今後の特殊詐欺対策の推進について(通達)(警察庁)
今後の特殊詐欺対策の推進について(通達)
令和4年の特殊詐欺の被害額は8年ぶりに増加に転じ、認知件数も前年に続き
増加するなど、深刻な情勢にある。
このような中、特殊詐欺でもみられるようなSNS(ソーシャルネットワーキ
ングサービス)上で募集された者らを実行犯とする強盗等が相次ぐなどの情勢を
受け、令和5年3月17日、政府の犯罪対策閣僚会議において、「SNSで実行犯
を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」が決定され、
「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日閣議決定)とあいまって、必
要な対策の推進を促すものとされている。
こうした情勢を踏まえ、各都道府県警察にあっては、下記に留意の上、特殊詐
欺対策を総合的かつ強力に推進されたい。
記
1 基本的な方針
(1) 組織犯罪であるとの認識の深化及び警察組織の総合力を発揮した対策の実施
特殊詐欺は、事件の背後にいる暴力団、準暴力団、来日外国人犯罪グル
ープ、暴走族、非行集団等(以下「犯罪者グループ」という。)が、その組
織力を背景に、資金の供給、実行犯の周旋、犯行ツールの提供等を行い、
犯行の分業化と匿名化を図った上で、組織的に敢行している犯罪である。
このため、各都道府県警察においては、引き続き、特殊詐欺の被害防止の
ための対策や受け子、出し子等の被疑者の取締りを着実に実施していくのみ
ならず、各種教養を通じて特殊詐欺が組織犯罪であるとの認識を深化させた
上で、犯罪者グループの弱体化・壊滅に向け、警察組織の総合力を発揮して
各種対策を講じられたい。
(2) 的確な情勢分析等による弾力的・集中的な対策の実施
特殊詐欺については、従来から、犯罪者グループ等が、社会情勢の変化等
に応じて、犯行の手口や地域・時間帯等を随時変化させている状況がみられる。
各都道府県警察においては、効果的な被害防止を図るため、地域ごとに各
手口の被害の発生状況を的確に把握・分析し、これまでに講じた対策の効果
を確認して不断の見直しを行い、変化する犯行手口や被害実態に応じた対策
を弾力的・集中的に講じられたい。
(3) 官民一体となった対策の実施
特殊詐欺は、地方公共団体、金融機関、郵便局、宅配事業者、コンビニエ
ンスストア、防犯ボランティア、学校等の関係機関、団体等と警察とが幅広
く連携した上で、官民一体となって取り組むべき社会の重要課題の一つである。
各都道府県警察においては、平素から、他の主体が実施すべき対策につい
て積極的な実施を働き掛けるなど、様々な主体と緊密に連携するとともに、
幅広い世代に対して高い発信力を有する著名な方々等による効果的な広報啓
発活動を積極的に展開するなどして、官民一体となって各種対策を講じられたい。
(4) 他の警察活動との連動を意識した効率的な対策の実施
特殊詐欺対策を講ずるに当たっては、限られたマンパワーの中で警察の組
織力を最大限に発揮する観点から、他の警察活動との連動を意識した上で、
効率的に対策を進めることが重要である。
各都道府県警察においては、巡回連絡と組み合わせた留守番電話設定の普
及等の広報啓発、街頭パトロールと組み合わせたATM設置場所での高齢者
への声掛け、非行防止教室等を通じた少年を犯罪に加担させないための広報
啓発等、他の警察活動との連動を意識した上で、効率的に各種対策を講じら
れたい。
2 重点的に取り組むべき事項
特殊詐欺については、これまで、各都道府県警察において、「オレオレ詐欺
等対策プラン」等に従い、各種対策に取り組んできているところ、現下の被害
の発生状況等を踏まえ、以下の事項に特に重点的に取り組むこととされたい。
(1) 被害防止に向けた取組
ア 犯人からの電話を直接受けないための対策の推進
特殊詐欺の被害の大半は、犯人から電話を受けることに端を発している
ものであり、その被害を防止するためには、高齢者がそもそも犯人からの
電話を受けないようにすることが非常に効果的である。
各都道府県警察においては、巡回連絡や各種警察活動の機会を活用し、
高齢者宅の固定電話へのナンバー・ディスプレイ、ナンバー・リクエスト
や留守番電話設定の普及、自動通話録音、警告音声、迷惑電話番号からの
着信拒否等の機能を有する機器の設置促進を行うなどして、犯人からの電
