「国民を詐欺から守るための総合対策」の決定について(通達)(警察庁)
「国民を詐欺から守るための総合対策」の決定について(通達)
近年、SNSやキャッシュレス決済の普及等が進む中、科学技術を悪用した詐
欺等の手口が急激に巧妙化・多様化し、それによって引き起こされる被害が加速
度的に拡大する状況にある。
こうした情勢を踏まえ、変化のスピードに立ち後れることなく対処し、国民を
詐欺等の被害から守るため、官民一体となって一層強力な対策を講じるべく、本
日、第39回犯罪対策閣僚会議において、「国民を詐欺から守るための総合対策」
(別添参照)が決定された。
本総合対策では、
① 「被害に遭わせない」ための対策
② 「犯行に加担させない」ための対策
③ 「犯罪者のツールを奪う」ための対策
④ 「犯罪者を逃さない」ための対策
の4つの柱で取り組むべき対策を掲げている。
本総合対策は、「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日犯罪対策閣
僚会議決定)及び「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に
関する緊急対策プラン」(令和5年3月17日犯罪対策閣僚会議決定)を発展的に
解消させ、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺及びフィッシング等を対象に
総合的な対策を取りまとめ、政府を挙げて対策を推進するものである。各位にあ
っては、本総合対策の趣旨及び内容を踏まえ、関係機関・団体等とも連携しつつ、
諸対策を強力に推進されたい。
1,872 1,734 584 1,136 5,578
25.211.3
8.2
15.2
87.3
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
R1 R2 R3 R4 R5
被害件数(件)
被害額(概数)
(億円)(件)
〇こうした情勢の中、変化のスピードに立ち後れることなく対処し、国民を詐欺の被害から守るためには、
官民一体となって、一層強力な対策を迅速かつ的確に講じることが不可欠。
〇従来のプランを発展的に解消させ、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺及びフィッシング等を対象に、
総合的な対策を取りまとめ、政府を挙げて対策を推進。
特殊詐欺等に対しては、「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日犯罪対策閣僚会議決定)及び「SNSで実
行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」(令和5年3月17日犯罪対策閣僚会議決定)等
に基づき官民一体となった対策を講じてきた一方で、令和5年中の詐欺被害は約1,630億円と前年から倍増。
近年、SNSやキャッシュレス決済の普及等が進む中で、これらを悪用した犯罪の手口が急激に巧妙化・多
様化。それによって引き起こされる詐欺等の被害が、加速度的に拡大する状況。
総合対策の策定
現在の情勢
国民を詐欺から守るための総合対策(概要)
特殊詐欺SNS型投資・ロマンス詐欺フィッシングによる被害
✓令和5年被害額は約452億円
✓前年から約80億円増加
✓令和5年下半期から急増
✓同年被害額は約455億円
✓令和6年1~3月被害額は約279億円
✓インターネットバンキングに係る不
正送金被害が急増(令和5年約87億円)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0
100
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300
400
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600
700
800
SNS型投資詐欺被害額
SNS型ロマンス詐欺 被害額
SNS型投資詐欺認知件数
SNS型ロマンス詐欺 認知件数
(件)(億円)
R5.1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 R6.1 2 3
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
0
4,000
8,000
12,000
16,000
20,000
(件)
認知件数
被害額
H26 H27 H28 H29 H30 R元R2R3R4R5
(億円)
「国民を詐欺から守るための総合対策」における主な施策
1.「被害に遭わせない」ための対策
SNS型投資・ロマンス詐欺対策
➢フィッシングサイトの特性を踏まえた先制的な対策
フィッシング対策
○プラットフォーム上に掲載される広告の事前審査基準の策定・公表、審査体制の整備(特に、日本語や日本の社会等を理解
する者の十分な配置)、広告出稿者の本人確認の強化等をSNS事業者に要請
○捜査機関から提供された「詐欺に使用されたアカウント」等の情報に着眼した、広告の迅速な削除等をSNS事業者に要請
○なりすまし型の偽広告等に関し、SNS事業者に対し、利用規約等に基づき、詐欺広告の削除等の措置を講ずるよう、事業
者団体に通知
○インターネットで拡散する偽・誤情報や、なりすまし型偽広告への対応等について、国際的な動向を踏まえつつ、制度面も
含む総合的な対策を推進
○インターネット上の違法・有害情報への対応として、削除対応の迅速化や運用状況の透明化を大規模プラットフォーム事業
者に義務付ける情報流通プラットフォーム対処法を速やかに施行するとともに、違法情報への該当性に関するガイドラインを
迅速に策定
➢被害発生状況等に応じた効果的な広報・啓発等
➢SNS事業者等による実効的な広告審査等の推進
➢なりすまし型偽広告の削除等の適正な対応の推進
➢大規模プラットフォーム事業者に対する削除対応の迅速化や運用状況の透明化に係る措置の義務付け等
➢知らない者のアカウントの友だち追加時の実効的な警告表示・同意取得の実施等
➢SNSの公式アカウント・マッチングアプリアカウント開設時の本人確認強化
➢新たに開始された金融教育における被害防止に向けた啓発
○金融経済教育推進機構(J-FLEC)による関係省庁と連携した金融経済教育の提供等を通じた金融リテラシーの向上
➢送信ドメイン認証技術(DMARC等)への対応促進
➢フィッシングサイトの閉鎖促進
○フィッシングサイトが有する、1つのIPアドレス上に複数のサイトが構築されるなどの特性を踏まえ、いまだ通報がなさ
れていないフィッシングサイトを把握して、ウイルス対策ソフトの警告表示等に活用するなどを検討
特殊詐欺等対策
➢国際電話の利用休止申請の受付体制の拡充
○国際電話番号を利用した詐欺の被害を防止するため、国際電話の利用休止を一括して受け付ける「国際電話不取扱受付セン
ター」を運営する電気通信事業者に対して、申請受付体制の更なる拡充を要請
➢SMSの不適正利用対策の推進
○SMSの悪用を防止するため、SMSフィルタリングの活用の拡大等を推進
➢携帯電話を使用しながらATMを利用する者への注意喚起の推進
2.「犯行に加担させない」ための対策
➢「闇バイト」等情報に関する情報収集、削除、取締り等の推進
➢青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発
3.「犯罪者のツールを奪う」ための対策
➢金融機関と連携した検挙対策の推進
➢電子マネーの犯行利用防止対策
➢預貯金口座の不正利用防止対策の強化等
➢SNS事業者における照会対応の強化
4.「犯罪者を逃さない」ための対策
○SNS事業者に対し、捜査機関からの照会への対応窓口の日本国内への設置、迅速な照会対応が可能な体制の整備等を要請
➢法人がマネー・ローンダリングに悪用されることを防ぐ取組の推進
○金融機関において、詐欺被害と思われる出金・送金等の取引をモニタリング・検知する仕組み等を構築するとともに、不正利
用防止の措置を行い、疑わしい取引の届出制度の活用をはじめ、不正な口座情報等について警察へ迅速な情報共有を実施
○詐取された電子マネーの利用を速やかに発見するためのモニタリングの強化、発見した場合の電子マネーの利用の停止、警察
への情報提供の体制について検討
○利用者にフィッシングメールが届かない環境を整備するため、インターネットサービスプロバイダー等のメール受信側事業
者や、金融機関等のメール送信側事業者等に対して、送信ドメイン認証技術の計画的な導入を要請
○不審なアカウントとのやり取りを開始する時など、詐欺の被害に遭う場面を捉えて利用者に個別に注意喚起を行うよう、S
NS事業者に要請
○被害回復給付金支給制度及び振り込め詐欺救済法のきめ細やかな周知など効果的な運用の促進
○法人口座を含む預貯金口座等の不正利用を防止するための取引時確認の一層の厳格化等の推進
➢暗号資産の没収・保全の推進
○実態のない法人がマネー・ローンダリング等の目的で利用されることを防ぐための新たな方策について検討
➢財産的被害の回復の推進
➢本人確認の実効性の確保に向けた取組
➢海外拠点の摘発の推進等
○携帯電話等の契約時の本人確認をマイナンバーカード等を活用した電子的な確認方法へ原則一本化
➢匿名・流動型犯罪グループに対する取締り及び実態解明体制の強化
国民を詐欺から守るための総合対策
令和6年6月18日
犯罪対策閣僚会議
目次
序 「国民を詐欺から守るための総合対策」の策定に当たって・・・・・・1
1 「被害に遭わせない」ための対策
(1) SNS型投資・ロマンス詐欺の被害実態に注目した対策・・・・・・3
(2) フィッシングによる被害実態に注目した対策・・・・・・・・・・・8
(3) 特殊詐欺等の被害実態に注目した対策・・・・・・・・・・・・・・10
2 「犯行に加担させない」ための対策
(1) 「闇バイト」等情報に関する情報収集、削除、取締り等の推進・・・15
(2) サイバー空間からの違法・有害な労働募集の排除・・・・・・・・・16
(3) 青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発・・・・・17
