阿部慎之助監督の傷害容疑報道を元警視庁刑事が解説|なぜ逮捕され、なぜ釈放されたのか

元巨人軍監督・阿部慎之助氏に関する傷害容疑の報道について、SNSでは

  • 「なぜ逮捕されたのか?」
  • 「すぐ釈放されたのはなぜ?」
  • 「なぜ家族が通報したのか?」
  • 「有名人だから特別扱いされたのでは?」

といった疑問の声が多く見られます。

この件を理解するには、現在の警察が家庭内暴力(DV・家庭内傷害)にどのような姿勢で対応しているのかを知る必要があります。元警視庁刑事の視点から解説します。

昔の警察は「夫婦ゲンカ」に積極介入しなかった

私が警察学校を卒業したのは1992年です。当時はまだ昭和的な価値観が色濃く残っており、家庭内トラブルへの警察の対応は現在とは大きく異なっていました。

110番で夫婦ゲンカの通報が入ると、現場の警察官の間では「夫婦ゲンカは犬も食わない」という言葉が半ば常識のように使われていました。

実際、家庭内で暴力があったとしても、

「まあまあ、その辺でやめてください」
「ご近所にも迷惑ですから」

と仲裁して終わるのが当たり前でした。そしてその取扱結果に対して「警察は何もしないのか」と苦情が入ることもなかったのです。

当時は「法は家庭に入らず」という考え方が強く、家庭内の問題は家庭で解決すべきという社会通念があったのです。

家庭内事件の増加で警察の対応は大きく変わった

しかし2000年代に入ると、家庭内での重大事件が相次ぎました。

  • 夫が妻を殺害
  • 親が子どもを殺害
  • 兄弟間の殺人事件

こうした事件が発生すると、報道では必ず

「以前から警察に相談していた」
「過去に何度も通報していた」

という点が取り上げられるようになりました。

すると警察署には、

「なぜ警察は止めなかったのか」
「事件が起きるまで何もしないのか」

という抗議が殺到するようになります。

この流れに大きな影響を与えたのが、1999年の桶川ストーカー事件でした。警察の対応の不備が厳しく批判され、以後、警察は人身安全事案への対応を大きく見直していきます。

現在は家庭内暴力でも逮捕されることが珍しくない

現在の警察は、家庭内暴力を「家庭の問題」として軽く扱いません。

特に、

  • 明らかなケガがある
  • 凶器や道具が使われている
  • 過去にも通報歴がある
  • 被害拡大のおそれがある

このような場合、被害者が「大ごとにしたくない」と言っていても、警察は原則逮捕するようになったのです。

2013年には警視庁に人身安全関連事案の専門部署が設置され、DV・ストーカー・児童虐待対応はさらに厳格になりました。

現場の警察官としては、

「逮捕しなかった結果、重大事件になったらどうするのか」

というプレッシャーが常にあります。

阿部慎之助氏の件でなぜ逮捕となったのか

今回報道された件について詳細な捜査資料を見ているわけではありませんので断定はできません。

ただ、一般論として考えると、巨人軍の阿部監督という超有名人ですから、もしも警察が逮捕しなかったら、すぐにその内容が報道され、「娘が暴力を受けて児相に助けを求めたのに警察は何もしなかったのか」とのバッシングを受けたであろうことは想像に難くありません。当然、臨場した警察官は全員そのことが頭にあったでしょうから、現場指揮官が「よし、現行犯逮捕だ!」となったのだと思われます。

なぜすぐ釈放されたのか

SNSでは「逮捕されたのにすぐ釈放?おかしい」との声もあります。

しかし、逮捕=必ず長期間拘束というわけではありません。

釈放判断では、

  • 逃亡のおそれ
  • 証拠隠滅のおそれ
  • 被害者への再接触リスク
  • 今後の捜査への支障

などが考慮されます。

著名人だから有利という単純な話ではなく、一般的にもこれらの事情によっては早期釈放はあり得ます。

まとめ|家庭内暴力への警察対応は昔とは別物

昔の警察は家庭内トラブルへの介入に消極的でした。

しかし現在は、

「被害者保護を最優先する」
という考え方に完全に変わっています。

そのため、

「なぜ逮捕?」ではなく
「今の警察なら逮捕判断も十分あり得る」

というのが実務感覚です。

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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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