話を直接受けないための対策を強力に推進すること。
イ ATM設置場所での高齢者への声掛け等の戦略的な実施
振込型の特殊詐欺の被害を防止するためには、その発生状況等に応じて、
ATM設置場所での高齢者への声掛けやATM周辺での不審者への職務質
問を戦略的に実施していくことが重要である。
各都道府県警察においては、特殊詐欺の被害や予兆電話の発生状況等を
踏まえつつ、まずは金融機関に対して、その職員や警備員によるATM設
置場所での高齢者への声掛け、防犯カメラを活用した遠隔でのATM付近
の状況把握等の実施を求めるほか、ATMが設置されているコンビニエン
スストアの従業員や防犯ボランティアの協力も得るなどして、ATM設置
場所での高齢者への声掛けを戦略的に実施すること。また、「ATMでの
携帯電話の通話は、しない、させない」取組の周知を図るとともに、AT
M周辺での不審者に対する職務質問についても、予兆電話が発生した場合
に機動的に必要な体制を確保するなどして、戦略的に実施すること。
ウ ATМの利用制限に係る金融機関への働き掛けの強化
特殊詐欺の被害を防止するためには、金融機関において、被害の発生状
況に応じ、また、過去の利用実績や利用者の年齢に着目した上で、ATM
での振込及び引出の制限あるいはその基準の見直しが的確になされていく
ことが重要である。
各都道府県警察においては、こうしたATMでの振込及び引出の制限あ
るいはその基準の見直しが金融機関において的確になされるよう、金融機
関に対する働き掛けをより一層強化すること。
(2) 検挙に向けた取組
ア 犯罪者グループの実態解明及び実質的な打撃を与える取締りの推進
1(1)のとおり、特殊詐欺は、犯罪者グループが、その組織力を背景に、
資金の供給、実行犯の周旋、犯行ツールの提供等を行い、犯行の分業化
と匿名化を図った上で、組織的に敢行している犯罪であることから、犯
罪者グループの弱体化・壊滅に向けて、その実態解明をより一層強化し、
中枢に確実に打撃を与えていくことが重要である。
各都道府県警察においては、部門の垣根を越えた関連情報の収集・分
析等により、犯罪者グループとその中枢人物を見定め、その実態解明を
より一層強化するとともに、あらゆる法令を駆使した首魁等の検挙、資
金の遮断・剝奪等により、その人的・資金的基盤に実質的な打撃を与え
る取締りを一層推進すること。
その際、各都道府県警察における捜査対象の選定や摘発に向けた捜査
の実施に当たっては、地理的要素等を考慮し、都道府県警察間で積極的
に連携して警察組織の総合力の発揮による効率的な捜査に努めること。
イ 犯行ツール対策の徹底
特殊詐欺事件の背後においては、犯罪者グループや特殊詐欺の実行犯に
対して、預貯金口座や携帯電話を不正に譲渡する者や、電話転送サービス、
個人情報が掲載された名簿等の提供を行ったり、電子マネー利用番号等の
転売、買取等を行ったりしている悪質な事業者の存在が依然として認められる。
各都道府県警察においては、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平
成19年法律第22号)及び携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等
及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第
31号)に基づく措置のほか、050IP電話番号及び固定電話番号の利用
停止の要請等を積極的に推進すること。
また、電話転送サービスに係る悪質な電気通信事業者、犯罪者グループ
等に名簿を提供する悪質な名簿屋等、犯行ツールに係る悪質な事業者につ
いて、情報収集を強化し、あらゆる法令を駆使してその取締りを推進すること。
(3) 少年を犯行に加担させないための取組
友人や先輩から誘われた少年が特殊詐欺に加担している実態が依然とし
て見受けられるほか、最近では、SNS等に掲載された高額な報酬を示唆
する投稿等に安易に応募し、特殊詐欺に加担することとなる少年も確認さ
れている。
各都道府県警察においては、少年が事の重大性を認識することなく、ア
ルバイト感覚で犯罪を敢行することのないよう、少年に対する広報啓発を
強化すること。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。