警察署における2022年1月1日から5月6日までの告訴・告発事件処理月報、告訴・告発事件相談・申出等記録簿及び告訴・告発事件処理簿(編てつされる記録全てを含む)」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。(山口県警)

情報公開答申第108号
答 申

第1 山口県情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)の結論
山口県警察本部長(以下「実施機関」という。)が令和4年(2022年)7月11日
付け山口刑企第260号で行った公文書非開示決定(以下「本件処分」という。)は、
妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 公文書の開示請求
審査請求人は、2022年5月6日付けで実施機関に対し、山口県情報公開条例
(平成9年山口県条例第18号。以下「条例」という。)第6条の規定により、「〇
〇警察署における2022年1月1日から5月6日までの告訴・告発事件処理月報、
告訴・告発事件相談・申出等記録簿及び告訴・告発事件処理簿(編てつされる記録全
てを含む)」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 公文書の特定
実施機関は、本件請求に係る公文書(以下「本件公文書」という。)として、以下
のとおり特定した。
(1)告訴・告発事件処理月報
文書1 告訴・告発事件処理月報(令和4年1月)
文書2 告訴・告発事件処理月報(令和4年2月)
文書3 告訴・告発事件処理月報(令和4年3月)
文書4 告訴・告発事件処理月報(令和4年4月)
(2)告訴・告発事件相談・申出等記録簿
文書5 警察安全相談カード(R03年〇〇月〇〇号)の写し
文書6 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書7 文書6の相談に関して警察官が作成した捜査資料
文書8 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書9 文書8の相談に関して相談者が提出した告発状の写し
文書10 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書11 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書12 文書11の相談に関して相談者が提出した資料の写し
文書13 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書14 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書15 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書16 文書15の相談に関して相談者が提出した資料の写し
文書17 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書18 文書17の相談に関して相談者が提出した資料の写し
文書19 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
文書20 警察安全相談カード(R04年〇〇月〇〇号)の写し
(3)告訴・告発事件処理簿(生活安全課)に編綴されている記録
文書21 告訴・告発事件受理報告書
文書22 告訴・告発事件処理報告書
文書23 告発状の写し
(4)告訴・告発事件処理簿(刑事第一課)に編綴されている記録
文書24 告訴・告発事件受理報告書
文書25 告訴・告発事件処理簿
文書26 告訴状の写し
(5)告訴・告発事件処理簿(刑事第二課)に編綴されている記録
文書27 告訴・告発事件受理報告書(追番1)
文書28 告訴・告発事件処理報告書(追番1)
文書29 告発状の写し
文書30 告訴・告発事件受理報告書(追番2)
文書31 告訴・告発事件処理報告書(追番2)
文書32 告訴状の写し
3 実施機関の処分
実施機関は、上記2の文書1から4までについては令和4年7月11日付で部分
開示決定を、文書21から32までについては同日付で開示請求の却下決定を行い、
文書5から20まで(以下、「本件対象公文書」という。)について、同日付で本件
処分を行うとともに、その旨を審査請求人に通知した。
4 審査請求
審査請求人は、本件処分を不服として、2022年8月2日付けで行政不服審査法
(平成26年法律第68号)第2条の規定に基づく審査請求を行った。
第3 審査請求人の主張要旨
1 審査請求の趣旨
本件処分の取消しを求めるというものである。
2 審査請求の理由
(省略)
3 実施機関の理由説明に対する意見
(省略)
第4 実施機関の説明要旨
(省略)
2
第5 審査会の判断
1 本件対象公文書について
本件対象公文書は、上記第2の2及び3のとおりであり、「告訴・告発事件取扱要
領」の定めにより、告訴・告発事件に係る相談・申出に関する資料として告訴・告発
事件相談・申出等記録簿に編てつされたものであり、実施機関の職員が職務上作成し、
又は取得した文書等であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当
該実施機関が保有しているものであることから、条例第2条第2項に規定する「公文
書」に該当する。
2 条例第11条各号(非開示事由)の該当性について
(1)条例第11条について
ア 第2号について