(4) 犯罪者グループ等内の連絡手段対策・・・・・・・・・・・・・・・18
(5) 強盗や特殊詐欺の実行犯に対する適正な科刑の実現に向けた取組の推進・18
(6) 詐欺等の犯行に加担した少年の再非行防止のための取組の推進・・・18
3 「犯罪者のツールを奪う」ための対策
(1) 犯罪者グループ等が用いる電話に関する対策・・・・・・・・・・・18
(2) 預貯金口座等に関する対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(3) 暗号資産の移動対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(4) 闇名簿対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(5) 在留外国人等に対する広報・啓発の実施・・・・・・・・・・・・・22
(6) 不動産業者等と連携した空き家等の不正な利用の防止・・・・・・・22
4 「犯罪者を逃さない」ための対策
(1) 匿名・流動型犯罪グループの存在を見据えた取締りと実態解明・・・23
(2) マネー・ローンダリング対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(3) 財産的被害の回復の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
序 「国民を詐欺から守るための総合対策」の策定に当たって
国民が互いに寄せる信頼は、様々な社会・経済活動を円滑に行うに当たり不
可欠のものであり、安全・安心な社会を支える基盤である。しかしながら、昨
今、人の信頼を逆手に取り、これをだまして財産を奪い取る卑劣な詐欺が激増
している。令和5年中の詐欺被害額は前年比でほぼ倍増し、約1,630億円に上
るなど、我が国の信頼を基礎とする基盤が揺らぎつつある。
政府はこれまで、令和元年6月に、特殊詐欺等から高齢者を守るための総合
対策として、「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日犯罪対策閣僚会
議決定)を、また、令和5年3月に、「闇バイト強盗」などと称される一連の事
件を含め、一層踏み込んだ対策を講じるため「SNSで実行犯を募集する手口
による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」(令和5年3月17日犯罪
対策閣僚会議決定)をそれぞれ策定し、金融機関やコンビニエンスストア等と
連携した被害の未然防止や、携帯電話、電話転送サービス等が犯罪に悪用され
にくくする対策を推進するなど、官民一体となった対策を講じてきた。
しかしながら、特殊詐欺は、こうした官民を挙げた対策が進むと、それに応
じて手口を変化させ、被害を拡大させており、令和5年中、キャッシュカード
詐欺盗等の手口は減る一方、ポップアップ表示等により被害者をだまし、電子
マネーによって被害金を交付させる等の手口(架空料金請求詐欺)が大幅に増
加した。政府は、このような手口の変化に応じて機敏に対策をアップデートす
ることが求められている。
手口が変化する要因の一つに、科学技術の悪用がある。近年、科学技術の急
速な発展に伴って、これらの科学技術を悪用した犯罪の手口が急激に巧妙化し
つつ多様化し、それによって引き起こされる被害も、加速度的に拡大する状況
が見受けられる。
例えば、投資環境の変化等を背景に、令和5年下半期以降、投資家や著名人
になりすましたSNS上の「偽広告」等によって被害者を誘い込み、SNS上
のやり取りで信用させ、金銭をだまし取る手口の詐欺や、SNSを通じて被害
者に恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る詐欺の被害が急増している。
これらのSNS型投資・ロマンス詐欺は、多くの国民が利用するSNS等が犯
行ツールとして悪用されており、令和5年中の被害額は同年中の特殊詐欺の被
害額を上回り、さらに、令和6年に入ってからも被害が増え続けている。
また、キャッシュレス決済の利用の拡大等を背景に、正規の企業のサイトを
模したフィッシングサイト等により、ID・パスワード等を不正に入手し、不
正送金等を行うフィッシングによる被害も拡大しており、令和5年中、インタ
ーネットバンキングに係る不正送金事案による被害額は、過去最多となった。
こうした科学技術を用いた詐欺の被害の拡大は、我が国だけの問題ではなく、
国際的にも大きな脅威となっている。令和5年12月に開催されたG7茨城水戸
1
内務・安全担当大臣会合では、国境を越える組織的詐欺がG7にとって共通の
課題であるとの認識が共有された。また、令和6年3月には、英国で国際詐欺
サミットが開催され、G7以外の国も含めたより広い枠組みで、国境を越える
組織的詐欺に協働して対処していくことが確認された。
こうした情勢の中、一層複雑化・巧妙化する詐欺等について、その変化のス
ピードに立ち後れることなく対処し、国民をその被害から守るためには、官民
一体となって、一層強力な対策を迅速かつ的確に講じることが不可欠である。
そこで、今般、「オレオレ詐欺等対策プラン」及び「SNSで実行犯を募集す
る手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」を発展的に解消さ
せ、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺及びフィッシングを対象に、政府
が総力を挙げて取り組む施策をまとめ、「国民を詐欺から守るための総合対策」
を策定した。
AI等の科学技術がますます発展する中において、詐欺等の被害を食い止め、
信頼を基礎とする我が国社会の健全な発展、安全・安心な社会の実現を図るた
め、各省庁等は、本総合対策に基づき、地方公共団体、民間事業者等の協力を
得ながら、各種施策を強力に推進することとする。
2
1 「被害に遭わせない」ための対策
(1) SNS型投資・ロマンス詐欺の被害実態に注目した対策
ア 健全な投資環境の確保等のための施策
(ア) 被害発生状況等に応じた効果的な広報・啓発等
① 広報・啓発活動の更なる推進
SNS型投資・ロマンス詐欺においては、金融商品取引法1上の無
登録事業者である可能性がある者からの勧誘による被害が多数発生
しているところ、このような被害を防ぐため、関係省庁が連携した
政府広報を実施するほか、事業者団体等との連携を強化しつつ、デ
ジタル空間をはじめ、多種多様な媒体を活用するとともに、ICT
リテラシー向上に係る啓発の機会等、あらゆる機会を通じての効果
的な広報・啓発を推進する。
② SNS等の利用者への注意喚起等
SNS型投資・ロマンス詐欺の犯行には、SNSやマッチングア
プリが数多く利用されている実態があるところ、利用者が不審なア
カウントとのやり取りを開始するときなど、SNS型投資・ロマン
ス詐欺の被害に遭うおそれがある場面等を捉えて、各サービスの利
用者に個別に適時適切な注意喚起を行うよう、各事業者に対して働
き掛ける。また、利用者からの専用相談窓口を開設するとともに、
SNS上の、金融商品取引法に違反する可能性がある広告や投稿等
に関し、情報収集等を行うための体制を整備した上で、SNS事業
者等と連携し、投資家等に注意を促すための取組等を推進する。
(イ) 投資詐欺サイトに誘導する投稿・偽広告対策等
① SNS事業者等による実効的な広告審査等の推進
SNS上のなりすまし型の偽広告等を入口として、投資詐欺の被
害に遭っている事態がみられるところ、当初接触ツールとして利用
されているSNSを運営する主なSNS事業者に対して、自社プラ
ットフォーム上に掲載される広告の事前審査の強化等を要請する。
具体的には、広告出稿前の段階として、事前審査基準の策定・公表、
審査体制の整備(特に、日本語や日本の社会・文化・法令を理解す
る者の十分な配置)、クローズドチャットを遷移先として設定して
いる広告は原則として採用しないなど、SNS型投資詐欺の手口・
1 昭和23年法律第25号。第29条において、「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受け
た者でなければ、行うことができない」旨規定されており、また、第31条の3の2第2号
において、金融商品取引業者等の金融商品取引業を行うことができる者以外の者が、金融
商品取引業を行うことを目的として、金融商品取引契約の締結について勧誘をすることを
禁止している。
3
実態やなりすまされた者等からの通報により得られた情報を踏ま
えた広告の事前審査の強化、広告出稿者の本人確認の強化を要請す
る。
また、流通後の広告については、利用規約等を踏まえた適正な対
応を行うとともに、広告の削除申出プロセスの整備・公表、対応体
制の整備(日本語や日本の社会・文化・法令を理解する者の十分な
配置)、削除申出への迅速な対応、その実施状況の公表を要請する
とともに、これらの対応に関する報告を要請する。
さらに、捜査機関から提供された「詐欺に使用されたアカウント」
等の情報に着眼した、詐欺広告やアカウントの迅速な削除対応等、
利用規約等を踏まえた適正な対応を実施するよう要請する。
くわえて、正規の広告主の利益が害されないようにする観点か
ら、広告主からの苦情受付や広告審査の取組について、プラットフ
ォーム事業者への聞き取りを実施する。また、聞き取りを踏まえた
プラットフォーム事業者における取組状況の評価及び公表を実施
する。
また、デジタル広告エコシステムを通じた情報流通の健全性確保
に向け、広告関連団体等と連携し、ブランドセーフティの確保等の
ために求められる取組の明確化等により、広告主企業やその経営陣
による主体的な取組等を促進する。
さらに、広告主が、自らの広告の掲載先や掲載される媒体の質に
関する意識を高めて取引に参加できるよう、広告主の取引行動に影
響力を有する特定デジタルプラットフォーム提供者に対して、広告
掲載先の品質等についての情報提供の充実を求める。
