告訴事実の書き方16(名誉毀損罪、侮辱罪)【元刑事が解説】
名誉毀損罪と侮辱罪は、特にSNSやインターネット上で頻繁に取り上げられる犯罪です。近年、SNSやオンラインコミュニティの利用が拡大する中で、他人に対する誹謗中傷の文言が飛び交い、警察への相談も急増しています。その結果、精神疾患や自死に追い込まれるケースも見られ、社会的影響も大きくなっています。悪質な誹謗中傷に対しては厳しい罰則が求められています。
誹謗中傷と名誉毀損・侮辱の違い
誹謗中傷の内容が名誉毀損罪や侮辱罪に該当するかどうかは、被害者の立場や状況によって異なります。名誉毀損(または侮辱罪)が成立するかどうかは、具体的な発言の内容や被害者の立場によって異なり、一律の基準では判断できません。なお、名誉毀損罪は言葉だけでなく、裸体画像の公開なども対象となります。
名誉毀損罪と侮辱罪の違い
- 名誉毀損罪: 事実を摘示することで他人の名誉を傷つけた場合に適用されます。たとえば「隣の山田さんは痴漢で警察に3回捕まった」という発言は、事実を示しているため名誉毀損罪に該当します。
- 侮辱罪: 事実を摘示しない単なる評価や侮辱が該当します。たとえば「隣の山田さんはスケベだ」といった表現は、単なる意見であり、事実の提示がないため侮辱罪となります。
名誉毀損罪と侮辱罪の罰則
- 名誉毀損罪: 最大3年の懲役、または50万円以下の罰金
- 侮辱罪: 最大1年の拘禁刑、または30万円以下の罰金、拘留または科料
侮辱罪は名誉毀損罪よりも軽い罰則が適用されます。
公然性と犯罪成立
両罪が成立するためには、「公然性」が必要です。これは不特定多数または大勢に知らしめることを意味します。ネット上で公開された誹謗中傷は、多くの場合「公然性」を満たし、名誉毀損や侮辱が成立する可能性が高いです。ただし、限られたグループ内での発言は該当しません。
公訴時効とネット上の影響
インターネット上での誹謗中傷は、書き込まれた時点で犯行が開始され、削除されるまで公訴時効の進行は止まります。そのため、加害者が削除を行った後、時効が進むことに注意が必要です。
親告罪と告訴期間
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者が告訴しない限り検察は起訴できません。告訴できる期間は犯人が誰であるかを知ってから6ヶ月以内です。この期間を過ぎると告訴状は絶対に受理されません。
公共の利害に関する特例
名誉毀損罪には、公共の利害に関する特例があります。政治家の不倫や企業の不正に関する事実を公益目的で摘示した場合、その内容が事実であれば、罰則は適用されません。
名誉毀損罪と侮辱罪の法的リスクを理解し、適切に対応することで、誹謗中傷から自分を守ることができます。SNSやネット掲示板を利用する際には、言動に注意を払い、法的なトラブルを避けるための予防策を講じましょう。
名誉毀損・侮辱、ともに成立判断がとても難しい罪種です。罪に当たるかどうかに迷ったら、当職にご相談ください。
言葉による名誉毀損罪の告訴事実例です。
告訴事実
刑法第230条 名誉毀損
被告訴人は、令和6年1月30日午後1時30分頃、東京都世田谷区西桜町1丁目7番4号先世田谷区立西桜小学校校庭内において、同小学校児童の保護者である横山千夏(当時35歳)ほか23名に対し、「山岡○○くんのお母さん(告訴人)は、常習の万引き犯で先週も世田谷警察署に捕まっています。」などと大声で話し、もって、公然と事実を摘示し、告訴人の名誉を毀損したものである。
インターネット上の名誉毀損罪告訴事実例
告訴事実
刑法第230条 名誉毀損
被告訴人は、令和5年12月30日、株式会社IEOが運営するインターネット上の○○掲示板に虚偽情報を掲載して告訴人の名誉を毀損しようと企て、令和6年6月6日頃、告訴人が、告訴人の勤務する株式会社横山通販において、約5年間にわたって同社の売上金の中から合計3000万円を横領したとする内容虚偽情報を、東京都大田区又はその周辺から、インターネット回線を使用し、前記IEO社のサーバーコンピュータに送信し、そのころ、前記○○掲示板を利用する不特定かつ多数の利用者をして、前記内容虚偽情報を閲覧させ、もって、公然と事実を摘示し、告訴人の名誉を毀損したものである。
口頭による侮辱罪の告訴事実記載例
告訴事実
刑法第231条 侮辱
被告訴人は、令和6年5月3日午後9時0分頃、群馬県高崎市東高崎1丁目56番地居酒屋金時店内において、同店店内にいた店員や客約30名に対し、告訴人を指さした上、「この男は群馬でナンバーワンのすけべ野郎です。」などと放言し、もって、公然と告訴人を侮辱したものである。
ご自分で告訴・告発状作成される方向け「告訴・告発事実作成サービス」を行っております。事実一つにつき11,000円で作成します。右上「お問い合わせ」からご連絡ください。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
