告訴事実の書き方11(文書偽造、行使罪)【元刑事が解説】

 【完全解説】文書偽造とは?有形偽造と無形偽造の違い・犯罪の成立要件を解説

文書偽造には 「有形偽造」「無形偽造」 の2種類が存在します。しかし、刑法で処罰の対象となるのは「有形偽造」のみ です。本記事では、有形偽造と無形偽造の違いを詳しく解説し、どのようなケースが文書偽造罪に該当するのかを具体例を交えて説明します。

文書偽造とは?有形偽造と無形偽造の違い

文書偽造とは、他人名義で書類を作成したり、文書の真正性を損なう行為を指します。具体的には 「有形偽造」「無形偽造」 の2つに分類されます。

  • 有形偽造他人の名前を使って文書を作成する行為(例:他人名義の契約書を勝手に作成)
  • 無形偽造 :本名で文書を作成するが、内容が虚偽である行為(例:学歴を詐称した履歴書を提出)

無形偽造は犯罪にならない?履歴書の学歴詐称はどうなる?

例えば、あなたが就職活動中に 履歴書の最終学歴欄に「東京大学法学部卒業」と虚偽の記載 をした場合、これは犯罪になるのでしょうか?

答えは「無罪」です。
なぜなら、履歴書には自分の本名を記載しており、他人の名前を使っていないため「文書偽造罪」には該当しない からです。また、「偽造私文書行使罪」にも当たりません。このように、本名で作成し、内容のみ虚偽の文書は「無形偽造」とされ、処罰の対象外 となっています。

文書偽造罪が成立するケース

では、どのような場合に 「私文書偽造罪」や「公文書偽造罪」 が成立するのでしょうか?

私文書偽造罪の成立要件

  • 他人の名義で文書を作成する
  • 例:他人の名前を使って融資申込書を作成し、金融機関に提出

公文書偽造罪の成立要件

  1. 公務員が権限を持つ公文書を偽造 (例:公務員が虚偽の公文書を作成)
  2. 一般人が公務員になりすまし公文書を偽造 (例:住民票や戸籍謄本を偽造)

どのような文書が「文書偽造罪」の対象になるのか?

文書偽造罪が成立する文書の条件は、「権利・義務・事実証明に関する文書」であること です。例えば、

  • 対象になる文書 :契約書・申込書・戸籍謄本・住民票
  • 対象にならない文書 :単なる個人の手紙や日記(事実証明の役割がない)

「有印」と「無印」の違い

文書偽造罪には 「有印私文書偽造罪」「無印私文書偽造罪」 があります。ここでの 「印」 とは 「印鑑」だけでなく、作成者の氏名が記載されているかどうか を指します。

  • 有印私文書偽造罪 :氏名や印鑑がある文書を偽造(例:印鑑付きの契約書を偽造)
  • 無印私文書偽造罪 :氏名の記載がない文書を偽造(※実際の事件ではほぼ見られない)

まとめ

✅ 文書偽造には 「有形偽造」「無形偽造」 がある
処罰されるのは有形偽造のみ(他人の名義で文書を作成する行為)
履歴書の学歴詐称は無形偽造のため無罪
公文書偽造罪は、公務員の権限が関係する場合に成立
「権利・義務・事実証明に関する文書」が偽造罪の対象

 年金証書の偽造

 社員証を偽造して行使した場合の告訴事実作成例です。

解説
 文書偽造罪は「行使の目的」が必要なので、事実中に「行使の目的で」が必須になります。偽造方法は、鑑定しないとわかりませんので、告訴段階ではわかる範囲で記載します。もし全くわからなければ「何らかの方法により」で構いません。
 なお、文書偽造罪に行使の目的が必要なのは書いたとおりですが、文書偽造と同行使罪はそれだけで完結することは滅多になく、詐欺等本来の目的である犯罪の手段として行われることがほとんどです。

 住民異動届を偽造、行使して虚偽の住民票登録をさせた場合の告発事実記載例です。

●参考
 私文書偽造、同行使罪は、この罪名だけで事件化されることはかなり希です。なぜなら、通常、この罪は、詐欺や公正証書原本不実記録(虚偽登記など)等、他の犯罪の「手段」として行われることが多く、実際に事件化される際にはこうした罪名とセットで立件されることがほとんどです。このように、二つの異なる罪種が手段と目的の関係にあることを「牽連犯」(けんれんはん)と言います。空き巣の場合の「住居侵入」と「窃盗」も同じ牽連犯です。刑罰は、二つの罪のうち、重い方の刑罰が適用されます。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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