② 無登録業者による偽広告の掲載が違法な金融商品取引業に該当し
得ることの明確化等
金融商品取引法上の金融商品取引業の登録を得ていない無登録
業者が無料で投資情報の提供を行う旨等の広告を行った場合であ
っても、その後の金融商品取引契約へ誘い込むための入口となって
いる場合には、当該一連の行為を全体として捉えれば、違法な金融
商品取引業に該当し得ることを明確化し、周知する。
また、金融商品取引法上の登録業者が著名人等の許諾を得ていな
い偽広告を掲載している事例が確認された場合には、厳正に対処す
るとともに、金融商品取引法の内閣府令等を改正することにより、
登録業者について、許諾を得ないで著名人等を広告に掲載すること
を禁止するといったことを検討する。
③ なりすまし型偽広告の削除等の適正な対応の推進
著名人の肖像権等を侵害するなりすまし型の偽広告や、投資詐欺
を目的とするような広告・投稿に関して、SNS事業者が、1(1)
4
ア(イ)⑥のガイドライン、モデル約款2やその解説の記述も参考に、
必要に応じて、利用規約等について自主的な見直しを行った上で、
利用者からの通報を受けた場合や自主的な検知を行った場合、利用
規約等に基づき広告・投稿の削除やアカウント凍結等の措置を速や
かに講ずるよう、総務省において、事業者団体に通知を行うととも
に、必要に応じて、事業者に個別に働き掛ける。
インターネット上に流通・拡散する偽・誤情報や、SNS上のな
りすまし型偽広告への対応等について、国際的な動向を踏まえつ
つ、制度面も含む総合的な対策を進める。
④ 事業者団体等における偽広告等への適正な対応の推進
登録を受けた金融商品取引業者等による適正な投資情報と誤っ
た認識を持つ被害者を生まないため、金融関係事業者団体等におい
て、横断的に、偽広告等に関する情報収集や注意喚起を行うととも
に、自らになりすました偽広告等を発見した場合などには積極的な
削除要請を行うよう、働き掛ける。
⑤ 情報コンテンツや発信者の信頼性等確保技術の導入促進
インターネット上の情報の受信者が、その情報や発信者の信頼性
等を容易に判別できるよう、情報コンテンツに発信者に関する情報
を付与するなどの技術実証を行い、結果を踏まえて当該技術の活用
について検討を行う。
⑥ 大規模プラットフォーム事業者に対する削除対応の迅速化や運用
状況の透明化に係る措置の義務付け等
インターネット上の違法・有害情報への対応として、削除対応の
迅速化や運用状況の透明化を大規模プラットフォーム事業者に義
務付ける情報流通プラットフォーム対処法3を速やかに施行し、そ
の適切な運用を図る。
また、同法の施行に向けて、省令等の制度整備を進めるとともに、
2 事業者が利用規約における禁止事項を定めるに当たって参考とすることを目的に、プロ
バイダ等の事業者団体で構成する「違法情報等対応連絡会」において、「違法・有害情報
への対応等に関する契約約款モデル条項」及び「違法・有害情報への対応等に関する契約
約款モデル条項の解説」を自主的に策定している。
3 平成13年法律第137号。令和6年5月に、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限
及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第25号)が公布
され、本文に記載されている内容が盛り込まれるとともに、題名を「特定電気通信による
情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(略称:情報流通プラッ
トフォーム対処法)に改める旨などが盛り込まれている。
5
違法情報への該当性に関するプラットフォーム事業者向けのガイ
ドラインを迅速に策定する。ガイドラインの策定に当たっては、過
去の事例も参考に、プラットフォーム事業者が刑事責任を問われる
場合があり得ることも盛り込む。その上で、当該ガイドライン等を
通じ、どのような情報を流通させることが法令違反や権利侵害とな
るのかの明確化、その適切な運用を図る。
⑦ AI事業者ガイドラインの周知等
AI事業者ガイドライン(第1.0版)(令和6年4月19日公表)
には、「技術的に可能な場合は、AIの生成した情報であることを
識別できる技術の活用」、「AIを利用しているという事実、活用
している範囲、適切/不適切な使用方法等の情報提供」等のAI事
業者による偽・誤情報対策、透明性の確保などの自主的な取組を記
載しているところ、AI事業者に対して、当該ガイドラインの周知
を図るとともに、AIを利用したなりすましによる詐欺被害を防止
する観点からも、AIの安全・安心な活用が図られるよう働き掛け
る。
⑧ 投資詐欺サイト対策
投資詐欺サイトについて、閲覧者への警告表示等の注意喚起を効
果的に行うための方策を検討する。
(ウ) 金融商品取引法上の無登録業者の排除
① 金融商品取引法の的確な運用等
無登録業者に関する情報を収集し、当該業者について、警告書の
発出、金融商品取引法に基づく裁判所への禁止又は停止命令の申立
てを行うとともに、金融庁ウェブサイトを通じた業者名等の公表
等、排除のための取組を積極的に推進する。
② 無登録業者の取締りの推進
金融庁や消費者庁が収集した無登録業者に関する情報を活用し、
必要な取締りを推進する。
イ SNSやマッチングアプリを利用した手口への対策
(ア) 知らない者のアカウントの友だち追加時の実効的な警告表示・同意
取得の実施等
SNS型投資・ロマンス詐欺については、SNSが当初接触ツール
の過半数を占め、SNS上で知らない者からSNSグループに勧誘さ
れ、やり取りを続けるうちにSNS型投資詐欺に誘い込まれるという
実態がみられるところ、特に悪用の多い、海外電話番号等を用いて取
得されたSNSアカウント(海外アカウント)等の知らない者のアカ
ウントを友だちに追加する際にはSNS型投資・ロマンス詐欺の被害
防止に資する実効的な警告表示・同意取得を実施する等の対策を確実
に講じるとともに、更なる対策の実施について検討するよう、SNS
事業者に対して働き掛ける。
6
(イ) 利用者の本人確認強化等
① SNSの公式アカウント開設時の本人確認強化等
SNS型投資・ロマンス詐欺については、SNS上で、有名人に
なりすまして投資話を持ち掛けるなどの実態がみられるほか、SN
Sの公式アカウントを悪用し、利用者を信用させるなどして、詐欺
被害につながっている事案が確認されていることから、SNS事業
者に対し、公式アカウントの開設時に本人確認を実施するなど、自
主的な不適正利用対策に実効性のある形で取り組むよう働き掛け
る。
また、国外におけるアカウント開設の場面も含め各SNS事業者
における本人確認の状況及び犯罪への悪用状況について実態を把
握した上で、一般アカウントが悪用され、詐欺被害につながる実態
が認められる場合には、一般アカウントについても、自主的な不適
正利用対策に実効性のある形で取り組むよう働き掛ける。
② マッチングアプリアカウント開設時の本人確認強化等
マッチングアプリアカウントを悪用し、利用者を信用させるなど
して、詐欺被害につながっている事案が確認されていることから、
マッチングアプリ事業者に対し、アカウントの開設時に公的個人認
証サービス等による、より厳密な本人確認を実施するなど、自主的
な不適正利用対策に取り組むよう働き掛ける。
(ウ) 犯行に利用されたSNSアカウント等の速やかな利用停止措置等の
検討
SNS型投資・ロマンス詐欺については、被疑者から被害者への連
絡手段としてSNSアカウントやマッチングアプリが悪用されてい
る実態がみられることから、犯行に利用されたSNSアカウント等に
ついて、被害者からの通報及び警察等からの要請に基づき、SNS事
業者等において犯行に利用された犯行グループのSNSアカウント
等を特定し、速やかに利用停止等の措置を実施するスキームの構築に
ついて、検討を行う。
また、法人口座を含む預貯金口座や暗号資産取引口座がSNS型投
資・ロマンス詐欺の犯行に利用されている実態があるところ、犯行に
利用されたこれらの口座について、現在特殊詐欺対策に用いられてい
るスキーム4をSNS型投資・ロマンス詐欺にも適用することを検討
4 具体的には、警察において特殊詐欺に利用され又は利用された疑いのある暗号資産取引
口座を把握した場合に、暗号資産交換業者に対して当該暗号資産取引口座の凍結の検討の
依頼を行い、依頼を受けた暗号資産交換業者において凍結等の措置を講じる枠組みや、特
殊詐欺事件に関して凍結された預貯金口座の名義人のリストを警察庁が作成し、一般社団
7
し、効果的なSNS型投資・ロマンス詐欺対策の推進を図る。
ウ 新たに開始された金融教育における被害防止に向けた啓発
新NⅠSAの開始等を契機に国民の資産運用への関心が高まる中、広
く国民がSNS型投資詐欺等に巻き込まれることを防ぐ観点から、令和
6年4月に設立した金融経済教育推進機構において、関係省庁とも連携
し、投資詐欺や金融トラブルへの対応方法を含む金融経済教育を、学校、
職域、公民館や図書館等の地域コミュニティなどの様々な場を活用し、
幅広い年齢層に提供することにより、国民の金融リテラシーの向上に貢
献する。
特に10代、20代の若者に対しては、同機構とも連携し、投資のリス
クや金融トラブルへの対応方法等に関する正しい知識を提供するため、
学習指導要領等に基づく学校における金融経済教育の着実な実施や、大
学や地域等へのSNS型投資詐欺等に関する情報提供といった取組を
進める。
(2) フィッシングによる被害実態に注目した対策
ア フィッシングサイトにアクセスさせないための方策
(ア) 送信ドメイン認証技術(DMARC等)への対応促進
フィッシングメール等によるインターネットバンキングに係る不
正送金やクレジットカードの不正利用の被害が深刻な状況であるこ
とを踏まえ、利用者にフィッシングメールが届かない環境を整備する
ため、インターネットサービスプロバイダー等のメール受信側事業者
や、金融機関、EC事業者、物流事業者、行政機関等のメール送信側
事業者等に対して、送信ドメイン認証技術(DMARC5等)の計画的
な導入を検討するよう、総務省が実施した実証結果も踏まえつつ、引
