告訴事実の書き方12(虚偽告訴罪)【元刑事が解説】

 虚偽告訴罪とは?成立要件や刑罰、注意点を解説

虚偽告訴罪とは、特定の人物に刑事処罰を受けさせる目的で、警察や検察などの捜査機関に対して虚偽の申告をすることで成立する犯罪です。例えば、実際には犯罪が行われていないにもかかわらず、「〇〇さんに暴行を受けました」と嘘の訴え出をする場合、虚偽告訴罪に該当します。

ただし、犯人を特定せず、単に「駅前で人が包丁で刺されています」と虚偽の通報をした場合は、軽犯罪法の虚偽申告にしかなりません。

虚偽告訴罪は「告訴」だけでなく「被害届」でも成立

「虚偽告訴罪」という名称から、「告訴」しなければ成立しないと誤解されがちですが、実際には警察官への口頭申告被害届の提出でも成立します。そのため、嘘の被害届を出した場合も虚偽告訴罪となる点に注意が必要です。

このように罪名が紛らわしいため、「虚偽処罰親告罪」といった名称に変更されることも検討の余地があるかもしれません。

虚偽告訴罪は未遂がなく、申告時点で成立

虚偽告訴罪には未遂の規定がなく、捜査機関に申告をした時点で既遂(犯罪が成立した状態)となります。つまり、警察や検察が受理したかどうかに関わらず、申告した時点で罪が成立するのです。

●虚偽告訴罪と似た犯罪に軽犯罪法1-16違反の「虚構申告」があります。嘘の事件や災害の発生を公務員に申告することで成立します。「特定の人物の処罰」を求めない点で、虚偽告訴罪と分けられます。

 口頭で虚偽告訴を行った場合の告訴事実記載例です。

 郵送で告発状を送付した場合の告訴事実例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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