訓令(平成13年京都府警察本部
訓令第16号)第8条の規定により、警察職員の職務執行に対する苦情の適正な処理について(平
成13. 4.13:警察庁丙人発第 115号)の警察庁長官官房長通達を見据えた警察法(昭和29年法
律第 162号。以下「法」という。)第79条に係る解釈基準等を下記のように定め、平成13年6月
1日から実施することとしたから、誤りのないようにされたい。

第1 法第79条に係る解釈基準
1 警察職員の職務執行に関する苦情
(1) 捜査、交通取締り、告訴・告発の取扱い又は警察職員の執務の態様について、日時、場
所、内容、被った不利益の内容又は警察職員の執務の態様に対する不満を個別具体的に摘
示する文書による苦情は、苦情申出制度の対象となる。しかし、明らかに警察の任務とは
いえない事項についての警察職員の不作為を内容とするものは対象とならない。
(2) 相談との関係
相談とは、例えば犯罪の被害者等が、警察に対して、防犯指導、助言、相手方への警告
、検挙等何らかの権限行使その他の措置を求めることを意味するものと解されるが、苦情
と相談は明確に区別できるものではなく、京都府公安委員会(以下「公安委員会」という
。)は、申出の内容を実質的に判断し、苦情に該当するものであれば、法第79条の規定に
より適切に対応し、その結果を申出者に通知することとなる。
2 申出の手続
(1) 受理
ア 体制
公安委員会補佐室のほか、申出者の利便に配慮する観点から、警察本部の苦情に係る
事務担当所属及び警察署の広聴・相談係その他の苦情担当係においても受け付けること
とする。
イ 文書の様式
苦情申出制度については、府民等の利便性に配慮した柔軟な運用を行うことがその制
度の趣旨にかなうものである。
したがって、様式を問わず全体の記載から、警察職員の職務執行についての苦情と認
められるものは、苦情として受理するものとする。
ウ 文書作成の援助
苦情の申出の手続に関する規則(平成13年国家公安委員会規則第11号。以下「規則」
という。)第3条に規定する苦情申出書を作成することが困難であると認める場合とは
、文書作成に支障を生じる身体上の障害を有している者、子供、外国人等文書作成が困
難な者等が苦情の申出を行おうとする場合をいう。
エ 文書の補正
規則第4条において、定められた事項が記載されていない場合には、申出者に対し、
期間を定めて補正を求めることができるとされているが、申出者に過重な負担を課すこ
とを避ける観点から、申出者の特定並びに苦情の申出の意思及び内容の確認が困難な場
合に限りこれを行うこととする。
(2) 公安委員会に対する報告等
公安委員会補佐室長(以下「室長」という。)が、自ら直接受理した苦情申出書のほ
か、警察本部の他の所属や警察署において受理した苦情申出書のすべてについて整理に当
たるとともに、速やかに公安委員会に対する報告を行うこととする。ただし、定型的な処
理その他迅速な処理が可能な苦情については、公安委員会のあらかじめの指示の下で、調
査及びその結果を踏まえた措置を講じ、その結果の報告と併せて受理の報告を行うことは
許容される。
3 苦情の対応
(1) 公安委員会の指示
公安委員会は、京都府警察本部長(以下「本部長」という。)に対し、事実関係の調査
及びその結果を踏まえた措置を行わせるとともに、その結果の報告を求めることとなる。
また、当該調査が不十分であると認められる場合等必要に応じて苦情処理に関する指示を
行うこととなる。
なお、法第79条中「法令又は条例の規定に基づき」とあるのは、上記の公安委員会の指
示は、法第38条第3項又は第4項その他の法令の規定の範囲内で行われるべきものである
との趣旨である。
(2) 警察における調査等
本部長は、前記3の (1)の公安委員会の指示に従い、事実関係の調査及びそれを踏まえ
た措置をとることとなる。
(3) 調査及び措置の結果の公安委員会に対する報告
室長は、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置状況について苦情担当者等から連
絡を受け、それらを本部長の指揮の下、公安委員会に報告することとなる。
4 対応結果の通知
(1) 通知内容の決定
公安委員会は、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置についての警察からの報告
を基に、通知内容を決定することとなる。
(2) 対応結果の通知文書の記載事項
通知文書には、申出の内容に応じて、申し出られた苦情に係る事実関係の有無、事実関
係が確認できた場合には苦情の対象である職務執行の問題点の有無、問題点のある職務執
行については講じた措置等について記載することとなるが、事案によっては簡素かつ定型
的なもので足りる場合もある。
(3) 対応結果の通知方法
公安委員会において郵送、手渡し等一定の方法を定めることとなるが、その通知方法に
は、電子メール・ファクシミリによるものは含まれない。
5 苦情の対応及び対応結果の通知義務解除
(1) 法第79条第3項各号の趣旨
第3項各号は、苦情の対応結果の通知義務が解除される場合についての規定である。
第3項各号に該当するか否かの判断は、公安委員会が行う。
なお、第3項各号は、申出の受理に係る要件ではなく、公安委員会の対応結果通知義務
を解除する要件であることから、第3項各号に該当するか否かを問わず第1項の苦情の申
出に該当する限りすべて受理し、その内容等を公安委員会に報告する必要がある。