き続き働き掛けを行う。
(イ) フィッシングサイトの閉鎖促進
令和5年2月、フィッシングによるなりすましの被害に遭っている
事業者等に対し、ホスティング事業者等へフィッシングサイトの閉鎖
法人全国銀行協会等へ提供する取組、特殊詐欺事件に関する警察の照会に対し金融機関に
迅速な回答を求める取組が挙げられる。
5 「Domain-based Message Authentication,Re
porting and Conformance」の略。受信したメールのドメイン名
が送信者(ヘッダFrom)のドメイン名と一致している場合は、認証成功としてメール
ボックス上の受信トレイに配信し、送信者のドメイン名と一致しない場合は、認証失敗と
して迷惑メールフォルダに格納する(quarantine)ことやメールボックスに格
納しない(reject)ことを可能とする技術である。
8
を働き掛けるよう要請した。引き続き、フィッシングサイトの閉鎖を
推進するため、なりすまされている事業者等に対して閉鎖依頼の実施
を要請するとともに、関係団体やサイバー防犯ボランティアとの連携
を強化し、より幅広い主体が閉鎖依頼を実施する環境を整備する。
(ウ) パスキーの普及促進
次世代認証技術の1つであるパスキー6について、既に採用してい
る事業者等における効果等を踏まえ、金融機関やEC加盟店等のサー
ビスにおける採用や、当該サービスの利用者に対する利用を働き掛け
るなど、普及を促進する。
イ ID・パスワードを窃取された場合でも被害に遭わないための方策
(ア) EC加盟店等との情報連携の強化
EC加盟店においては、不正取引に関するアカウント情報をそれぞ
れの個人情報の取扱いに関する指針等に基づき被害防止対策に活用
しているところ、EC加盟店と警察との連携を進め、利用者の個人情
報保護と被害防止対策が両立する形での不正取引に関する情報共有
に向けた取組を推進する。
(イ) クレジットカード不正利用情報提供の効率化
より迅速・効果的なクレジットカードの不正利用対策を実施するた
め、捜査等により把握したクレジットカード番号等の情報を国際ブラ
ンドに提供し、国際ブランドから各カード発行会社等に情報が提供さ
れる枠組みを構築する。
(ウ) 暗号資産交換業者への不正送金の防止
令和6年2月、金融機関に対する暗号資産口座への不正な送金に係
る対策の強化を要請した。引き続き、当該対策の実施状況等を確認す
るなど金融機関に対して定期的なフォローアップを行い、その結果を
金融機関に対して還元しつつ、継続的に対策の強化を要請する。
(エ) コード決済に関する被害防止
コード決済の利用拡大に伴い、フィッシング等により窃取されたコ
ード決済サービスのアカウントがコンビニエンスストアの店舗で不
正に利用されている実態があったことから、令和5年11月、関係団
体に対して具体的な犯罪手口情報7を提供し、所要の対応等を要請し
6 FIDO AllianceとThe World Wide Web Consor
tiumにより規格化されているパスワードが不要な認証技術。フィッシングサイト等の
正規サイト以外のウェブサイトにおいては認証が機能しないといった観点から認証情報の
漏えいリスクを低減できる効果があるとされている。
7 フィッシング等により窃取した個人情報を用いて作成したコード決済画面を使用して商
9
た。同様の犯罪手口が確認されている薬局等に対しても、同様の取組
を推進する。
ウ 先端技術の活用等によるフィッシング対策の高度化・効率化
(ア) フィッシングサイトの特性を踏まえた先制的な対策
フィッシングサイトについては、複数のフィッシングサイトが1つ
のIPアドレス上に構築されるなど、一定の傾向が確認されているこ
とから、通報・相談等により把握したフィッシングサイトに加えて、
いまだ通報等がなされていないフィッシングサイトを把握して、ウイ
ルス対策ソフトの警告表示等に活用するなど、フィッシングサイトの
特性を踏まえた先制的な対策を実施することを検討する。
(イ) 生成AI等を活用したフィッシングサイト判定の高度化・効率化
フィッシングサイトの該当性は警察庁及び都道府県警察職員が個
別に確認して判断しているが、今後ますます大量の情報について、そ
の判別を行う必要があることから、生成AIをはじめとした先端技術
を活用し、フィッシング対策の高度化・効率化を推進することを検討
する。
(3) 特殊詐欺等の被害実態に注目した対策
ア 被害に遭わない環境の構築
(ア) 社会全体での詐欺被害防止対策の重要性等を訴える広報・啓発活動
の更なる推進
特殊詐欺等の被害に遭いやすい高齢者だけでなく、その子供・孫世
代及び地域社会への働き掛けも強化し、社会全体における特殊詐欺
等の被害防止対策の一層の浸透を目指して、高い発信力を有する著
名人とも連携し、各地方公共団体等のあらゆる公的機関はもとより、
経済団体をはじめとする社会のあらゆる分野に係る各種団体、民間
事業者等の幅広い協力も得ながら、対象となる年齢層も踏まえつつ、
デジタル空間も含めた多種多様な媒体を活用するなどして、国民が
力を合わせて特殊詐欺等の被害防止に取り組むよう広報・啓発活動
を展開する。
具体的には、政府広報や、公的機関のウェブサイト等を通じた特殊
詐欺等の被害防止対策の周知や犯罪傾向を踏まえた注意喚起を推進
するほか、各地方公共団体はもとより、自治会、民生委員、老人クラ
ブ等の福祉関係団体等や、防犯協会、防犯ボランティア団体、病院、
薬局、介護サービス事業者、保険事業者、宅配事業者、宅食事業者、
その他の小売事業者、銀行等の金融機関、郵便局、バス・タクシー業
者等の高齢者が日常生活で接点を有するあらゆる機関・団体・事業者
等とも連携した注意喚起及び広報・啓発を推進する。また、消費者安
品を詐取し、不正転売するといった手口。
10
全確保地域協議会等を活用し、関係機関が連携して注意喚起及び広
報・啓発を推進するとともに、特殊詐欺等に関連すると思われる情報
の共有等により、消費生活センターと警察との連携強化を図る。さら
に、家族間での被害防止意識を高めるため、各職場での教育・研修等
に加え、学校等における防犯指導等、主として子供・孫世代を対象と
した、特殊詐欺等被害防止の広報・啓発を推進する。
(イ) 犯人からの電話を直接受けないための対策
① 犯人からの電話を直接受けないための対策の浸透に向けた広報・
啓発の推進
犯人からの電話を直接受けることを防止するため、高齢者宅に迷
惑電話防止機能を有する機器を導入することや、高齢者宅の固定電
話において国際電話の利用を休止したり、番号非通知の電話を着信
拒否したり、高齢者宅の固定電話を常に留守番電話に設定し、相手
が確認できてから対応したりすることの有効性について、広報・啓
発を推進する。
② 「優良迷惑電話防止機器推奨事業」による機器の普及促進
「優良迷惑電話防止機器推奨事業」を実施している公益財団法人
全国防犯協会連合会と連携して、迷惑電話防止機能を有する機器の
普及を促進する。
③ 高齢者の自宅電話番号の変更等支援
特殊詐欺等の捜査の過程で入手した名簿の登載者に対し、注意喚
起を徹底するほか、防犯機能を備えた固定電話機の設置・導入や、
自宅電話番号の変更を含む被害防止対策等について広報・啓発を行
う。
なお、警察の注意喚起を偽装した特殊詐欺等も想定されるところ、
これを防止する観点から、不審に感じた場合は#9110に確認の電話
をすることなどを併せて周知徹底する。
また、電気通信事業者に対して、警察からの情報提供により、当
該名簿への登載が確認されたこと等を契機として、固定電話番号の
変更を希望する契約者については、番号変更にスムーズに応じるよ
う引き続き働き掛ける。
④ 発信者番号表示サービス等の普及等
アポ電等の悪質な電話の被害を抑止するためには、各個人が発信
者番号を見て対策することが重要であることから、電気通信事業者
に対して、発信者番号を表示するサービス(ナンバーディスプレイ
等)の普及拡大を図るとともに、利用者本人からの申出に従って、
非通知設定で架かってきた電話を着信しないように設定できるサー
ビス(ナンバーリクエスト等)や、特殊詐欺が疑われる電話等を自
動で検知することができるような端末(特殊詐欺対策アダプタ等)
の普及促進に取り組むよう引き続き働き掛けるとともに、国民に対
11
してもこのようなサービスの利用等について周知する。特に、電気
通信事業者に対し、70歳以上の契約者等に対する各サービスの無償
化施策など、各事業者が実施する取組の内容が対象世帯に届くよう
周知・啓発を行うよう働き掛ける。
また、関係機関が連携し、固定電話利用者に対して、非通知設定
の電話等については、意図せず出ないように呼び掛けを行う。
⑤ 国際電話番号からの着信を受けないための対策
国際電話番号の犯行利用が急増しているところ、国際電話番号に
ついては、「国際電話不取扱受付センター」に国際電話利用契約の
利用休止の申込みを行えば、固定電話・ひかり電話を対象に国際電
話番号からの着信を休止できることから、国際電話の利用を希望し
ない契約者等に対しては、その旨を周知するとともに、申込みを促
す。また、固定電話等を提供する事業者に対し、国際電話利用契約
の利用休止の申込みについて、契約者への周知を行うよう働き掛け
る。
⑥ 国際電話の利用休止申請の受付体制の拡充
国際電話番号の犯行利用が急増していることから、国際電話の利
用を希望しない契約者等からの申込みに基づき、国際電話の利用休
止を一括して受け付けることのできる「国際電話不取扱受付センタ
ー」を運営する電気通信事業者に対して、申請受付体制の更なる拡
充を要請する。また、総務省において、特殊詐欺等の契機となる電
話等に関する有効な相談受付体制の在り方について検討を行う。
⑦ 国際電話利用休止措置の活用拡大に向けた取組
国際電話を悪用した被害が相次いでいる現状や、希望すれば国際
電話の利用休止が可能であることについて、固定電話等の利用者の
多くがいまだ認識していないおそれがあり、利用休止を希望する場
合であっても手続が煩雑であるなどを理由に、実効的な行動変容が
進んでいないおそれがあることを踏まえ、固定電話等の利用者に対
