万引きがやめられないのは精神疾患の可能性が高いです【元刑事が解説】

「何度捕まっても万引きをやめられない人」は、単なる常習犯ではなく、クレプトマニア(窃盗症)という精神疾患の可能性があります。

私は刑事として勤務していた頃、何度逮捕・補導されても万引きを繰り返す人を何人も見てきました。その中には、厳しく叱っても、家族が説得しても、刑事処分を受けてもやめられないケースがありました。

今回は、実際に私が担当した事例をもとに、万引き依存症とも呼ばれるクレプトマニアの実態、特徴、治療の必要性について解説します。


高齢になって突然万引き常習者になった女性

私がF警察署で勤務していた頃、毎月のように万引きで捕まる70代の女性がいました。

この女性は、70歳になるまで犯罪歴が一切ありませんでした。ところが、ある時期から突然、近所の同じスーパーで万引きを繰り返すようになったのです。

しかも、毎回同じ店舗です。

当然、店員や保安員には顔を覚えられており、警戒されているため、犯行はすぐ発覚します。それでも本人は毎回、

「やっていない」
「お金を払うつもりだった」

と否認していました。

夫には先立たれ、子どもとは別居。一人暮らしの高齢女性でした。

何度か事件として送致しましたが、認知症の症状が見られたため、最終的に検察でも起訴されませんでした。

高齢者の万引きには、認知症や孤独による精神的な問題が背景にあるケースも少なくありません。


拒食症の若い女性が繰り返した万引き

別の警察署で勤務していたときには、10代後半から20代前半まで何度も万引きで捕まる若い女性がいました。

最後に逮捕されたとき、彼女は22歳。

身長は平均的でしたが、体重は30キロ台前半しかなく、重度の拒食症でした。

盗むものは毎回同じでした。

  • コンビニ弁当
  • パン
  • スイーツ

理由を聞くと、

「どうせ食べても吐くから、お金を払うのがもったいない」

さらに、

「食べたくはないけど、味だけは楽しみたい」

とも話していました。

家族は両親も兄弟もいましたが、長年の問題行動により完全に距離を置いていました。

逮捕後、留置施設でも食事を摂っては嘔吐を繰り返し、栄養失調で倒れました。病院へ搬送されましたが、そのまま亡くなりました。

非常に痛ましいケースでした。


クレプトマニア(窃盗症)とは?

このように、**「捕まるリスクを理解しているのに万引きをやめられない」**場合、クレプトマニア(窃盗症)の可能性があります。

クレプトマニアとは、精神医学では反復して盗みをしてしまう衝動制御の障害とされています。

特徴としては、

  • 必要のない物まで盗んでしまう
  • 捕まると深く後悔する
  • それでも再び盗んでしまう
  • 経済的困窮が理由ではない場合も多い
  • ストレスや孤独、不安が引き金になることがある

といった点があります。

一般的な「出来心の万引き」や「生活苦による窃盗」とは異なるケースがあります。


万引き常習者を叱るだけでは解決しない

警察としては万引きは犯罪ですから、当然、事件として対応します。

しかし、病気が背景にある場合、刑事処分だけでは根本的な解決にならないことがあります。

実際、

  • 逮捕されても再犯
  • 起訴されても再犯
  • 刑務所を出ても再犯

というケースを見てきました。

これは「反省していない」という単純な話ではなく、治療が必要な精神疾患である可能性があります。


クレプトマニアの治療は専門医へ

現在では、クレプトマニア(窃盗症)を専門に扱う医療機関や治療プログラムもあります。

家族や保護者の方が、

  • 「また万引きした」
  • 「何度注意してもやめない」
  • 「同じことを繰り返す」

と感じているなら、警察や学校だけに任せるのではなく、精神科・心療内科など専門機関への相談を検討してください。

早期の治療が、本人の人生を救うことがあります。


まとめ

万引きを繰り返す人のすべてがクレプトマニアとは限りません。

しかし、

「なぜ捕まると分かっていてやるのか?」

その背景には、認知症、摂食障害、孤独、精神疾患など、本人の意思だけではどうにもならない問題が隠れていることがあります。

元刑事として言えるのは、「何度も繰り返すなら、犯罪として叱るだけでなく、病気を疑う視点も必要」ということです。

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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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