(2) 第3項各号の解釈
ア 第1号
いわゆる権利の濫用に相当する場合を想定しており、同一人により同一内容に係る苦
情申出が反復してなされた場合であって、客観的事情から合理的に判断して苦情として
の実質的要件を欠いているとき、極左暴力集団等が警察権力の弱体化手段であることを
標榜しつつ苦情の申出を行う場合等申出者の都道府県警察の事務の適正な遂行を妨害す
る意図が外形的に表象される場合に限られるものとなる。
したがって、捜査対象者(関係者)が当該捜査の中止を求めるもの等適法妥当な職務
執行に対するいわれなき抗議・けん制と思われる苦情であっても必ず受理し、申出者の
上記の意図が客観的に明らかでない限り、所要の対応を行い、その結果を申出者に通知
することとなる。
イ 第2号
苦情申出者が申出後に転居等したため、申出を受けた公安委員会が新たな所在を知り
得ないために申出者に通知できない場合を想定している。
ウ 第3号
複数人が同一内容の苦情について共同して申し出る場合を想定している。
なお、このような場合には、苦情の申出の手続に関する規則第2条第2項の規定によ
り苦情を申し出る文書に記載された対応結果の通知先である代表者に対応結果を通知す
ることで足りる。
(3) 第3項各号が適用される場合の申出者への連絡
第1号に該当する場合には、同号に該当すると認められるため対応結果の通知は行わな
い旨を、適当と認められる方法により申出者に対して連絡するものとする。
6 その他
(1) 苦情対応の標準的な期間
警察職員の職務執行は、個人の生命、身体及び財産の保護と公共の安全と秩序の維持全
般にわたるものである。したがって、これに対する苦情は様々であり、その対応に要する
時間も区々であることから、行政手続法(平成5年法律第88号)第6条のような標準処理
期間を定める旨の規定を置かなかったものである。ただし、法第79条第3項に「誠実に処
理し」とあるとおり、社会通念上相当と認められる期間内に苦情の対応及び対応結果の通
知を行うことは当然であり、苦情の対応に長い時間を要している場合であって、申出者か
らその対応の状況について問い合わせがあったときは、対応の経過を連絡するなどの配慮
が必要である。
(2) 苦情の対応及び対応結果の通知に係る処分性
ア 行政不服審査法及び行政事件訴訟法の適用の有無
苦情対応及びその通知は、申出者その他の府民等に対して何らの具体的な法律上の効
果を発生させるものでないことから、行政庁が法令に基づき優越的立場において府民等
に権利を設定し、義務を課し、その他具体的な法律上の効果を発生させる行為を対象と
する行政不服審査法(平成26年法律第68号)及び行政事件訴訟法(昭和37年法律第 139
号)における処分には当たらず、それらの法律は適用されない。
イ 行政手続法の適用の有無
苦情対応及びその通知は、申出者その他の府民等に対して何らの具体的な法律上の効
果を発生させるものでないことから、申請に対する処分又は不利益処分のいずれにも当
たらず、行政手続法は適用されない。
(3) 苦情の申出と、請願法における請願及び行政不服審査法における不服申立てとの関係
苦情申出制度による苦情の申出は請願法(昭和22年法律第13号)に基づく請願に該当す
る場合もあり、その場合の苦情の申出は請願の手続をより具体化した側面を有するものと
いえる。この場合において、苦情の申出と請願は互いに排斥するものではなく、同一の事
項について重畳的に苦情の申出及び請願を行うのか、又はいずれかを選択するのかについ
ては申出者(請願者)の判断に委ねられるものである。ゆだ
また、行政不服審査法に規定する不服申立ては行政庁の処分その他公権力の行使を対象
とし、その取消し等を求めるものであるのに対し、法第79条の苦情の申出は警察職員の職
務執行全般を対象としている。したがって、不服申立ての対象となるものについて苦情の
申出がなされた場合には、申出者に対し行政不服審査法の規定による不服申立てを行うこ
とが可能であることを教示することとなる。この場合において、申出者が苦情申出制度に
よる対応を求め、かつ、当該申出内容が警察職員の職務執行に係る苦情に該当するときに
は、当該申出者が行政不服審査法に基づく不服申立てを行うか否かを問わず、苦情申出制
度による対応を行うこととなる。
第2 法に規定する苦情以外の苦情の対応の方針
1 公安委員会あてに申し出られた法に規定する苦情以外の苦情の対応
公安委員会は、法に規定する苦情以外の苦情の対応に当たって、申出者に対する通知に関
しては、文書その他適当と認められる方法により通知することとなる。ただし、次のいずれ
かに該当する場合はこの限りでない。
(1) 申出が警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められるとき。
(2) 申出者の所在が不明であるとき。
(3) 申出者が他の者と共同で苦情の申出を行ったと認められる場合において、当該他の者に
当該苦情に係る処理の結果を通知したとき。
(4) 申出者が通知を求めていないと認められるとき。
(5) 申出者の氏名が明らかでないとき。
2 法第79条に係る解釈基準の準用
第2の1に定めるもののほか、法に規定する苦情以外の苦情の対応については、前記第1
に準じて行うものとする。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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