し、国際電話をブロックする機能についてのニーズ調査を実施する。
⑧ SMSの不適正利用対策の推進
SMSを悪用するフィッシング詐欺(スミッシング)や、SMS
を契機とする架空料金請求詐欺等の被害が相次いでいることから、
一部の電気通信事業者がデフォルトオンで提供しているSMSフィ
ルタリングの活用を拡大するとともに、スミッシングメッセージの
申告受付やSMS対策に係る周知・啓発を推進する。
また、スミッシングメッセージの大部分が、マルウェアに感染し
たスマートフォン等の端末から発信されているという分析結果を踏
まえ、SMSフィルタリングにより得られたデータを分析し、マル
ウェア感染端末の特定・警告を行う取組を推進する。
さらに、SMS配信に関わる関係事業者において、SMS発信元
12
の明確化・透明化に係る取組や、SMS認証代行事業者等の悪質事
業者への対策などを盛り込んだ業界ルールを策定し、正規のメッセ
ージが確実に正規のものと分かる形で配信されるよう、効果的な対
策を実行する。
(ウ) 犯罪者グループ等が犯行に利用する電話に係る対策
① 警告電話事業の推進
犯行に利用された電話に対して、繰り返し架電してメッセージを
流すことで、電話を事実上使用できなくする警告電話事業を実施す
る。
② 特殊詐欺等の予兆電話等に利用された電話番号や海外経由の通信
サービスに係る対策の推進
特殊詐欺等の予兆電話等に利用された電話番号や、非通知設定の
電話、海外経由の通信サービスが関与する電話からの着信を機械的
に阻止するなどの方策について推進する。
(エ) 押収名簿を活用した注意喚起
特殊詐欺等の捜査の過程で入手した名簿の登載者に対し、警察官に
よる戸別訪問や警察が民間委託したコールセンターからの電話連絡
等を行い、注意喚起や具体的な予防対策等の周知を図る取組を推進す
る。
(オ) 宅配事業者を装った強盗を防ぐための宅配事業者との連携
強盗等事件では、宅配事業者の訪問を偽装するなどの手段で一般住
宅等に侵入する手口がみられるため、大手宅配事業者との間で、いわ
ゆる「置き配」等の非対面での荷物の受取等の拡充について合意を行
ったところ、強盗等を企図する者が住居等に不法に侵入する機会を低
減するため、引き続き宅配事業者と連携して非対面形式による宅配方
法の普及に関する取組を推進する。
また、国土交通省においては、令和6年4月に実施した「再配達削
減PR月間」に引き続き、消費者庁・厚生労働省・農林水産省・経済
産業省・環境省や、宅配事業者、EC(Eコマース)事業者等と連携
し、再配達削減に向けた取組として、非対面での受取である宅配ボッ
クスや置き配等の活用を呼び掛ける。
(カ) 防犯性能の高い建物部品、防犯カメラ、宅配ボックス等の設置に係
る支援
警察庁、国土交通省、経済産業省、建物部品関連の民間団体等から
構成される「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同
会議」や「5団体防犯建物部品普及促進協議会」において一定の防犯
性能があると評価された建物部品(CP部品)をウェブサイトで公表
するなどし、引き続き、その普及に努めるほか、侵入犯罪対策の広報・
啓発を推進する。
また、CP部品として登録されたドア・窓への交換や、防犯カメラ、
13
宅配ボックスの設置等への支援により、防犯性の高い住宅への改修を
促進する。
(キ) 現金を自宅に保管させないようにするための対策
高齢者が自宅に保管する現金を狙った「現金手交型」の特殊詐欺等
が発生している実態がみられるところ、こうした被害を防止するため、
高齢者に対して具体的な犯行手口について注意喚起を行うとともに、
高額の現金を自宅に保管することの危険性を訴え、金融機関への預貯
金等を活用するなどの予防対策を推奨する。
(ク) パトロール等による警戒
警察において、職務質問や防犯指導等の効果的な実施を通じて、事
件等の発生を防ぐとともに、犯罪を取り締まるため、犯罪の多発する
時間帯・地域に重点を置くなどしたパトロールを、引き続き、推進す
る。
イ 社会全体による被害の阻止
(ア) 金融機関と連携した被害の未然防止
① 金融機関と連携した被害の未然防止
高額の払戻し等を申し込んだ高齢の顧客に対する金融機関にお
ける声掛けによって被害を未然に防止するため、声掛けをする際に
顧客に示すチェックリストを金融機関に提供するとともに、金融機
関等の職員と共同で行う訓練等により声掛けを促進する取組を推
進する。また、金融機関窓口における声掛けに加え、各金融機関が
定める一定の基準(顧客の年齢、払戻金額等)に基づき警察に全件
通報する取組を推進する。
② ATMでの振込・引出制限等の推進
金融機関と連携し、一定年数以上にわたってATMでの振込実績
がない高齢者のATM振込限度額をゼロ円又は極めて少額とする
取組(ATM振込制限)及び高齢者のATM引出限度額を少額とす
る取組(ATM引出制限)を推進する。
また、金融機関における預貯金口座のモニタリングを強化する取
組を推進し、高齢者のATM振込・引出限度額を少額とすることの
制度化に向けた検討を実施する。
③ 携帯電話を使用しながらATMを利用する者への注意喚起の推進
特殊詐欺においては、被害者が携帯電話等で指示を受けながらA
TMを操作し、被害に遭う事例が多数みられるため、金融機関その
他の関係機関・団体と連携し、「ATMでの携帯電話の通話は、し
ない、させない」取組を引き続き推進する。また、携帯電話を使用
しながらATMを利用する者に対して、訴求力の高い注意喚起の表
示を行う取組を推進する。
14
(イ) コンビニエンスストア等と連携した被害の未然防止
① コンビニエンスストアにおける被害防止の推進
電子マネー型や収納代行利用型の手口への対策として、一般社団
法人日本フランチャイズチェーン協会、各コンビニエンスストア事
業者と連携し、同一人や同一機会での高額又は複数の電子マネー購
入希望者や収納代行利用者への声掛けのシステム化、店頭販売棚や
レジ・端末機の画面に音声付き動画の活用を含む訴求力の高い注意
喚起の表示を行うなどの取組を強化する。
② 電子マネー発行事業者等における被害防止の推進
一般社団法人日本資金決済業協会、電子マネー発行事業者、収納
代行事業者等と連携し、顧客への注意喚起をはじめ、モニタリング
によって、不正な方法で入手された電子マネーの検知及び利用停止
の強化等被害防止に係る取組を推進する。
(ウ) 宅配事業者と連携した被害の未然防止
① 被害金送付先リストを活用した被害防止の推進
宅配事業者と連携し、過去に犯行に使用された被害金送付先のリ
ストを活用して、不審な宅配便の発見や警察への通報といった取組
を推進する。
② 荷受け時における声掛け及び注意喚起
宅配事業者の荷受け時において、運送約款に基づく取扱いができ
ない現金が宅配便に在中していないかどうかの声掛け等による注
意喚起を推進する。
2 「犯行に加担させない」ための対策
(1) 「闇バイト」等情報に関する情報収集、削除、取締り等の推進
「闇バイト」等情報8がSNS上で発信されている実態がみられるとこ
ろ、こうした情報による犯罪実行者の募集を防ぐため、引き続き、警察に
おいて、サイバーパトロール等を通じて把握した情報を端緒とする捜査を
推進するとともに、こうした情報が確実に削除されるよう、インターネッ
トサービスプロバイダー等に対する働き掛けを行うほか、返信(リプライ)
8 「闇バイト」、「裏バイト」等と表記したり、仕事の内容を明らかにせずに著しく高額な
報酬の支払いを示唆したりして犯罪の実行者を募集する投稿や当該投稿に関連する情報を
いう。このような表現には、犯罪への気軽な参画を容易にするという指摘もある。本プラ
ンでは、「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プ
ラン」(令和5年3月17日犯罪対策閣僚会議決定)に引き続き、広く認知されている「「
闇バイト」等情報」という用語を用いているが、青少年等への広報・啓発等に当たっては
、「犯罪実行者募集情報」といった語も、引き続き、適切に活用していくこととする。
15
機能を活用した投稿者等に対する個別警告等を推進する。
また、違法情報の取締りや有害情報を端緒とした取締りを強化すべく、
「サイバーパトロールセンター」にAI検索システムを導入した。引き続
き、AIの活用を含め、「闇バイト」等情報の迅速かつ確実な把握に努め、
効果的かつ効率的な対策を推進する。
インターネット利用者等からの違法情報等に関する通報の受理、警察へ
の通報、サイト管理者への削除依頼等を行う「インターネット・ホットラ
インセンター」9で取り扱う有害情報の範囲に、令和5年9月29日、著し
く高額な報酬の支払いを示唆して犯罪の実行者を募集する情報を追加し
た。国民に対し、「インターネット・ホットラインセンター」に対する情
報提供を呼び掛けつつ、「インターネット・ホットラインセンター」及び
「サイバーパトロールセンター」の効果的な運用により、「闇バイト」等
情報の排除に向けた更なる対策を推進する。
そのほか、主要なSNS事業者が、モデル約款10やその解説の記述を参
考に、利用者からの通報を受けた場合や自主的な検知を行った場合、「イ
ンターネット・ホットラインセンター」からの「闇バイト」等情報に関す
る削除要請があった場合に、利用規約等に基づき投稿の削除等の措置を講
ずるよう、事業者団体に引き続き働き掛ける。
(2) サイバー空間からの違法・有害な労働募集の排除
犯罪の実行者を募集する「闇バイト」等情報の発信は、「公衆衛生上有
害な業務に就かせる目的」での「労働者の募集」等として、職業安定法11
第63条第2号に規定する違法行為に該当することから、健全な労働市場
の確保のため、警察とも連携しつつ、違法な労働募集に対するネットパト
ロール活動を推進し、その排除を図る。
また、求人メディア等の業界団体及び事業主に対し、違法・有害な募集
情報(疑わしい情報を含む。以下同じ。)の掲載を防止するために必要な
措置を講ずるよう、警察とも連携しつつ、広報・啓発を徹底する。
さらに、求人メディア等の業界団体及び事業主に対し、違法・有害な募
