神奈川県警察被害者支援要綱の制定について
○神奈川県警察被害者支援要綱の制定について
(平成10年3月13日 例規第5号 神務発第332号 神総発第58号
神生総発第188号 神地総発第87号 神刑総発第269号 神交総発第
106号 神公一発第108号)
最終改正 平成26年8月15日 例規第35号 神総発第255号
各所属長あて 本部長
犯罪の被害者は、その直接的な被害だけでなく、その結果として生ずる精神的被害、
経済的被害等多くの被害を受けている。中でも、精神的被害の問題は、極めて深刻であり、
犯罪により著しいストレス障害を抱え、精神的な援助を必要としている被害者が多数認め
られるところである。こうした現状に加え、警察の活動が精神的被害等の第二次的被害を
被害者に与えているとの指摘や被害者の権利を重視する近年の国際的潮流にかんがみると、
被害者にとって最も身近な機関であり、被害の回復、軽減(被害者感情の軽減を含む。)及
び再発防止について被害者から大きな期待が寄せられている立場にある警察として、被害
者の視点に立った、被害者のための各種施策を早急に強化することが緊急の課題となって
いる。
そこで、このたび、別添のとおり神奈川県警察被害者対策要綱を制定し、平成10年4
月1日から施行することとしたので、本要綱に従い積極的に各種施策を展開し、被害の回
復、軽減及び再発防止に努めるとともに、犯罪の捜査その他の警察活動による被害者の負
担を可能な限り軽減するよう努められたい。
別添
神奈川県警察被害者支援要綱
第1 総則
1 目的
この要綱は、神奈川県警察(以下「警察」という。)が、被害者の置かれている現状
を踏まえ、被害者の視点に立った各種の施策を総合的に推進するに当たっての基本的
指針を定めることを目的とする。
2 用語の意義
この要綱における用語の意義は、次のとおりとする。
(1) 被害者
犯罪(刑事事件として立件されていない犯罪及び犯罪に類する行為を含む。以下同
じ。)による被害を受けた者及びその遺族をいう。
(2) 被害者支援
警察の活動のうち、被害者の視点に立ち、被害者のニーズに対応する形で行われ
る被害者をめぐる活動をいう。
3 被害者支援の基本的考え方
(1) 警察の設置目的の達成
警察は、「個人の権利と自由を保護」することを目的に設置された機関である。
したがって、犯罪によって個人の利益が侵害されることを防ぐとともに、侵害され
た状況を改善していくことは、自らの設置目的を達成するために当然行うべき事項
である。被害者支援は、警察本来の業務であり、警察は被害者を保護する立場にあ
る。
(2) 捜査活動への被害者の協力確保
被害申告、供述等の協力を確保することは、事件の端緒の把握及び立証の上で不
可欠なものであり、警察の捜査活動を進める上でなくてはならないものである。被
害者の利益を守る活動を行い、捜査過程における被害者の第二次的被害(警察の捜査
活動等によって、被害者に更なる精神的被害等の負担をかけることをいう。以下同
じ。)を軽減することは、警察の捜査への被害者の協力を確保する上で、極めて重要
な事項である。
(3) 捜査過程における被害者の人権の尊重
犯罪捜査における個人の基本的人権の尊重については、被疑者の人権のみならず、
被害者の人権に対する配意も当然に含むものである。警察は、被害者に敬意と同情
をもって接し、被害者の尊厳を傷つけることのないよう留意することが求められて
いる。
4 被害者支援推進上の基本的留意事項
(1) 被害者のニーズへの対応
被害者支援は、被害者の立場に立ち、被害者のニーズに合理的に対応する形で行
い、被害者が何を望んでいるか、被害者に何が必要か常に念頭に置いて推進する。
(2) 総合的な施策の推進
警察と被害者とのかかわりが広範なものであることに留意し、従来の施策の被害
者の立場に立った見直しと新たな施策の推進とを、組織全体において総合的に推進
する。
(3) 重点的な施策の推進
被害者支援の推進に当たっては、犯罪による直接的被害とその後の第二次的被害
の両面において大きな問題を抱えている身体犯の被害者、特に女性の性犯罪被害者
及び殺人、傷害致死等に係る遺族の抱える問題への対応に重点を置く。また、少年
である被害者(以下「被害少年」という。)についても、その後の健全育成の観点か
