告訴及び告発の取扱いについて

通達甲(副監.刑.2.資)第15号
平成15年4月1日
存続期間
部長、参事官
各殿
所属長
副総監
告訴及び告発の取扱いについて
このたび、次により告訴及び告発の取扱いについて定め、平成15年4月1日から実施す
ることとしたから、運用上誤りのないようにされたい。
おって、告訴の取扱いについて(昭和36年9月15日通達甲(刑.2.1)第21号)
は、廃止する。

第1趣旨
告訴及び告発(以下「告訴等」という)については、相手の立場を踏まえた誠実な対。
応を心掛けるとともに、的確かつ効率的な捜査によって迅速な事件の解決を図る必要があ
ることから、その取扱いについて必要な事項を定め、もって告訴等の取扱いの適正を期す
るものである。
第2準拠
告訴等の取扱いについては、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)、犯罪捜査規範
(昭和32年国家公安委員会規則第2号)及び犯罪捜査規範実施細目(平成15年4月1
日通達甲(副監.刑.総.指)第6号)によるほか、この通達の定めるところによる。
第3告訴等の取扱いに関する基本的留意事項
1告訴等の相談
(1)告訴等の相談を受けるに当たっては、相談人に幅広い説明を求め、告訴等の趣旨、
相談人の真意等を明確にするとともに、相談人の示した犯罪事実のみにとらわれるこ
となく、背景にある事案全体を明らかにするよう努めること。
(2)相談人の立場に立った誠実な対応を心掛け、告訴等に必要な提出資料、連絡先等を
教示するなどして便宜を図るとともに、捜査への積極的な協力を求めること。
(3)事件の成否、管轄権の有無等についての不用意な言動は慎み、警察が消極的又は不
公平な取扱いをしているとの不信や疑念を抱かせないようにすること。
(4)他人の中傷、公権力の不当な利用等を目的として告訴等がなされることがあるので、
相談内容が不自然な場合には、詳細な説明を求めるなどして、虚偽や著しい誇張がな
されていないか、告訴等の要件が整っているかなどを確認すること。
(5)公訴の時効が切迫した告訴等については、被害発生時点で告訴等に及ばなかった理
由の説明を求めるとともに、公訴の時効の完成まで間がないこと、捜査への積極的な
協力が必要になることなどを説明すること。
(6)告訴等の相談を受けた事案について、現に不法事案に発展するおそれがあると認め
たときは、告訴等を受理するか否かにかかわらず、相談人の居住地又は事務所の所在
地を管轄する警察署等関係所属と連絡をとり、不法事案防止のための措置を講ずるこ
と。
なお、犯罪が成立しないことが明らかとなった場合でも、必要に応じ、警察署の生
活安全相談担当係、警視庁生活安全相談センター等の窓口を教示して引き継ぐなどの
措置を講ずること。
2告訴等の受理
(1)管轄等
告訴等は、原則として当該告訴等に係る告訴人及び告発人(以下「告訴人等」とい
う。)並びに被告訴人及び被告発人(以下「被告訴人等」という。)の居住地、事務
所の所在地、犯行地等を問わずこれを受理すること。ただし、他の所属で取り扱うこ
とが妥当と認められる合理的な理由がある場合は、本部主管課長(担当係経由)に連
絡して調整を受け、又は当該他の所属に事前の了解を得て引き継ぐとともに、告訴人
等には当該他の所属と担当者を明示して引き継いだ旨を説明すること。
(2)要件の確認
次に掲げる事項(告発にあってはア、イ及びエに限る)を確認し、要件を満たし。
たものと認められる告訴等については、これを受理すること。
なお、要件の整った告訴等について、民事事件絡みであることを理由に、受理を回
避しないこと。
ア処罰意思
告訴等は犯人の処罰を求める意思表示であることから、告訴等の受理に当たって
は、被告訴人等に対する処罰意思の有無を明らかにすること。
イ犯罪事実
犯罪が成立しないことが明らかであったり、犯罪事実を示さない告訴等は無効で
あることから、犯罪事実が特定されているかどうかを確認すること。
ウ告訴権者
告訴については、身分を証する資料を提出させるなどして告訴権者であることを
確認すること。
なお、代理人による告訴については、代理人であることを証する委任状の提出を
求めて代理権の有無についても確認し、事案の事実関係、告訴人の意思等を正確に
把握するため、必要があると認める場合は、告訴人その他の関係者に資料の提出又
は説明を求めること。
エ公訴の時効期間
同一案件であっても適用罪名により公訴の時効期間が異なること、犯人が国外に
いるため公訴の時効が停止することがあること等を踏まえて公訴の時効が完成して
いないことを確認すること。
オ親告罪の告訴期間
告訴期間が定められている親告罪の告訴については、告訴期間内であることを確
認すること。
なお、告訴の相談のために時間を費やして告訴期間を経過してしまうことのない
よう留意すること。
3告訴等の処理
(1)処理の基本
告訴等の処理に当たっては、事件の早期解決を望む告訴人等の要請にこたえ、迅速
な処理を心掛け、速やかに捜査を遂げて検察官に送付すること。