集情報を掲載していることを発見した場合、警察と連携して適切に対応す
るよう、引き続き要請する。
くわえて、都道府県労働局に対し、都道府県労働局が違法・有害な募集
情報が掲載されていることを把握した場合、警察と連携して適切に対応す
9 https://www.internethotline.jp/
10 令和5年2月14 日、事業者団体において解説が改定され、「闇バイト」等情報が禁止行
為に該当し得るものと整理された。
11 昭和22年法律第141号。
16
るよう、通知したところであり、周知を徹底する。
(3) 青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発
ア 青少年を取り巻く有害環境の浄化対策の推進
「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、国、地方公共団
体、関係団体等が相互に協力しながら、少年が「闇バイト」等情報によ
り重大な犯罪に加担する危険性について広報・啓発を推進するととも
に、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにする
ための施策に関する基本的な計画」に基づく広報・啓発の一環として、
保護者等に対し、子供がSNS上における「闇バイト」等情報をきっか
けに加害者となる危険性があることを注意喚起する。
イ 児童生徒等の非行防止のための取組の推進等
小学校、中学校及び高等学校における児童生徒の非行防止に関して
は、各種通知や生徒指導の基本書となる生徒指導提要において、
・児童生徒本人からの前兆行動を把握し、スクールカウンセラー・ス
クールソーシャルワーカーや警察を含む関係機関等と連携し、アセス
メントを行うこと
・警察官等を外部講師として招き、地域の非行情勢や非行要因等につ
いて児童生徒に情報発信する「非行防止教室」等を実施することが有
効であること
等を示しており、引き続き、「闇バイト」等の犯罪行為への加担防止も
含め、児童生徒の非行防止に係る取組を推進する。
また、大学等に対しても、学生が犯罪に加担してしまうことがないよ
う、「闇バイト」等に関する通知や、教職員を対象とした会議等を通じ
て注意喚起を行うなど、必要な取組を推進する。
ウ 情報モラル教育の着実な実施
学習指導要領において情報モラルを含む情報活用能力を育成するこ
ととしているところ、小学校段階から、情報発信による他人や社会への
影響について考えさせる学習活動や、ネットワーク上のルールやマナー
を守ることの意味について考えさせる学習活動などを通じて、情報モラ
ルを確実に身に付けさせる。
エ 青少年に対する広報・啓発の推進
SNS上で発信されているものを含む「闇バイト」等への応募等、青
少年が事の重大性を認識することなく、安易な考えから犯罪に加担して
しまうこと等のないよう、防犯教室や非行防止教室等の場を活用して、
検挙事例を交えながら具体的に情報発信するとともに、学生向けに労働
関係法令を分かりやすく解説したハンドブックや、インターネットに係
るトラブル事例の予防法等をまとめた「インターネットトラブル事例
集」に注意喚起を盛り込むことなどにより、青少年に対する広報・啓発
を推進する。
17
(4) 犯罪者グループ等内の連絡手段対策
ア 秘匿性の高いアプリケーションの悪用に係る注意喚起
「闇バイト」等の応募者が、リクルーターや指示役から、連絡に秘匿
性の高い通信アプリケーションを用いるように誘導され、当該アプリケ
ーション上でのやり取りに移行したとみられる実態があることを踏ま
え、犯罪に加担する事態を防ぐために、SNSを含む「闇バイト」等へ
の応募の入口になりそうな場面における注意喚起のメッセージの表示
や、「インターネットトラブル事例集」などを通じ、広報・啓発を実施
する。
イ 証拠品として押収されたスマートフォン端末等の解析の円滑化
高度な情報通信技術を用いた犯罪に対処するため、最新の電子機器や
アプリケーションの解析のための技術力の向上、パスワードが不明なス
マートフォン端末の解析等を行う解析用資機材の充実強化、外国捜査機
関や研究機関等の関係機関との連携・情報共有、検察官や捜査員等に対
する研修等を推進し、情報技術解析に関する態勢を強化する。
(5) 強盗や特殊詐欺の実行犯に対する適正な科刑の実現に向けた取組の推進
SNS上で実行犯を募集する手口がとられたり、凶悪な犯行態様で敢行
されたりする昨今の強盗事件をめぐる状況や、引き続き深刻な情勢にある
特殊詐欺の状況を踏まえ、犯罪者グループ等において実行犯を担った者に
対する適正な科刑を実現すべく、捜査において、余罪の積極的な立件、令
和4年 12 月に法定刑の引上げ等がされた組織的な犯罪の処罰及び犯罪収
益の規制等に関する法律12(犯罪収益等隠匿・収受)の適用等を推進すると
ともに、公判においても、悪質な事情について、適切に主張・立証する。
(6) 詐欺等13の犯行に加担した少年の再非行防止のための取組の推進
少年院等の関係機関と連携して非行防止教室を開催するなど、少年の再
非行防止のための取組を推進する。
3 「犯罪者のツールを奪う」ための対策
(1) 犯罪者グループ等が用いる電話に関する対策
ア 本人確認の実効性の確保に向けた取組
携帯電話や電話転送サービスの契約時の本人確認において、本人確認
書類の券面の偽変造による不正契約が相次いでいることから、犯罪収益
12 平成11年法律第136号。
13 SNS型投資・ロマンス詐欺、特殊詐欺等及びフィッシングに伴う犯罪等をいう。以下
同じ。
18
移転防止法14、携帯電話不正利用防止法15に基づく非対面の本人確認手
法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転
免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。
対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを犯罪収
益移転防止法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認において義務付
ける。また、そのために必要なICチップ読み取りアプリ等の開発を検
討する。さらに、公的個人認証による本人確認を進める。
イ 悪質な電話転送サービス事業者等の排除に向けた取組
犯罪者グループ等に固定電話番号等を用いた電気通信サービスを提供
する悪質な事業者に対しては、これまでも、犯行に利用された固定電話
番号等の利用停止や、新規番号の提供拒否、在庫番号の一括利用停止等
の対策を講じてきたが、各種措置を受けた悪質事業者に代わって新たな
法人を次々と設立し、犯罪者グループ等への電気通信サービスの提供を
継続しようとする動きが引き続きみられる。
このような実態に対応するため、総務省、警察庁、関係事業者間の連
携・協議の場を設け、電気通信番号制度の見直しを含め、悪質事業者の
新規参入防止及び悪質事業者の排除に向けた検討・取組を推進する。
ウ 携帯電話の不正利用防止対策等の強化
詐欺等の犯行に利用される携帯電話について、携帯電話不正利用防止
法に基づく契約者確認の求め、役務提供拒否に関する警察から事業者へ
の情報提供を推進するほか、事業者と連携し、特殊詐欺に利用された携
帯電話のサービスを停止する取組を推進する。
また、携帯電話の不正売買等の詐欺等を助長する犯罪の検挙や悪質な
犯行ツール提供事業者等に対する取締りを推進するほか、3(1)アの取組
状況を踏まえて、契約者確認の求めの実効性確保のための検討を行う。
エ 悪用されるSMS機能付きデータ通信契約での本人確認の推進
契約時の本人確認が義務化されていないSMS機能付きデータ通信専
用SIMカードについて、電気通信事業者に対して、契約時における実
効性のある本人確認の実施を更に推進する。また、SMS機能付きデー
タ通信専用SIMカードについて、「闇バイト」等情報の発信や犯行の
指示等の手段への利用を含めた不正利用の実態を踏まえて、制度改正を
含めた検討を行う。
14 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)。
15 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の
防止に関する法律(平成17年法律第31号)。
19
(2) 預貯金口座等に関する対策
ア 犯罪者グループ等による出金・送金対策
(ア) 金融機関と連携した検挙対策の推進
金融機関を通じた振込型の被害額が大幅に増加しているほか、実態
のない法人が不正に開設した法人口座を悪用した犯罪収益の隠匿等が
相次いでいることから、検挙及び被害防止に資する今より一歩踏み込
んだ対策として、関係当局が連携し、金融機関において、詐欺被害と
思われる出金・送金等の取引をモニタリング・検知する仕組み等を構
築し、検知能力を強化するとともに、不正利用防止の措置を行い、法
人口座を含む不正な口座情報等について、疑わしい取引の届出制度の
活用をはじめ、警察へ迅速な情報共有を行う取組を推進する。
(イ) 電子マネーの犯行利用防止対策
前払式支払手段等の電子マネーを利用した特殊詐欺被害の増加がみ
られるところ、前払式支払手段発行者と連携し、詐取された電子マネ
ーの利用を速やかに発見するためのモニタリングを強化し、発見した
場合に当該電子マネーの利用を停止するための措置を講ずる等の対策
が取れないか検討する。
また、前払式支払手段発行者において、詐取された電子マネーの利
用を発見した場合に速やかに警察に情報提供を行うための体制につい
て検討する。
自主規制団体である一般社団法人日本資金決済業協会と協力をしな
がら、電子マネーに係る特殊詐欺被害防止に係る広報・啓発活動を強
化する。
イ 預貯金口座の不正利用防止対策の強化等
預貯金口座の不正売買等の詐欺等を助長する犯罪の検挙や悪質な犯行
ツール提供事業者等に対する取締りを推進する。
不正に譲渡・開設された法人口座を含む預貯金口座等が、犯罪者グル
ープ等内での金銭の授受等に用いられている実態や、実態のない法人が
設立され、多数の法人口座を不正に開設している実情がみられるところ、
