告発事実の書き方22(贈収賄)【元刑事が解説】

 私は警視庁捜査第二課で聴訴室に勤務する前に、短期間ではありますが、贈収賄(汚職)事件を担当する部署に所属していました。

贈収賄事件は、密室で行われる犯罪であり、かつ被害者不在(実質的には国民全員が被害者とも言えます)が特徴です。そのため、犯罪を認知することが極めて困難です。

当時、捜査第二課では、年間1~2件の贈収賄事件を検挙していましたが、そのほとんどが「タレ込み(内部告発)」によるものでした。

贈収賄事件のタレ込みの実態とは?

贈収賄事件のタレ込みの多くは、贈賄側の業者によるものです。業者は、公務員に現金などを渡して見返りを期待していたにもかかわらず、公務員が約束を果たさなかった場合、「仕返し」として警察に通報するのです。

しかし、業者側も自身が逮捕されるリスクを避けるために、巧妙なタイミングでタレ込みを行います。

  • 贈賄罪の公訴時効は3年、収賄罪の公訴時効は5年
  • 業者は、賄賂を渡してから3年以上経過するのを待ち、時効成立後にタレ込みをする

こうなると、**贈賄側の業者は捜査協力者(参考人)**となり、公務員だけが収賄容疑で逮捕されるのです。

収賄事件で逮捕される公務員の末路

収賄容疑で起訴・有罪となると、公務員は懲戒解雇処分を受け、退職金は支給されません

例えば、数十万円~数百万円の賄賂を受け取った結果、将来的に受け取れるはずだった退職金(約2000万円)を失うことになります。

 単純収賄

 単純贈賄

 受託収賄


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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