ら、被害者支援上の重要な対象とする。
(4) 関係機関・団体等との連携
被害者のニーズは、生活上の支援をはじめ極めて多岐にわたっており、警察にお
いてそのすべてに対応することはできないことから、関係機関、民間団体等との連
携を進め、実効性のある対策の推進に努める。
第2 個別分野施策の推進
1 被害者の救援
(1) 被害者への情報の提供
ア 手引、リーフレット等の活用
被害者が必要とする情報を早期かつ包括的に教示し、あわせて捜査活動につい
ての協力を依頼するため、被害者への慰めの言葉、刑事手続の概要、警察の相談
窓口、被害者にとって役に立つ関係機関・団体の連絡先等を記載した手引、リー
フレット等を活用した情報の提供を行うものとする。
イ 被害者連絡等の推進
被害者に対する事件に関する情報の適切な連絡と被害者からの照会に対する確
実な対応を確保し、及び被害者が再び被害に遭うことを防止するとともに被害者
の不安感の解消を図るため、適正な被害者連絡及び被害者訪問活動を推進するも
のとする。
なお、被害者訪問活動の推進に当たっては、訪問活動が被害者の対面等を傷つ
け、あるいは精神的な負担となることのないよう、事案の態様に応じた配慮を行
うものとする。
(2) 被害者の精神的被害の回復への支援
ア カウンセリング機関等との連携
被害者が抱えている様々な問題の中でも、特に深刻な問題である精神的な被害
に対応するため、カウンセリングを行う機関等との連携・協力関係の確保を図り、
当該機関に関する情報を積極的に提供するなど、被害者の精神的被害の回復・軽
減に努めるものとする。
イ 被害少年への支援体制の確立
犯罪の被害が少年に与える影響の緩和、少年の健全育成等を図るため、神奈川
県警察少年警察活動規程(平成9年神奈川県警察本部訓令第20号)第2条第12号に
規定する少年相談員(以下「少年相談員」という。)等によるカウンセリングの実
施等、継続的な支援活動を行うとともに、少年相談員等被害少年の支援を担当す
る要員の充実と教養の強化を図るものとする。
(3) 被害の補償、被害品の回復等
ア 被害回復の促進
被害品の発見を促進し、被害者の被害回復を図るため、盗品等に関する情報を
被害品の発見及び盗品等の流通の防止を行う民間団体に提供するものとする。
イ 速やかな還付手続等の徹底
犯罪捜査、地域警察活動等において、被害品の発見等に至った場合は、証拠品
の適正な保管・管理を行うとともに、速やかな還付又は仮還付手続による被害の
回復に努めるものとする。
ウ 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55
年法律第36号)の適切な運用
犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律の運用に
関し、被害者のニーズを踏まえ、支給事務の迅速化及び適正化を図るものとする。
エ 犯罪被害救援基金等に対する協力
公益財団法人犯罪被害救援基金の活動について、奨学金支給対象者の選定に係
る協力要請への対応を引き続き行うとともに、同基金の調査活動等に積極的に協
力する。また、同基金の支援を受ける民間団体等の活動についても、協力を求め
られた場合には、これに応じるものとする。
オ 暴力団から被害を受けた者に対する援助措置等の充実
暴力団員による暴力的要求行為の相手方に関する財産的被害の回復のための援
助について、被害回復アドバイザーを活用しつつ、充実を図る。また、暴力団員
による不当な行為の被害者への神奈川県暴力追放推進センターによる民事訴訟の
支援等の救援に対し、積極的な協力を行うものとする。
2 捜査過程における被害者の第二次的被害の防止・軽減
ア 告訴・告発、被害届等の適切な受理及び対応
告訴・告発、被害届等の受理については、従来行われてきた施策を適切に運用
し、被害者の立場に立った対応に努めるものとする。
なお、犯罪としての立件措置の可否の問題とは別に、当該事案に関し、捜査担当
以外の部門や他の機関での対応が適切なものについては、紹介等の措置を行うもの
とする。
イ 犯罪捜査における被害者への対応の組織的改善
警察の犯罪捜査における被害者への対応を組織的に適切に行うため、捜査員等に
