審査請求に係る対象公文書(以下「本件公文書」という。)は、審査請求人が行った① 告訴・告発の受理(不受理)に関する通達・通知② 告訴・告発の受理(不受理)の判断基準・事務手続が記載された内部規則等であって、福岡県警察本部で作成されたもの。(例として、愛知県の愛知県行政手続情報案内システムに記載されている告訴・告発事件取扱要綱を挙げる。)③ 告訴・告発の受理(不受理)の判断基準・事務手続が記載された内部規則等であって、〇〇警察署で作成されたもの。
答 申
1 審査会の結論
福岡県警察本部長(以下「実施機関」という。)が行った次の(1)から(4)までに掲げる決
定のうち、本件決定1及び本件決定3については、2(1)に掲げる請求内容①及び請求内容
②に係る公文書として対象となるものを追加して特定した上で、改めて開示・非開示の決定
をすべきであるが、その余の決定については妥当である。
(1) 平成31年4月22日付け公文書開示決定(福警刑総第2818号。以下「本件決定1
」という。)
(2) 平成31年4月22日付け公文書非開示決定(福警刑総第2819号。以下「本件決定
2」という。)
(3) 令和元年7月12日付け公文書開示決定(福警刑総第4517号。以下「本件決定3」
という。)
(4) 平成元年7月12日付け公文書非開示決定(福警刑総第4518号。以下「本件決定4
」といい、本件決定1から本件決定4までを総称して「本件決定」という。)
2 審査請求に係る対象公文書の開示決定状況
(1) 審査請求に係る対象公文書
審査請求に係る対象公文書(以下「本件公文書」という。)は、審査請求人が行った
① 告訴・告発の受理(不受理)に関する通達・通知
② 告訴・告発の受理(不受理)の判断基準・事務手続が記載された内部規則等であって、
福岡県警察本部で作成されたもの。(例として、愛知県の愛知県行政手続情報案内シス
テムに記載されている告訴・告発事件取扱要綱を挙げる。)
③ 告訴・告発の受理(不受理)の判断基準・事務手続が記載された内部規則等であって、
〇〇警察署で作成されたもの。
との内容(以下前記①、②及び③の各内容をそれぞれ「請求内容①」、「請求内容②」及
び「請求内容③」という。)の公文書開示請求に係る公文書である。
(2) 開示決定状況
実施機関は、請求内容①及び請求内容②に係る公文書として、
ア 「告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について(通達)」(平成29年12
月4日付け、福警刑総第1253号)
イ 「告訴・告発の受理体制及び指導・管理に係る具体的運用要領について(通達)」
(平成28年12月9日付け、福警刑部第1267号)
を特定し、福岡県情報公開条例(平成13年福岡県条例第5号。以下「条例」という。)- 1 -
第11条第1項により公文書開示決定(本件決定1及び本件決定3)を行い、請求内容③
に係る公文書については、作成も取得もしておらず存在しないとして、条例第11条第2
項の規定により公文書非開示決定(本件決定2及び本件決定4)を行った。
3 審査請求の趣旨及び経過
(1) 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、「平成31年4月22日、令和元年7月12日の開示決定は全部開
示決定ではなく一部開示決定となる。該当する文書全部の開示決定を希望する。」という
ものである。
(2) 審査請求の経過
ア 審査請求人は、平成31年4月6日付けで、実施機関に対し、条例第6条第1項の規
定により、本件公文書の開示請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
イ 実施機関は、平成31年4月22日付けで、本件決定1及び本件決定2を行い、その
旨を審査請求人に通知した。
ウ 審査請求人は、令和元年6月27日付けで、実施機関に対し、条例第6条第1項の規
定により、本件公文書の開示請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
エ 実施機関は、令和元年7月12日付けで、本件決定3及び本件決定4を行い、その旨
を審査請求人に通知した。
オ 審査請求人は、令和元年7月18日付けで、本件決定を不服として、審査庁である福
岡県公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、審査請求を行った。
カ 諮問実施機関は、令和元年12月12日付けで、当審査会に諮問した。
4 審査請求人の主張要旨
審査請求人の主張を要約すると、次のとおりである。
(1) 本件決定1については、実施機関総務課職員が全部開示決定ではなかったと発言したが、
追加の開示決定はなかった。
(2) このため、本件請求1と同文言で本件請求2を行った。
(3) 令和元年6月27日に行った本件請求2に対し実施機関刑事部職員は、開示対象の文書
が多く存在するとして開示決定期間の延長を行うと発言していたため、「全部」の開示決
定が行われると思っていたが、7月12日に「一部」の開示決定が行われた。
(4) 当然ながら、一部ではなく、該当文書全部の開示決定を希望する。なお、一部しか開示
決定しなかった場合は、必ず「一部の」開示決定を行った旨記載するよう求める。
5 実施機関の説明要旨 - 2 -
実施機関の説明を要約すると、次のとおりである。