条例第11条は、実施機関は、第2号に規定する「個人に関する情報(事業
を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、
又は識別され得るもの」は開示しないことができるとしている。
これは、プライバシーの具体的な範囲が明確でないので、明白にプライバシ
ーと考えられるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確なものも
含めて、個人に関する情報を原則的に非開示とすることを定めたものであるが、
特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であっても、従来から公開され
ていたもの及び公益上公開することが必要と認められるものがあることから、
同号イからニまでに規定する情報については、開示することとされている。
また、条例第11条第2号に係る運用として、「氏名等を削除したとしても、
公文書のそれ以外の情報から、又はそれ以外の情報と容易に取得し得る他の情報
とを照合することにより、特定の個人が推測できるものについては、当該公文書
のそれ以外の情報も開示しない」とされている。
イ 第3号について
条例第11条は、実施機関は、第3号に規定する「法人その他の団体(以下
「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報
であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人に不利益を与えるおそ
れがあるもの」は開示をしないことができるとしている。
これは、原則として法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障しよう
とする趣旨である。
しかし、公益上公開することが必要と認められるものがあることから、同号イ
からハまでに規定する「法人等又は個人の事業活動によって生ずる危害から人の
生命、身体又は健康を保護するため、公開することが必要であると認められる情
報」、「法人等又は個人の違法又は不当な事業活動によって生ずる支障から人の
生活を保護するため、公開することが必要であると認められる情報」及び「イ又
はロに掲げる情報に準ずる情報であって、公開することが公益上必要であると認
められるもの」については、開示をしないことができる情報から除くこととされ
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ている。
なお、「当該事業に関する情報」とは、営利を目的とするかどうかを問わず、
事業内容、事業資産、事業所得等事業活動に関する一切の情報をいい、「不利益
を与えるおそれがあるもの」に該当する情報の典型的なもの及び具体例として
は、販売上のノウハウに関する情報として顧客名簿や新製品の販売計画書、工場
設備投資計画書などが、信用上不利益を与える情報として不祥事件報告書など
が、人事等専ら法人の内部管理の情報として内部監査実施状況報告書などが考え
られている。
また、「危害」とは、現に発生しているか、将来発生するであろうことが確実
である人の生命等に対する危険及び損害をいい、「保護する」とは、未然防止、
排除、拡大防止又は再発防止をいい、「イ又はロに掲げる情報に準ずる情報」と
は、生活環境、自然環境の破壊等に関する情報をいうものと考えられている。
ウ 第4号について
条例第11条は、実施機関は、同条第4号に規定する「公開することにより、
犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序
の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由
がある情報」は開示をしないことができるとしている。
これは、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのある情報を非開示
とすることを定めたものである。
「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防・捜査等に代表される刑事法
の執行を中心としたものに限定する趣旨である。
なお、「支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理
由がある情報」と規定しているのは、同号に規定する情報に該当するかどうか
の判断に当たっては、実施機関の裁量を尊重するという趣旨で、つまり、同号
に規定する情報の開示・非開示の判断には、犯罪等に関する将来予測としての
専門的・技術的判断を要するなどの特殊性があることから、司法審査の場にお
いては、裁判所は実施機関の一次的判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判
断として許容される限度内のものであるかどうかを審理・判断するにとどまる
ものであることを明確にしたものであるとされている。
また、同号に該当する情報の具体例としては、犯罪の捜査の事実等に関する情
報、犯罪の捜査等の手段、方法、体制等に関する情報、犯罪の予防、鎮圧に関す
る手法、技術、体制等に関する情報などが考えられている。
エ 第7号について
条例第11条は、実施機関は、第7号に規定する「県の機関と県の機関以外の
ものとの間における協議、依頼等により実施機関の職員が作成し、又は取得した
情報であって、公開することにより、県の機関と関係当事者との協力関係又は信