預貯金口座に係る顧客管理の強化を図り犯罪への悪用を防止するべく、
警察から金融機関等に不正な口座開設に係る手口等の情報を提供すると
ともに、業界団体等を交えた検討を行いつつ、犯罪収益移転防止法によ
り求められている預貯金口座利用時の取引時確認を一層厳格化し、金融
機関による顧客等への声掛け・注意喚起を徹底・強化するなど、法人口
座を含む預貯金口座等の不正利用防止対策を推進する。
また、帰国する在留外国人から不正に譲渡された預貯金口座が、犯行
に利用される実態がみられるところ、こうした預貯金口座が不適切に使
用されるような事態を防止するべく広報・啓発活動を引き続き推進する
とともに、犯罪者グループ等が当該外国人になりすまして預貯金口座を
悪用することのないよう、業界団体等を交えた検討を行いつつ、在留期
20
間に基づいた預貯金口座の管理を強化するなどの対策を推進する。
さらに、犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法に基づく非対
面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として
一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類
等は廃止する。対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み
取りを犯罪収益移転防止法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認にお
いて義務付ける。また、そのために必要なICチップ読み取りアプリ等
の開発を検討する。さらに、公的個人認証による本人確認を進める。
くわえて、預貯金口座等の不正な譲渡等については、依然として不正
に譲渡された預貯金口座等が詐欺等に悪用される事例が後を絶たないこ
とから、実務上の課題等を把握した上で、法令の見直しの要否等も含め、
効果的な規制のための方法を検討する。
ウ 犯行に利用された預貯金口座の凍結等
特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の犯行に利用された法人口座
を含む預貯金口座について、金融機関に対する迅速な口座凍結依頼を実
施する。また、特殊詐欺の犯行に利用されて凍結された預貯金口座の名
義人のリストを警察庁が作成し、一般社団法人全国銀行協会等へ提供す
ることにより、不正口座の開設の防止を推進する。
(3) 暗号資産の移動対策
ア 暗号資産交換業者への不正送金の防止<再掲>
令和6年2月、金融機関に対する暗号資産口座への不正な送金に係る
対策の強化を要請した。引き続き、当該対策の実施状況等を確認するな
ど金融機関に対して定期的なフォローアップを行い、その結果を金融機
関に対して還元しつつ、継続的に対策の強化を要請する。
イ 暗号資産の没収・保全の推進
暗号資産等をより一層円滑・確実に没収できるようにするため、その
執行手続及び保全手続を導入する法改正について、法制審議会の答申の
内容を踏まえ、法律案の作成作業等を早急に進める。
(4) 闇名簿対策
ア 個人情報保護法の的確な運用等
「名簿屋」等の事業者において、個人情報保護法16の規定の下での個人
データの適正な取扱いが確保されているかについて実態を把握するため、
引き続き幅広く情報収集に努め、その結果等を踏まえ、必要に応じて指
導等の権限行使を実施する。
警察における特殊詐欺の捜査の過程で、悪質な「名簿屋」等の事業者
を把握した場合には、個人情報保護法に基づいた行政上の措置の前提と
なり得る「名簿屋」等の事業者実態把握に資するため、個人情報保護委
16 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)。
21
員会に対して積極的な情報提供に努める。
また、例えば、従業者教育等安全管理措置の徹底等の個人情報の適正
な取扱いの確保を図るべく、引き続き、様々なチャンネルを通じた広報・
啓発を推進する。
イ あらゆる法令を駆使した取締り等の推進
個人情報を悪用した犯罪被害を防止するため、特殊詐欺等の捜査の過
程で入手した名簿の登載者に対し、注意喚起や防犯指導を引き続き行う
とともに、犯罪者グループ等にこうした名簿を提供する悪質な「名簿
屋」、さらに個人情報を不正な手段により取得して第三者に提供する者
に対し、あらゆる法令を駆使した取締り等を推進する。
ウ 犯罪の利用目的のための個人情報収集に係る注意喚起
電話や自宅訪問等により、真の目的を偽装して、個人の資産や貴金属
の所有状況、家族構成等を聞き出して犯罪に利用するケースもみられる
ことから、このような不当な個人情報の収集活動に対する注意を一層喚
起する。
(5) 在留外国人等に対する広報・啓発の実施
在留外国人に対し、携帯電話・預貯金口座の不正譲渡の違法性の広報・
啓発を徹底し、注意喚起するため、出入国在留管理庁において在留外国人
に向けた広報・啓発資料の掲示等を行い、未然防止に努める。
また、日本に新たに入国する技能実習生等については、外国人本人に対
し、又は受入機関を通じて、携帯電話・預貯金口座の不正譲渡の防止のた
めの周知・啓発に取り組んでいるところであり、引き続き適切に実施する。
さらに、在外公館においても、上記広報・啓発資料を掲示及び配布、公
館ウェブサイトに掲載するなど、未然防止に努める。
(6) 不動産業者等と連携した空き家等の不正な利用の防止
現金送付型特殊詐欺には、空き家、空室及び宅配ボックス(以下「空き
家等」という。)が利用されている実態がみられるところ、警察庁におい
ては、地方公共団体とも連携し、こうした実態や具体的な犯罪手口情報に
ついて、空き家等の所有者等に対して周知・啓発を実施する。また、こう
した不正な利用をなくすため、不動産業者等の協力を得て、警察庁が作成
した「空き家(空き部屋)悪用対策シール」を所有者の了解の下で空き家
等に貼付する、鍵の厳格な管理を行う、空き家等の状況の定期的なチェッ
クを実施するといった悪用防止対策を推進する。さらに、不動産業者等が
把握した空き家等の不審な利用に関する情報が警察に速やかに提供される
よう働き掛けるとともに、地方公共団体とも連携し、空き家等の不審な利
用を把握した場合は警察に通報するよう国民に広く呼び掛ける。
また、国土交通省においては、警察庁と連携し、こうした取組への協力
について、業界団体等を通じて周知を実施する。
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4 「犯罪者を逃さない」ための対策
(1) 匿名・流動型犯罪グループの存在を見据えた取締りと実態解明
ア 匿名・流動型犯罪グループに対する取締り及び実態解明体制の強化
(ア) 取締り及び実態解明体制の整備
特殊詐欺等はもとより、SNS型投資・ロマンス詐欺についても匿
名・流動型犯罪グループの関与がうかがわれるところ、警察庁及び都
道府県警察において、匿名・流動型犯罪グループの実態を実効的に把
握するための情報集約体制や、匿名・流動型犯罪グループに対する戦
略的な取締りを強化するための体制の整備を進める。
(イ) 犯罪収益解明等の体制の整備
暗号資産を含む犯罪収益の追跡や匿名性の高い通信手段の解析と
いった高度な専門的知識及び技術に基づく捜査を行う体制を強化す
る。
また、得られた情報を集約し、全国的に横断的・俯瞰的に分析する
体制の強化により、匿名・流動型犯罪グループの実態解明等を推進す
る。
イ 取締り及び実態解明の推進
(ア) 犯罪者グループ等の実態解明に向けた捜査を含む効果的な取締りの推進
事件の背後にいる首謀者や指示役も含めた犯罪者グループ等の弱体
化・壊滅のため、各部門において、SNS事業者等に対し必要な照会
等を行い、詐欺等を行う者やこれらに加担する者(違法広告等に関係
する幇助犯に該当する者を含む。)の特定を図るなど、あらゆる法令
を駆使した効果的かつ多角的な取締りを推進するとともに、積極的な
情報収集を行うなどして、その活動実態や詐欺等への関与状況等を解
明する。また、新たな捜査手法の検討や、短時間で局面が展開する事
案等に際しても迅速な捜査を行うことができるようにするための環境
整備等を含め、効果的な取締りのための取組を推進するほか、電気通
信事業者が保有している通信履歴情報等の円滑な差押えを可能とする
対応について、警察庁・総務省・関係事業者間の連携・協議の場にお
いて取組を加速する。
(イ) 犯行拠点の摘発等による実行犯の検挙及び突き上げ捜査による中枢
被疑者の検挙の推進
あらゆる情報を活用し、犯行拠点の発見に努め、犯行拠点の摘発に
より架け子等を検挙するとともに、現場設定や被害発生前後の初動捜
査の徹底により受け子、出し子等を検挙する。また、突き上げ捜査の
徹底により中枢被疑者等の検挙を推進する。
(ウ) SNS事業者における照会対応の強化
一部のSNS事業者では、捜査機関からの照会への対応窓口が日本
国内に設置されておらず、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺等
の犯罪の捜査を迅速に進める上で大きな障害となっているところ、こ
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うしたSNS事業者に対して、捜査機関からの刑事訴訟法17に基づく
照会への対応窓口を日本国内に早急に設置した上で、迅速な照会対応
が可能な体制を早急に整備するよう働き掛けるほか、照会方法を合理
化することも併せて要請する。
また、既に上記のような照会対応窓口が設置されているSNS事業
者に対しても、犯罪捜査をこれまで以上に迅速に進める観点から、よ
り一層速やかな照会対応が可能となるよう、当該照会対応窓口の体制
拡充や照会方法の合理化を要請する。
さらに、犯罪捜査をこれまで以上に迅速に進める観点から、関係機
関間で協議の上で、捜査機関による、クローズドチャットを提供する
SNS事業者等からの証拠収集の在り方(刑事訴訟法に基づく照会で
対応可能な情報の整理を含む。)について、考え方を整理する。また、