(1) 本件請求1への対応について
実施機関は、本件請求1において審査請求人が愛知県の告訴・告発事件取扱要綱を例示
していたこと、本件請求1前に審査請求人から〇〇警察署に対して警察庁発出の文書であ
る「告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について」(平成24年12月6日付け、
警察庁丙刑企発第103号ほか。)をFAX送信したこと、審査請求人による告訴が福岡
県警察本部等に不受理とされたものであること等から、請求内容①及び請求内容②に関し
て審査請求人が求めている公文書は、実施機関において告訴・告発を主管する刑事部刑事
総務課で作成している通達・通知等であると解して、2(2)ア及びイの公文書を特定し、
その全部を開示するとして本件決定1を行ったものである。
また、請求内容③に係る公文書については、〇〇警察署では、対象となる公文書を作成
も取得もしていないことから、本件決定2を行ったものである。
(2) 本件決定1及び本件決定2に対する審査請求人からの修正要望及びこれに対する情報提
供の提案等について
ア 審査請求人からの連絡
本件決定1及び本件決定2の通知後、実施機関は、審査請求人から
(ア) 開示決定された文書に不足がある。
(イ) 警察庁から発出された文書も対象である。
(ウ) 再度、開示決定に係る修正を行い、決定通知の再送付をお願いする。
との旨が記載された「公文書開示決定の誤りの修正について」(令和元年5月15日付
け)の文書を受理した。
イ 情報提供の提案等
実施機関においては、前述のとおり、本件請求1について、審査請求人が既に入手し
ているはずの警察庁発出文書をも求める趣旨の連絡があったため、同人の費用負担も考
慮し、令和元年5月20日付け「公文書開示請求に係る情報提供について」を発出し、
警察庁発出文書についての情報提供を提案した。
しかしながら、審査請求人は、同年5月21日、実施機関に対し電話で、情報提供で
はなく決定の修正を求めること、警察庁発出の通達の他、事務決裁に係る規程も含まれ
ていないことを申し立て、前記提案を拒否したため、実施機関は本件決定1の修正は行
わない旨を回答した。
(3) 本件請求2への対応について
ア 本件請求2の受理及び審査請求人に対する請求内容の確認
実施機関は、審査請求人から本件請求2に係る令和元年6月27日付け公文書開示請
求書を受理した。その内容は、本件請求1と同様のものであったため、審査請求人に対- 3 -
し、以下のとおり請求内容の確認を行った。
(ア) 審査請求人への請求内容の照会
実施機関は、審査請求人に対し、警察庁発出文書も含む趣旨であるか等、対象文書
を特定するとともに、その必要に応じて開示請求書の補正を求める趣旨で、令和元年
7月2日付け「公文書開示請求に係る請求内容の確認について(照会)」により、本
件請求2の請求内容が
a 本件決定1で決定した2(2)ア及びイの公文書に情報提供を提案した警察庁通達
を追加したもの
b 前記のほか、県警で保有する告訴・告発の受理・不受理に関する事項が記載され
た告訴・告発の主管である刑事部門以外の部門が作成した通達・通知、規則等
のいずれの文書であるか、回答がなければ本件決定1と同様の開示決定となる旨を申
し添えた上で、文書による回答を求めた。
(イ) 審査請求人からの電話連絡及び審査請求人に対する受理通知の送付
令和元年7月4日、実施機関は、前記(ア)の照会を受けた審査請求人から、照会に
対する回答はしないこと、警察庁の文書を含む全ての文書を請求することの電話連絡
を受けた。
よって、実施機関は、本件請求2の請求内容を前記(ア)bに係る通知・通達及び内
部規則等の全てと解することとし、令和元年7月5日、審査請求人に対し、請求内容
①及び請求内容②に「全て」と加筆した公文書開示請求書の複写を参考送付した。
(ウ) 審査請求人からの文書の送付及び電話連絡
審査請求人から「令和元年6月27日の公文書開示請求に係る補正等について」
(令和元年7月7日付け)との文書が送付され、加筆された「全て」の文言を削除す
る補正を行う旨が記載されていた。これに対し、実施機関は再度電話により対象文書
を確認するも、開示請求書に加筆した「全て」の文言の削除を求めるのみの回答しか
得られなかった。
イ 本件決定3及び本件決定4について
本件請求2について、対象文書を特定すべく審査請求人に確認するも、その特定が困
難であることから、本件請求1と同様の請求内容である本件請求2に対し、前記(1)と
同様の理由により本件決定3及び本件決定4を行った。
以上の理由から、実施機関が行った本件決定に誤りはなく、審査請求人の主張は認められ
ない。
6 審査会の判断
(1) 告訴・告発の受理について - 4 -
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第230条には、犯罪により害を被った者
は、告訴をすることができると規定され、同法第239条には、何人でも、犯罪があると
思料するときは、告発をすることができると規定されている。また、同法第241条第1
項において、告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければ
ならないと規定されている。
犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第63条第1項には、司法警察
