告訴事実の書き方23(建造物損壊罪)【元刑事が解説】

建造物損壊罪は、家屋や建物、艦船などの構造物を損壊することにより成立する罪です。この「建物」とは、壁や柱で土地に固定されており、内部に人が入れる構造を持つものを指します。したがって、物置やテントは建造物損壊罪には該当しません。

建物の損壊部分と判例

過去には、「取り外しできる箇所の損壊は建造物損壊罪ではなく、器物損壊罪である」とされてきました。この「取り外しできる箇所」とは、例えば雨戸、門、障子、畳などが含まれます。ドアも取り外し可能なため、以前は器物損壊罪とされていました。しかし、平成19年の判例において、「ドアは建物と構造上一体である」と認定され、これをきっかけにドアの損壊も建造物損壊罪に該当することとなりました。

外観損壊と判例

また、公園のトイレの外側壁面にカラースプレーで塗りつぶす行為について、判例では「損壊は物理的破壊だけでなく、外観を著しく汚損する行為も含まれる」とされています。これにより、物理的な破壊行為だけでなく、外観の損傷も建造物損壊罪に該当することが明確となりました。

不法侵入罪との違い

不法侵入に関する罪名は、「住居侵入罪」「建造物侵入罪」「邸宅侵入罪」など、建物の用途に応じて細かく分類されています。一方、建造物損壊罪は、たとえその建物が住居であっても、すべて一律に「建造物損壊罪」となります。一方は分けて、他方は分けない。刑法の不思議な部分です。

 居酒屋壁の建造物損壊告訴事実記載例です。

 前述したカラースプレーによる汚損の事例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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