対し、被害者対応に関する基本的事項の周知徹底を図るとともに、被害者への適切
な対応を適正捜査の要素として位置付け、捜査指導部門において被害者への対応の
組織的改善を継続的に推進するものとする。
ウ 性犯罪捜査における女性警察官の活用
強姦(かん)等の性犯罪被害者が警察の事情聴取により受ける精神的被害を緩和す
るため、被害者が希望する場合には同性による事情聴取を行うことができるよう、
捜査能力を有する女性警察官を育成するとともに、効果的な配置・運用に努め、女
性警察官による事情聴取の拡大を図るものとする。また、男性警察官が被害者の事
情聴取を行う場合の補助者、病院への付添い、被害者との連絡業務担当者等として
女性警察官を活用することも、併せて推進するものとする。
エ 被害者の経済的負担の軽減
被害者の呼出し等捜査活動による被害者の経済的負担を軽減するため、被害者に
対する旅費の支給等必要な施策の推進に努めるものとする。
オ 被害者の心情等に配意した広報
事件広報に当たっては、被害者の立場、心情等に配意した広報に努めるものとす
る。
カ 施設の整備
被害者及び参考人が安心して事情聴取等に応じられるよう、施設の整備に努める
ものとする。
3 被害者等の安全の確保
ア 暴力団犯罪の被害者等の安全の確保
暴力団による犯罪の被害者又は参考人等の安全を確保するため、非常通報装置等
必要な装備資機材の整備を更に積極的に推進するほか、保護対策の一層の充実を図
る。
なお、暴力団犯罪の被害者以外の被害者や参考人についても、脅迫や嫌がらせ等
を受けるおそれがあると認められる場合には、これに準じ必要な措置を講ずるとと
もに、被害者等がその不安を訴えた場合には適切にこれに対応するものとする。
また、暴力団員による不当な行為等に関し、被害者からの相談に的確に対応する
とともに、神奈川県暴力追放推進センターによる相談業務の円滑な運営に積極的に
協力するものとする。
イ 女性警察職員による被害相談体制の整備
女性被害者の安全の確保及び被害の防止を図るため、女性警察官等女性警察職員
を相談所、交番等に効果的に配置・運用するなど、女性が警察に相談しやすい体制
の整備に努めるものとする。
ウ 家出・行方不明者対策の強化
家出・行方不明者のうち、犯罪被害等に遭うおそれの強い者の早期発見・保護、
被害予防のため、関係機関・団体との連携を図るなど対策を強化するものとする。
エ 生活安全情報の提供、相談の強化
犯罪の被害者等が自ら犯罪の予防、拡大防止、被害回復の手段等を講じていくこ
とができるようにするため、総合相談等を通じた相談の受理、必要な情報の提供等
を更に推進し、充実を図る。また、相談業務においては、声かけ事案等犯罪に至ら
ない事案に関するものなどについても、地域住民の要望に応じた情報を積極的に提
供していくものとする。
第3 教養の徹底
1 被害者対応に関する基本原則の徹底
「被害者の安全を守るとともに、被害者に敬意と同情をもって接し、被害者の尊厳
を傷つけない」という警察の被害者との対応に関する基本原則を職員一人一人に徹底
するため、あらゆる機会、媒体を通じて教養を行うものとする。
2 専門教養の充実強化
各部門の担当者に被害者支援に関する専門的知識・技能を修得させるため、専門教
養の充実強化を図るものとする。
第4 報告
所属長は、被害者支援に関し、効果的な施策を推進したとき又は特異・重要な事項
を把握したときは、警察本部長(警務課被害者支援室長経由)に報告するものとする。
附 則(平成12年3月21日例規第8号神務発第519号)
附 則(平成14年3月1日例規第6号神務発第402号)
附 則(平成14年5月1日例規第29号神務発第947号)
附 則(平成16年3月30日例規第14号神務発第691号)
附 則(平成20年4月21日例規第23号神少捜発第163号神少育発第284号)
附 則(平成20年6月26日例規第32号神務発第1352号)
附 則(平成20年11月28日例規第51号神務発第2303号)
附 則(平成22年3月30日例規第17号神務発第480号)
附 則(平成26年8月15日例規第35号神総発第255号)
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。