判例 昭和35年4月26日  最高裁判所

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人若松一美の上告理由第一点について。
 原審は、被上告人に対する所論業務上横領事件の告訴が検察官により起訴猶予処
分に付せられたものであつて、告訴の取下のなかつた事実を、適法に認定して居る。
論旨は、原審に理由齟齬の違法があると主張するけれども、その実質は、独自の見
解に立つてこの事実認定を非難するに過ぎない。それのみならず、原審は、本件損
害賠償請求権が被上告人により放棄せられた旨上告人等の抗弁したるに対し、その
事実を認定するに足る証拠がないとして、この抗弁を排斥して居るのであつて、こ
の判断は是認し得られる。原判決において、右業務上横領事件につき、検察官の執
つた右措置をも、本件損害賠償請求権が被上告人により放棄せられたとの抗弁事実
を認め得ない根拠の一つとして居ることは、所論の通りであるけれども、原判文に
よれば、これは、右抗弁を排斥する理由の側面的説明として附加せられたに過ぎな
いこと、明かであつて、原審の結論に缺くことを得ない理由とは考えられない。し
たがつて所論告訴の取下の有無の如きは、全く原判決の主文に影響を及ぼさない。
 論旨は、採用し得ない。
 同第二点につき。
 被上告人に対する右業務上横領事件並に上告人等に対する原判示暴行傷害事件に
つき、何れも告訴の取下のなかつたことは、原審において主張せられず、またその
ための立証のなかつたにも拘らず、原審は、その趣旨の事実を認定して居ること、
所論の通りである。しかし本件において、原審が当事者の主張立証によつて判断す
べきことは、前記抗弁事実の存否である。所論告訴の取下の如き事実は、原審が右- 1
抗弁事実の存否を確定するため認定した間接事実に過ぎない。かゝる間接事実は、
当事者がこれを主張したるや否やに拘束せられることなく、事実審は現れたる証拠
によりこれを認定するに何等の妨げがない。
 原審は以上と同趣に出て居るのであるから、当事者の申立てない事項に付判決し
た違法があるとはいえない。
 論旨は、理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔- 2


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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