警察庁においては、SNS事業者等に対し、当該整理に基づく対応を
要請する。
ウ 適正な科刑の実現に向けた取組の推進
(ア) 強盗や特殊詐欺の実行犯に対する適正な科刑の実現に向けた取組の
推進<再掲>
SNS上で実行犯を募集する手口がとられたり、凶悪な犯行態様で
敢行されたりする昨今の強盗事件をめぐる状況や、引き続き深刻な情
勢にある特殊詐欺の状況を踏まえ、犯罪者グループ等において実行犯
を担った者に対する適正な科刑を実現すべく、捜査において、余罪の
積極的な立件、令和4年12月に法定刑の引上げ等がされた組織的な犯
罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(犯罪収益等隠匿・収受)
の適用等を推進するとともに、公判においても、悪質な事情について、
適切に主張・立証する。
(イ) 実行犯の勧誘行為を効果的に取り締まるための方策の検討
特殊詐欺等の実行犯はその多くがSNS等で募集されている実態
があるところ、実行犯の勧誘行為を効果的に取り締まるための手法を
検討する。
厚生労働省は、実行犯の勧誘行為の効果的な取締りに資する方策と
して、SNS等を使った犯罪実行犯の募集についても、職業安定法第
63 条第2号で禁止する有害業務に係る労働者の募集に該当すること
を、実際の事例等も踏まえて、Q&A等の分かりやすい形で整理して
周知することを検討する。
エ 海外拠点の摘発の推進等
(ア) 国際捜査の徹底・外国当局等との更なる連携
首謀者や指示役が外国に所在するなどのケースにおいては、外国捜
17 昭和23年法律第131号。
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査機関等との迅速な情報交換や、捜査に必要な証拠の提供を通じ、事
件の全容解明を図る必要があるところ、ICPO等を通じた捜査協力
を推進するほか、外交ルートや条約・協定を活用して国際捜査共助等
の円滑・迅速化に取り組む。
また、外国に所在する被疑者の引渡しや退去強制に係る調整が一層
円滑・迅速になされるよう、外国政府・外国捜査機関等との連携を一
層深める。
(イ) 海外拠点の摘発の推進
詐欺等については、東南アジア等の海外に架け場等の拠点が置か
れ、指示役が国内の実行犯に犯行の指示を出すなど、海外から敢行さ
れている実態がみられる。海外拠点の摘発強化に当たっては、実態把
握の推進、並びに外国当局との緊密な情報交換及び証拠品等の円滑な
引渡し等が必要となるところ、これらの実現のため、在外公館等を通
じた、外国当局との協力体制を強化する。
(ウ) 国外被疑者の身柄移送体制の強化
海外拠点の摘発強化に当たっては、国外被疑者の身柄を確実に国内
に移送する必要があるところ、当該移送体制の強化を検討する。
(エ) 不正な現金等の国外持ち出しに係る水際対策の強化
国民の安全・安心の確保や経済活動の健全な発展に寄与するため、
「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」
(令和4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会
議決定)等に基づき、関係機関と緊密に連携し、海外への不正な現金
等の持出しに係る水際での取締りを実施する。
(2) マネー・ローンダリング対策
ア 金融機関と連携した検挙対策の推進<再掲>
金融機関を通じた振込型の被害額が大幅に増加しているほか、実態の
ない法人が不正に開設した法人口座を悪用した犯罪収益の隠匿等が相次
いでいることから、検挙及び被害防止に資する今より一歩踏み込んだ対
策として、関係当局が連携し、金融機関において、詐欺被害と思われる
出金・送金等の取引をモニタリング・検知する仕組み等を構築し、検知
能力を強化するとともに、不正利用防止の措置を行い、法人口座を含む
不正な口座情報等について、疑わしい取引の届出制度の活用をはじめ、
警察へ迅速な情報共有を行う取組を推進する。
イ 預貯金口座の不正利用防止対策の強化等<再掲>
預貯金口座の不正売買等の詐欺等を助長する犯罪の検挙や悪質な犯行
ツール提供事業者等に対する取締りを推進する。
不正に譲渡・開設された法人口座を含む預貯金口座等が、犯罪者グル
ープ等内での金銭の授受等に用いられている実態や、実態のない法人が
設立され、多数の法人口座を不正に開設している実情がみられるところ、
預貯金口座に係る顧客管理の強化を図り犯罪への悪用を防止するべく、
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警察から金融機関等に不正な口座開設に係る手口等の情報を提供すると
ともに、業界団体等を交えた検討を行いつつ、犯罪収益移転防止法によ
り求められている預貯金口座利用時の取引時確認を一層厳格化し、金融
機関による顧客等への声掛け・注意喚起を徹底・強化するなど、法人口
座を含む預貯金口座等の不正利用防止対策を推進する。
また、帰国する在留外国人から不正に譲渡された預貯金口座が、犯行
に利用される実態がみられるところ、こうした預貯金口座が不適切に使
用されるような事態を防止するべく広報・啓発活動を引き続き推進する
とともに、犯罪者グループ等が当該外国人になりすまして預貯金口座を
悪用することのないよう、業界団体等を交えた検討を行いつつ、在留期
間に基づいた預貯金口座の管理を強化するなどの対策を推進する。
さらに、犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法に基づく非対
面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として
一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類
等は廃止する。対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み
取りを犯罪収益移転防止法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認にお
いて義務付ける。また、そのために必要なICチップ読み取りアプリ等
の開発を検討する。さらに、公的個人認証による本人確認を進める。
くわえて、預貯金口座等の不正な譲渡等については、依然として不正
に譲渡された預貯金口座等が詐欺等に悪用される事例が後を絶たないこ
とから、実務上の課題等を把握した上で、法令の見直しの要否等も含め、
効果的な規制のための方法を検討する。
ウ 法人がマネー・ローンダリングに悪用されることを防ぐ取組の推進
実態のない法人が設立され、当該法人が詐欺等の犯罪収益の隠匿等に
悪用される実態があることから、会社法18や一般社団法人及び一般財団法
人に関する法律19により求められる定款の認証に際して行われる公証人
への申告や、犯罪収益移転防止法により求められている取引時確認とい
った法人の実質的支配者情報を確認するための制度を確実に運用するほ
か、実態のない法人がマネー・ローンダリング等の目的で利用されるこ
とを防ぐための新たな方策について検討する。
エ 犯行に利用された預貯金口座の凍結等<再掲>
特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の犯行に利用された法人口座
を含む預貯金口座について、金融機関に対する迅速な口座凍結依頼を実
施する。また、特殊詐欺の犯行に利用されて凍結された預貯金口座の名
義人のリストを警察庁が作成し、一般社団法人全国銀行協会等へ提供す
18 平成17年法律第86号。
19 平成18年法律第48号。
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ることにより、不正口座の開設の防止を推進する。
オ 不正な現金等の国外持ち出しに係る水際対策の強化<再掲>
国民の安全・安心の確保や経済活動の健全な発展に寄与するため、「マ
ネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」(令和
4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議決定)等
に基づき、関係機関と緊密に連携し、海外への不正な現金等の持出しに
係る水際での取締りを実施する。
(3) 財産的被害の回復の推進
ア 被害回復給付金支給制度及び振り込め詐欺救済法の効果的な運用
没収・追徴された犯罪被害財産を基に被害者に支給する被害回復給付
金制度、及び凍結された預貯金口座の残高を被害者に分配する手続を定
めた振り込め詐欺救済法20について、被害者が確実に制度を利用できるよ
う、個別の被害者に対してきめ細やかな周知を行うなど効果的な制度の
運用を促進する。
イ 暗号資産を用いた詐欺被害の実態把握等
特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺において、被害金の交付形態
として暗号資産が使用されている事案もみられるところ、業界団体と連
携し、被害の実態把握を進めるとともに、暗号資産を用いた詐欺の被害
回復のための対応について検討を行う。
ウ 不法行為に基づく損害賠償請求に関する裁判例の調査研究
インターネット上の権利侵害事案を含め、不法行為に基づく損害賠償
請求訴訟における賠償額に関する裁判所における判断動向等に関する調
査研究を実施する。
エ 国境を跨いだ被害回復の検討
海外口座への振込や暗号資産送金等により被害金が海外に流出してい
る場合についての実態把握を進め、国境を跨いだ被害回復についても、
その更なる充実に向けて関係機関や外国当局との協力関係を強化する。
20 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成19年
法律第133号)。
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淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。