(2)捜査方針の早期樹立
捜査主任官は、所属長の指揮の下、告訴等の事件の概要に基づき、早期に捜査方針
を樹立して具体的かつ的確な捜査指揮を行い、計画的、効率的かつ適正な捜査に努め
ること。
(3)補充調書の作成
事案の概要や告訴人等の真意等を明確にするため、告訴等の受理後、速やかに告訴
人等の補充調書を作成すること。
(4)検察官との連携
告訴等の処理に当たっては、捜査方針を検討した上で検察官と緊密な連携を図りつ
つ捜査を進めること。
(5)告訴等の移送
告訴等は、受理した警察署又は本部主管課若しくは受理した警察署から移送を受け
た警察署において処理すること。ただし、受理した告訴等が次に掲げるものに該当す
る場合は、主管部長(本部主管課長経由。以下同じ)に報告し、その指揮を受けて。
関係する道府県警察又は所属に移送することができる。
ア当庁の管轄区域外の犯罪であって、当庁においてこれを処理することができない
もの
イ犯行地等を管轄する道府県警察においてこれを処理することが適当であると認め
られるもの
ウ道府県警察又は複数の所属が関係する事案に関する告訴等であるなど、関係する
部署において調整を経た上で処理されることが適当と認められるもの
エその他移送することが適当と認められるもの
なお、不動産侵奪及び境界損壊に係る告訴等は、被害に係る不動産の所在地を管轄
する警察署において処理し、また、所在地が道府県の場合は、刑事部長に報告し、移
送の指揮を受けること。
4資料提出の要求
参考となる資料は、要件の確認及び迅速的確な捜査に必要なことから、次に掲げる資
料の提出を求めて、詳細な説明を受けるように努めること。
なお、告訴状又は告発状(以下「告訴状等」という)が郵送されてきた場合等で、。
告訴権、犯罪事実、処罰意思等の確認が困難であると認めるときは、速やかに来署を求
めるなどして、資料の提出又は説明を求めること。
(1)告訴権者であることを示す資料
告訴権者が、個人であれば身分証明書等の、官公署であれば組織等に関する法令等
の、法人であれば登記簿謄本等の提出を求めること。
(2)被告訴人等の身分及び職務に関する資料
被告訴人等が判明している場合には、住民票、履歴書等の提出を求めること。
また、法人等に係る事件の告訴等では、被告訴人等の地位、業務、権限等の職務に
関する資料の提出を求めること。
(3)被告訴人等が罪を犯したことを証明する資料
被告訴人等が罪を犯したことを証明する資料は、早期に提出を求めること。
(4)その他捜査上参考となる資料
被告訴人等の写真、現住所、立ち回り先、共犯者に関する資料等捜査上参考となる
資料については、積極的に提出を求めること。
また、相談に際して提出資料を預かる場合には、事後の誤解や紛議を防止するため、
告訴等の受理ではない旨を明確に説明して了解を得るとともに、告訴状等の原本は預
からないこと。
第4警察署における取扱い
1相談及び受理の体制
(1)告訴等の相談及び受理については、原則として事件主管課長(島部警察署にあって
は事件主管係長。以下同じ)がこれに当たること。ただし、本署当番時間帯(島部。
警察署にあっては宿直時間帯。以下同じ)においては、本署当番責任者(島部警察。
署にあっては宿直責任者。以下同じ)が、これに当たること。。
(2)前(1)の場合において、事件主管課長及び本署当番責任者が自ら当たることがで
きないときは、その指定した者に当たらせることができる。
(3)本署当番責任者は、本署当番時間帯に取り扱った告訴等の相談及び受理については、
本署当番勤務(島部警察署にあっては宿直勤務)終了後速やかに事件主管課長に引き
継ぐこと。
2警察署長の指揮及び管理
(1)警察署長は、告訴等の取扱責任者として、事件主管課長から直接に報告を求めるな
どして常に告訴等の相談、受理及び処理の状況の把握に努めるとともに、必要に応じ
て具体的な指示を行うなど指揮を徹底すること。
(2)警察署長は、受理した告訴等に係る事件については、原則として、事件主管課長に
犯罪捜査規範実施細目別記様式第3号の「事件指揮簿」に登載させ、捜査の指揮及び
経過を明らかにしておくこと。
(3)警察署長は、相談件数、受理した告訴等の内容、未処理件数、時効完成時期等を勘
案して、告訴等の取扱いに必要な体制を確保するよう努めること。
3本部報告
(1)警察署長は、相談又は受理した告訴等で、紛議が予想されるもの、社会的反響が大
きいと予想されるもの又は重要特異なものについては、速やかに主管部長に報告する
こと。
(2)前(1)により報告した事案について、更に逮捕状の請求をしようとする場合は、
事前にその旨を主管部長に報告すること。
第5その他
告訴等の取扱いに関する細部事項については、必要に応じ、主管部長が別に定めるもの
とする。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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