員たる警察官は、告訴、告発をする者があったときは、管轄区域内の事件であるかどうか
を問わず、これを受理しなければならない旨が規定され、同規範には、口頭による告訴又
は告発を受けたときは、告訴調書又は告発調書を作成しなければならないこと、書面によ
る告訴又は告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるとき又は本人の意思に適
合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、又はその供述を求めて
補充調書を作成しなければならないこと等が定められている。
(2) 本件決定1及び本件決定3の妥当性について
実施機関は本件請求1のうち請求内容①及び請求内容②について、開示請求前に把握し
ていた審査請求人に関する事情等を考慮し、実施機関において告訴・告発を主管する刑事
部刑事総務課が作成した通達・通知等に限定して請求に係る公文書を特定しているものと
認められる。
しかしながら、
ア 本来条例に基づく公文書開示請求制度においては、請求書の記載事項から請求に係る
公文書を特定すべきものであり、開示請求者の個別の事情によって特定される公文書が
変わるものではないこと
イ 請求内容②においては「福岡県警察本部で作成されたもの」として作成機関を限定す
る記述があるのに対し、請求内容①においてはそのような記述は認められないこと
ウ 本件決定1の通知後に、審査請求人から一貫して警察庁発出文書や事務決裁に係る規
程を含む全ての公文書の開示を求める旨の意思表示がなされていること
を踏まえると、実施機関の本件決定1に係る公文書の特定については、請求に係る公文書
の内容に関して実施機関による審査請求人の意思確認が十分に図られないままに、実施機
関において請求内容を狭く解してしまったものであると言わざるを得ない。
また、本件決定3に係る公文書の特定の過程で、実施機関が、審査請求人の警察庁発出
文書等を含む全ての公文書を請求するとの意思を把握した上で、本件請求2のうち請求内
容①及び請求内容②に「全て」を加筆すれば、前記5(3)ア(ア)bのように、2(2)ア及び
イの公文書以外にも、告訴・告発の受理に関する通知・通達及び内部規則等に該当するも
のを特定できると解していたことも、合理性を欠くものであると認められる。
したがって、実施機関は本件請求1及び本件請求2のうち請求内容①及び請求内容②に- 5 -
係る公文書として、実施機関が保有する告訴・告発の受理・不受理に関する事項が記載さ
れた通達・通知、規則等に該当する公文書を追加して特定した上で、開示決定等を行うべ
きである。
ところで、審査請求人は審査請求の趣旨において「本件決定1及び本件決定3は全部開
示決定ではなく一部開示決定となる」としているが、これは本件決定1及び本件決定3の
通知について公文書の特定に不足があることから、福岡県警察本部長が管理する公文書の
開示等に関する規程(平成14年6月17日福岡県警察本部告示第29号)様式第2号に
定める公文書開示決定通知書ではなく、様式第3号に定める公文書部分開示決定通知書に
より通知すべきであることを主張しているものと思料される。
この点については、
ア 本件決定1及び本件決定3は実施機関において特定した2(2)ア及びイの公文書の全
てを開示する旨を決定したものであり、当該公文書以外の文書について開示しないこと
と決定したものではないこと
イ 複数の公文書について、ある程度のまとまりの公文書ごとに審査を行い、審査を終了
したものから順に開示決定等を行うことが制度上是認されていること
を踏まえると、本件決定1及び本件決定3の通知については、条例第11条第1項により
請求に係る公文書の一部を開示する旨の通知に改めるべきものとまでは認められない。
(3) 本件決定2及び本件決定4の妥当性について
審査請求人は、審査請求書中、審査請求に係る処分について本件決定2及び本件決定4
を挙げた上で、審査請求の趣旨において該当する文書全部の開示決定を希望するとしてい
ることから、本件決定2及び本件決定4の妥当性についても以下検討する。
本件決定2及び本件決定4に係る請求内容③について、実施機関は、〇〇警察署では対
象となる公文書を作成も取得もしておらず存在しないと説明している。
この趣旨について当審査会が実施機関に確認したところ、実施機関においては「告訴・
告発の受理体制及び指導・強化について(通達)」等に基づき県下統一した運用を実施し
ていることから、〇〇警察署をはじめとする警察署において、通達とは別の内部規則を作
成することはなく、別運用するために取得した公文書も存在しないとのことであった。
警察署においては対象となる公文書を作成も取得もしていないとする実施機関からの説
明に特段不合理な点はなく、また、審査請求人は、本件審査請求に係る処分に本件決定2
及び本件決定4を挙げているものの、具体的に本件決定2及び本件決定4が違法又は不当
である旨の主張を行っていないことも踏まえれば、実施機関が行った本件決定2及び本件
決定4については妥当であるものと認められる。
以上の理由により、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 - 6 -
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。