告訴事実の書き方14(保護責任者遺棄罪)【元刑事が解説】

 保護責任者遺棄罪とは、高齢者・幼児・障害者・病人などを保護する責任があるにもかかわらず、必要な救護義務を怠り、危険な状態にすることで成立する犯罪です。特に、被害者が死亡した場合は「保護責任者遺棄致死罪」となり、より重い刑罰が科されます。

一方で、明確な殺意を持って食事を与えず餓死させるなどした場合は、「殺人罪」が適用されるため、保護責任者遺棄罪とは区別されます。

「保護すべき責任のある者」とは?

本罪が適用されるのは、特定の関係にある人が救護義務を怠った場合です。「保護すべき責任のある者」には、以下のような人々が該当します。

  • 親・家族(子どもや高齢の親の世話をする者)
  • 雇い主
  • 教師

実際の事件での適用例

有名な例として、某俳優が合成麻薬を摂取後、意識を失った女性を放置し、死亡させた事件があります。このケースでは、「すぐに119番通報していれば助かった可能性があった」として、保護責任者遺棄罪で有罪判決が下されました。

通行人には適用されない?

例えば、以下のようなケースでは保護責任者遺棄罪は適用されません

  • 道端で倒れている人を見ても通報しなかった
  • 川で溺れている人を助けなかった

これは、通行人がその人に対して「法的な保護義務を負っていない」ためです。しかし、道徳的には救助や通報を行うことが望ましいとされています。

まとめ

通行人は保護義務がないため、本罪は成立しない

保護責任者遺棄罪は、保護義務のある者が救護を怠り、危険な状態にすることで成立

**死亡すれば「保護責任者遺棄致死罪」**に

親・家族・雇い主・教師などが該当

 幼児置き去りの保護責任者遺棄罪の告訴事実記載例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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