頼関係が著しく損なわれるおそれがあるもの」は開示をしないことができるとし
ている。
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これは、県の行政が、県以外の関係当事者との密接な関係のもとに執行されて
いることから、県と当該関係者との協力関係又は信頼関係を維持するため、公開
することにより、これらの関係が著しく損なわれるおそれがある情報を非開示と
することを定めたものである。
ここで、「協議、依頼等」とは、法令等に基づき、又は任意に行われる指示、
協議、依頼、照会、検討、調査等をいい、「関係当事者」とは、県の機関以外の
すべてのものをいい、「協力関係又は信頼関係」とは、当面の、又は将来にわた
る継続的で包括的な協力関係又は信頼関係をいい、「協力関係又は信頼関係が著
しく損なわれるおそれがある」情報とは、全国を通じて一斉に公表するなど、統
一的に取り扱うこととされている情報、非公開を条件に任意に提供された情報等
をいうとされている。
なお、「著しい支障が生ずるおそれ」があるかどうかについては、実施機関の
裁量をできるだけ限定しようとする趣旨から、単に「損なわれる」では足りず、
また、「おそれ」の有無及び程度についても客観的、具体的に判断しなければな
らず、適用に当たっては、「原則開示」の趣旨を踏まえて、いたずらに拡大解釈
するなど恣意的な運用を行うことのないよう十分留意しなければならないとして
いる。
(2) 判断
審査会が、本件対象公文書をインカメラ審理により実際に見分したところ、
文書5、文書6、文書8、文書10、文書11、文書 13、文書14、文書
15、文書17、文書19及び文書20については、追番、決裁欄、種別、指
揮事項及び処理結果等、相談の管理に係る情報のほか、受理年月日、受理方
法、相談者及び関係者の人定事項、相談の内容、処理の経緯等、個人の相談に
係る情報が具体的かつ詳細に記載されていることを確認し、文書7には、相談
者や関係者の関係性及び推定される犯罪行為の流れを図表化したチャート図、
事案概要及び捜査の結果判明した関係者の犯罪経歴等が記載されていることを
確認し、文書9には、法人の名称、告発人及び被告発人の住所、氏名及び電話
番号、告発事実、関係者の氏名等が記載されていることを確認し、文書12、
文書16及び文書18については、警察安全相談に関して相談者が提出した資
料の写しそれぞれ相談者から提出されたであるとの実施機関の説明に誤りはな
いものと見受けられた。
本件対象公文書は、告訴・告発に関する相談業務の過程で警察が作成し、
または取得したものであるが、相談者は当然に、自身の相談については、他者
に公開されないということを前提に相談を行っていることから、警察安全相談
業務は、相談者を含む関係者の人権等が尊重され、かつ秘密厳守が図られると
いう信頼関係の下に成り立つと考えられる。また、本件対象公文書に記載され
た情報を公にした場合、秘密の厳守を前提に相談を行った相談者の警察に対す
る信頼が失われ、また、今後相談しようとする者についても、自身の相談内容
等が一部でも他者に公開される可能性があると知れば、相談した事実が関係者
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に判明するのではないか等の不安を抱き、警察へ相談することを躊躇すること
となり、その結果、警察安全相談事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそ
れがある、また、本件については、文書の中の一部分が非開示事由に該当する
のではなく、文書を開示すること自体が条例第11条第7号の非開示事由に該
当し、関係当事者との協力関係又は信頼関係を著しく損なうおそれがあり、部
分開示可能な部分は存在せず、非開示部分を容易に区分することは困難である、
との実施機関の説明は、特段不自然、不合理とは言えず首肯できる。
よって、本件対象公文書は、全体として条例第11条第7号に該当するこ
とから、条例第11条第2号、第3号及び第4号について判断するまでもな
く、非開示が妥当である。
3 結論
以上の理由により、第1の審査会の結論のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過等
別紙のとおり
6
別紙
審査会の審査経過等
年 月 日 経 過
令和4年 10月19日 実施機関から諮問を受けた。
令和5年 8月31日 事案の審議を行った。
令和6年 7月29日 事案の審議を行った。
令和6年 11月18日 事案の審議を行った。
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(参考)
山口県情報公開・個人情報保護審査会第一部会員名簿
(五十音順・敬称略)
氏 名 役 職 名 備 考
沖 本 浩 弁護士
第一部会部会長
服 部 麻理子 山口大学准教授 第一部会 部会長職務代理者
水 谷 芳 昭 公認会計士
(令和5年8月31日まで)
氏 名 役 職 名 備 考
沖 本 浩 弁護士
第一部会部会長
古 林 照 己 公認会計士
服 部 麻理子 獨協大学教授 第一部会 部会長職務代理者
(令和6年11月18日現在)
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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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